ソーシャルビジネス・トピックス第18回 人と組織のマネジメント③
~新しい仲間を巻き込むために~

執筆者
NPO法人CRファクトリー
代表理事 呉 哲煥

■仲間をどうやって集めるのか

社会的企業やNPOを営む方にとって、「仲間をどうやって集るか」というのは大きな関心事の一つだと思います。特にスタートアップにおいては、「一緒に事業の担い手になってくれる仲間の存在」や「何かと応援してくれる仲間の存在」が事業の盛り上がりや推進スピードを左右すると言っても過言ではないでしょう。新たな仲間を巻き込み、組織に定着してもらい、担い手になってもらう。そのためのポイントを見ていきましょう。

■イベントで「興味のある人」、「関心者」を育む

新たな仲間を巻き込んでいくためには、まずは「知ってもらう」ことや「気に入ってもらう」ことが必要になってきます(図表)。多くの人はSNSやブログの記事を見たり、ホームページを見たり、イベントに参加することで貴社・貴団体のことを知ります。中でも、リアルな接点である「イベント」は仲間づくりをしていく上では有効です。イベントには、勉強会・ワークショップ・フォーラム・シンポジウム・食事会・飲み会・パーティーなどがありますが、どれも主催団体の理念・活動内容や雰囲気を知るための良い機会になりますし、代表やスタッフなどと話すことで考え方・価値観とその相性を測ることもできます。逆に言えば、主催者側はリアルなイベントを通して、理念・価値観・雰囲気が近い相性の良い人たちと出逢うことができることになり、そのような人たちの母集団を増やしていくことができるということです。特にスタートアップにおいては、この母集団を形成することやコミュニティをあたためていくことは重要であり、そこから顧客やパートナー、そして一緒に会社・団体を背負ってくれる仲間が現れることがあります。イベントはいざ実行するとなると、面倒で儲からないことも多いですが、売上とは違う目に見えにくい資産(ブランドや人脈・ネットワークなど)を蓄積することになり、それが将来的には大きな飛躍の基盤となることもあるので、ぜひ頑張って「興味のある人」、「関心者」を育んでいきたいものです。

【図表 人を巻き込む流れの基本的な考え方】

図表 人を巻き込む流れの基本的な考え方

「場づくり」、「関係性づくり」でファンを増やす

一度イベントなどに参加して、興味・関心を持った人には、二度三度と参加してもらってリピーター・常連・ファンになって欲しいものです。いかに「居心地が良く」、「また来たい」と思ってもらえるような「場づくり」ができるか。「つながり」と言えるような「関係性」をどうつくっていくのか。好感の持てる接点が増えていけば、その分「愛着」も育まれ、そのうち何かと手伝ってくれるようになったり、将来的にはスタッフになって運営を担ってくれるかもしれません。そのためには愛着を感じてファンになってもらえるような施策・仕組みが必要です。ポイントは、「場づくり」と「関係性づくり」であり、その手腕を磨きながら「仲間」と言えるような関係をたくさんつくっていきましょう。愛着を感じてファンになってくれる人が多いということは、組織にとっては資産(ヒューマン・キャピタル、ソーシャル・キャピタル)であり、この「愛着」を感じる人たちの層を厚くすることに、特に力を入れて取り組みたいところです。

共に活動するスタッフを口説く

「興味」を持って関わってくれるようになり、「愛着」を感じてリピーター・常連・ファンになってくれたら、いよいよ「主体」に巻き込むフェーズに入っていきます。「主体」とは運営を一緒に推進するスタッフであり、お客さんだった仲間が団体を共に背負って活動してくれるということです。ここが「新たな仲間を巻き込む」本番になりますので、いろいろな方法を模索して、自分たちの団体に合った「巻き込み方」を考えていきましょう。取り組みやすい工夫としては「何か仕事を手伝ってもらう」、「役割を担ってもらう」ことが挙げられます。まずはお手伝いのレベルでも構いませんので、何かしらの業務やタスクを担ってもらうことで主体意識や自己有用感を感じてもらえるようにします。「愛着」を感じている人からすると、主催団体から頼りにされて任されるのは嬉しいことです。そのプロセスの中で主体意識は育まれていきます。また、「ミーティング」に参加してもらうというのも、工夫として挙げられます。ミーティングという話し合いのプロセスに関わることは主体意識を育むことになります。メンバーとの関係性づくりにもなりやすいのもポイントです。さらに、一番ストレートな方法は、お茶や食事、飲み会などの場を設定して「口説く」ことです。「一緒に仕事・活動をしたい」、「スタッフにならないか」と口説きます。その気があるメンバーからすると、この口説き面談はとても嬉しいことです。口説きが成功すれば、晴れて一緒に事業・活動を推進してくれる仲間が増えることになります。

3回に渡ってお伝えしてきた「人と組織のマネジメント」はいかがでしたでしょうか。社会的企業やNPOにとっては、「人と組織のマネジメント」は特に重要であり、人的基盤・組織基盤の扱いが、ビジョン達成や事業推進力に大きな影響を与えます。その重要性を認識しながら、「人と組織のマネジメント」の腕を磨きましょう。

≪執筆者紹介≫
呉 哲煥(ご てつあき)

1974年生まれ。静岡大学人文学部社会学科卒業。2001年に独立・起業し、コミュニティ運営・支援事業を開始する。2005年にNPO法人CRファクトリーを設立し、現在代表理事。
「すべての人が居場所と仲間を持って心豊かに生きる社会」の実現を使命に、NPO・市民活動・サークル向けのマネジメント支援サービスを多数提供。セミナー・イベントの参加者は5,000名を超え、毎年約100団体の個別運営相談にのっている。コミュニティ塾主宰。コミュニティキャピタル研究会共同代表。血縁・地縁・社縁などコミュニティとつながりが希薄化した現代日本社会に対して、新しいコミュニティのあり方を研究し、挑戦を続けている。

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