神奈川県横浜市の㈱MURONEは、1969年に創業した金属加工事業者である。室根貴之さんが2代目社長に就任したのは、2014年のことだ。当時、社員25人だった同社には、いまや、パートを含めて70人が在籍している。急成長の原動力は何だったのだろうか。

神奈川県横浜市の㈱MURONEは、1969年に創業した金属加工事業者である。室根貴之さんが2代目社長に就任したのは、2014年のことだ。当時、社員25人だった同社には、いまや、パートを含めて70人が在籍している。急成長の原動力は何だったのだろうか。
同社は、比較的大型の鋳物の仕上げ加工を主に手がけている。マシニングセンタと呼ばれる大型の工作機械を使い、表面を削って図面で指示された精度を出したり、必要な穴を開けたりする。公差1,000分の5ミリメートル、すなわち髪の毛の太さの10分の1の誤差という高精度な加工と3次元測定器による徹底した品質管理を武器に、真空ポンプ、工作機械、測定器などの部品を扱ってきた。こうした技術力が表れているのが加工サンプルM-cubicである。組み合わせによって、横長や立方体など形を自在に変化させられる。同社の高精度な加工技術により、組み合わせた時の段差や隙間は無い。
また、試作品から量産品まで幅広く対応できる。1回で200個受注することもあれば、1個単位ということもある。小ロットの製作は珍しくないが、のちに量産化につながったケースも存在する。
室根さんが後継者として同社に入ったのは、先代の父が経営していた2001年のことだ。当時は主要な得意先への依存度が高かった。室根さんは、同社の技術をほかのお客さまへも届けて、より多くの人に喜んでもらいたいと考えた。
まずは営業活動に力を入れた。営業に人手を割く余裕がなかったため、室根さんは現場作業に従事しつつ、自ら取引先の開拓に努めた。当初は、自社でできる加工だけを引き受けていたが、付随するほかの作業もやってもらえないかと頼まれることが次第に増えてきた。
そこで、室根さんの社長就任の折に、素材の調達や、めっき、アルマイト処理、焼き入れといった後処理も手配する、ワンストップサービスの実現に向けて取り組み始めた。同社ではできない工程を任せられる企業と新たに連携するため、室根さんがインターネットで候補を探し、アポイントをとって製造工場を実際に見に行ったうえで、自社と合う工場かを判断することを繰り返した。
こうして実現したワンストップサービスは、負担軽減につながると発注元から好評だった。取引先はさらに増え、スポット取引を含めると30社近くになった。それに伴い、売り上げに占める主要な得意先の割合は6割程度まで減った。
受注の増加に合わせて社員も増やした。20歳代から40歳代が中心で、平均年齢は38歳と同業他社と比べて若いそうだ。未経験者を採用することが多いため、丁寧な教育が欠かせない。
入社した社員にはまず、理解しやすい検査業務に従事させ、ノギスをはじめとする測定器具の使い方を学ばせる。さらに、鋳物を運ぶクレーンの操作方法など工場内の基本作業も経験させる。それぞれの作業について独自の習熟テストを実施し、スキルの向上や定着を図っている。こうして一人前の職人となるまで手厚くサポートしていくのである。
また社員一人ひとりが当事者意識をもつよう、さまざまな委員会やプロジェクトを設け、社員はどれかに参加している。車両&フォーク委員会、機械保全推進委員会、測定器保全委員会、空調保全委員会、標準化プロジェクトなど十種類以上あり、作業の効率化策や、労働環境の改善策を検討し、推進する。その進捗や結果は、月初めに全員が参加する会議で社内に共有している。
室根さんのリーダーシップの下、社員が一丸となって顧客のさまざまな要望に応えられる体制が出来上がっていった。このことが急成長の源になったのである。
(白石 健人・2023.10.31)本事例に関連するテーマについてさらに知りたい方は、以下の総合研究所の刊行物リンクをご覧ください。
調査月報(2023年10月号)
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