総裁メッセージ

総裁 田中 一穂 写真

日本公庫の役割と使命

日本公庫は、「一般の金融機関が行う金融を補完すること」を旨としつつ、国の中小企業・小規模事業者政策や農林漁業政策等に基づき、法律や予算で決められた範囲で金融機能を発揮している政策金融機関です。

新たな事業を始める方、災害や経営環境の変化に対応する方などの資金需要に、少額から応えてきており、日本の中小企業・小規模事業者や農林漁業者等の資金調達において重大な使命を担っております。

 

 

新型コロナウイルス感染症への対応

日本公庫は、政策金融機関として「政策」と事業に取り組む方々等とを"繋ぐ"という使命感をもって、お客さまのニーズに対応してまいりました。

我が国は、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中で、かつて経験したことのない経済・社会の危機に直面しており、多くの事業者の皆さまが依然として厳しい事業環境に置かれています。

新型コロナウイルス関連融資は、令和2年1月の相談窓口の設置以降、今年の6月末までに約106万件、18兆円を決定しており、我が国の政策金融の歴史の中で最大のオペレーションを実施しているところです。また、コロナ禍の影響を受けた中小企業・小規模事業者の財務基盤を強化するため、令和2年8月から取扱いを開始した「新型コロナ対策資本性劣後ローン」による支援を推進しており、6月末までに約6千先、9千億円を融資決定してまいりました。

コロナ関連の資金繰りに関する相談は、ピーク時に比べると落ち着きをみせていますが、コロナ禍の長期化に加え、原油価格・物価高騰や、国際情勢の緊迫化なども重なり、依然として先行きを見通しづらい状況にあります。事業者の皆さまへの資金繰り支援を円滑に実行するのはもちろん、財務基盤の強化や事業の再構築なども支援するため、今後も民間金融機関や商工会議所、商工会などと一層の連携を図り、支援機関全体で事業者の皆さまを組織一丸となって支えていく所存です。

今後の取組み

日本公庫は、有事に政策金融機関として求められる役割を強く意識し、コロナ禍において影響を受ける事業者の皆さまへの支援、東日本大震災、地震・台風などの自然災害からの復興支援をはじめ、いかなる状況下においても着実にセーフティネット機能を発揮してまいります。

また、ポストコロナも見据え、スタートアップなどの創業・新事業や、事業承継、農林水産業の新たな展開など、成長戦略分野等への支援にも力を注いでまいります。

(創業・新事業支援)

日本公庫は、これまで創業・新事業への支援に積極的に取り組み、イノベーションの担い手であるスタートアップ企業の芽を育ててまいりました。こうした企業の中には、その後株式市場への上場を果たし、今や、日本経済を牽引しているような企業もあります。これまで蓄積してきた経験・ノウハウを活かし、引き続き、幅広い領域の創業・新事業への支援に取り組んでまいります。

(事業承継支援)

我が国において、事業承継は、経営者の高齢化とコロナ禍の長期化を背景に、支援の重要性が高まっております。地域に必要とされる事業がきちんと引き継がれていくよう、情報収集のアンテナを高めニーズを把握し、「地域の想いを次世代につなぐ架け橋」として、関係機関とも連携の上、マッチングを含む効果的なコンサルティングに取り組んでまいります。

(農林水産業の新たな展開への支援)

近年、我が国の農業は零細で儲からないイメージから大きく変貌を遂げている実態があります。スマート農業の実装やグローバル市場への展開なども進んできており、農業が「地域経済の成長のエンジン」に転換できる可能性も見えてきています。農林水産業の成長産業化に向け、民間金融機関などの関係機関と連携しながら、農業分野への支援に取り組んでまいります。

むすび

日本公庫は、地域の活性化に貢献するため、特に、コロナ禍における環境変化を踏まえ、地域や事業に取り組む方々の実情を丹念に把握し、地域を俯瞰的にとらえ、その課題解決に向けて共に取り組んでまいります。その際、民間金融機関をはじめとする関係機関をつなぐ役割を発揮するとともに、全国152支店のネットワークを活用するなど、地域での連携を一層推進してまいります。

以上の取組みにあたっては、政策金融ならではの、質の高いサービスの提供を図るため、リスクテイク機能の適切な発揮やコンサルティング機能・能力の充実に努めてまいります。さらに政策金融機能を強化していくため、組織運営においては、デジタル化を一層推進するなど、事務の合理化・業務の効率化に取り組んでまいります。

加えて、これらの事業者の皆さまへの支援や地域への貢献を通じ、持続可能な社会の実現に向けたSDGsの達成にも貢献してまいります。

今後とも、一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

令和4年7月25日
総裁 田中 一穂

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