ソーシャルビジネス・トピックス第24回 ソーシャルビジネスの法的リスクマネジメント③
~著作権、商標権、肖像権~

執筆者
NPOのための弁護士ネットワーク
弁護士 石橋 京士

■はじめに

ソーシャルビジネスにおいて、団体の活動を知ってもらうための広報活動やイベント開催時などに気をつけなければならないこととして、著作権、商標権、肖像権の問題があります。今回は、これらの問題についての基本的なポイントを解説していきます。

■著作権

新聞に団体の活動が掲載されたため、紙面を写真撮影し、その写真をSNSやHPに掲載したり、団体の活動報告書に紙面をそのまま掲載したり、団体内の会議で紙面のコピーを配付することに問題はないでしょうか。

著作権法上、「著作物」には「著作権」が認められ、著作権者の許可なく、著作物をコピーしたり、そのまま掲載したりすることは、著作権の侵害にあたります。上記事例はいずれも著作権者たる新聞社の許諾を得なければ行えないこととなります。

著作物の例示は著作権法第10条1項に、著作権の内容については同法第21~28条(複製権、上演権・演奏権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻案権・翻訳権、二次的著作物利用権)に、それぞれ定められています。このほか、著作者の権利については、同法第10~20条に著作者人格権(氏名表示権、公表権、同一性保持権)というものが定められています。

著作物を使用する場合には、その使用につき著作権法上の問題がないか事前に確認することが肝要です。

著作権は、著作物を創作した時点で発生するものです。したがって、文章の作成や写真撮影等を第三者に委託する場合、当該著作物の著作権及び著作者人格権の取扱いについて、あらかじめ取り決めをしておくことが重要となります。

■商標権

団体のロゴを作成した場合、商標登録をするべきでしょうか。また、企業と連携してプロジェクトを行う際に当該企業のロゴなどの商標を勝手に使用しても問題はないでしょうか。

「商標」とは、商品やサービス(役務)に標章(文字、図形、記号、形状、色彩、音など)を使用し、自らの商品やサービスを他人のものと区別するために使用されるもので、特許庁に出願し、商標登録が認められて初めて「商標権」という権利が発生することになります。

商標には、その商標を付した商品やサービスを誰が提供しているのかを示す機能や、品質を保証する機能及び宣伝広告の機能があるといわれています。

商標登録を検討するにあたっては、他人による類似の標章使用を防ぎ、標章を使用し続けることでブランディングに活用できることや、ライセンスビジネスの可能性が生じるというメリットがある一方、登録には所定の費用がかかってくるなどのデメリットがあります。

登録された商標や出願中の商標についてはインターネットで検索することも可能ですので、新たにロゴやイベント名などを使用する場合、商標権の侵害とならないか事前に確認しておくことが肝要です。

企業のロゴなどが商標登録されている場合には、勝手に使用することはできませんので、あらかじめ使用方法等について取り決めをしておくことが必要となります。自らの団体のロゴなどを他人に使用させる場合も同様です。

■肖像権

団体で行ったイベントの様子を伝えるため、参加者が写りこんでいる写真を、SNSやHPに掲載したり、団体の報告書に掲載したりする場合、写真に写りこんでいる参加者との関係で問題になることはないでしょうか。

ここでは、いわゆる「肖像権」が問題となります。上述の著作権や商標権と異なり、肖像権を明記した法律は存在しません。しかしながら、判例及び裁判例において「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて、法律上保護されるべき人格的利益を有する」、「人は、自己の容ぼう等を撮影された写真をみだりに公表されない人格的利益も有すると解するのが相当」(最判平成17年11月10日)、「人はおよそ自己の容姿をみだりに撮影され、それを公表されない権利である肖像権を有して」いる(東京地判平成18年5月23日)として、肖像権というものが認められています。

どのような場合に肖像権侵害が認められるかについては、個別具体的な事案により異なってきますが、撮影場所(公共の場所か閉じられた空間か)、撮影対象(風景全体を撮影したのか、個人を対象に撮影したのか)、掲載場所(公共の場か否か)などが主な判断材料となります。撮影や写真の掲載が社会的に許容されるものといえるか、バランスに配慮する必要があります。

肖像権侵害のトラブルを防ぐには、あらかじめ撮影対象者の承諾を得ておくのが肝要です。承諾を得るのが難しい場合には、写った個人が特定できないような写真を使ったり、写真をぼかしたり、加工したりするなどして、その写真に写っている人が嫌な思いをしないように配慮する必要があります。

■最後に

以上、基本的なポイントについて説明させていただきましたが、いずれも弁護士でも議論が分かれる難しい問題が多々ある分野となります。著作権、商標権、肖像権の問題について検討される場合には、あらかじめ専門家の助言を得ておくことをおすすめいたします。

≪執筆者紹介≫
弁護士 石橋 京士(いしばし あつし)
一京綜合法律事務所 代表弁護士
第二東京弁護士会刑事弁護委員会委員(2014~)
同刑事弁護委員会副委員長(2015~2016)
同弁護士業務センター委員(企業連携センター部会、2015~)
同業務支援室嘱託(刑事弁護委員会、2017~)
NPOのための弁護士ネットワーク メンバー

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