ソーシャルビジネス・トピックス第11回 助成金の獲得から活用へ ~NPOの資金調達~②
助成金の規模感から申請まで

執筆者
NPO法人CANPANセンター 代表理事 山田 泰久

■助成金の規模感

今回は、国内におけるNPO向けの助成金の規模感をご紹介したい。
筆者が代表を務めるCANPANでは、NPOへの情報提供として助成制度のデータベース(http://fields.canpan.info/grant/ )を運営している。全国規模で募集を行っている助成制度を対象に、週に1回最新情報を更新しており、各省庁の各種公募の中から、NPOが活用できる補助金等の情報もピックアップして掲載している。また、様々な条件で検索することができるので、例えば8月に申請募集を行っている助成制度を調べるといったことも容易である。
少し古いデータだが、このデータベースに掲載している約300の助成プログラム(助成制度)の情報をもとに作成した、助成金の規模感がわかる参考図表を紹介する。

  • 締切月別の助成プログラム数
    助成金のシーズンというと秋のイメージだが、年間を通じてコンスタントに申請募集があり、5月と11月が二つのピークとなる。助成金は、申請して不採択になった場合、次の年まで待たなければならないというイメージを持ちがちだが、次の図の通り、実は年に2回申請のチャンスがあるわけである。

    締切月別の助成プログラム数

  • 申請上限額別の助成プログラム数
    申請上限額の一番多い金額帯は100万円となっており、申請上限額100万円までの助成プログラムが全体の52%を占める。「上限なし」という助成プログラムも多いが、実際の助成実績を見ると、必ずしも大きな助成金額となっているわけではない。全国規模の助成プログラムといっても、大きな金額を受け取れるプログラムはそれほど多くないのが現状である。

    申請上限額別の助成プログラム数

  • 採択率別の助成プログラム数
    約300件の助成プログラムのうち、申請件数と採択件数を公表している助成プログラムは105件である。これらの助成プログラムごとの採択率を計算し、そこから平均値を出すと32.1%となる。また、各助成プログラムの申請・採択件数を合計すると、延べ件数で申請件数31,310件、採択件数11,070件となる。

    採択率別の助成プログラム数

■助成金申請するための事業とは

全国規模の助成制度の他に地域限定のものも含めれば、NPOはおそらく400程度の助成制度を利用することができる。では、実際に助成金申請はどのようすればよいのか。一つ言えることは、助成金申請が上手な団体は、助成金申請の書き方ではなく、助成金申請の考え方を知っている団体である。ここでは、助成金申請の考え方について整理していきたい。
申請する側であるNPOの多くは「活動」のための資金が欲しいと思っている。実際の申請の際に、普段の活動を申請内容として記載することもあるのではないか。一方、助成する側は「事業」のための資金を提供したいと考えている。普段の活動ではなく、助成金申請のための特別な事業を求めている。普段の活動を発展させた事業でも、あるいは新規事業であっても、一定の期間を設けて実施されるもので、目標とする成果を設定し、その期間内に完了するものを、助成金申請では求められている。
さらに、事業で生み出した成果物やノウハウ、人材等を活用して、その後も成果を生み出していける仕組みが盛り込まれていることも求められている。助成金の意味を辞書で調べると「事業の完成を助けるお金」となっているため、何かしらの事業の完成が設定できるものとして計画しなければならず、普段の活動を助けるお金ではないということを認識する必要がある。これまでにセミナー等でお会いした、助成金を申請し慣れていないNPOの多くは、この違いに気付いてないことが多かった。

■助成金申請における課題設定

助成金申請とは、自分たちが考える事業に関して、社会のニーズと解決手法の実効性を資金の出し手に理解してもらうことである。つまり、自分たちが伝えたいことを一方的に伝えるものではなく、資金の出し手が知りたいことを伝えるためのコミュニケーションである。基本は、申請書の各項目について、資金の出し手が何を知りたいのかを意識し、聞かれたことにしっかりと答えるものである。加えて、具体的な事実や、現場の活動の中から生まれた問題意識や気づき、事業を考え出したプロセスを盛り込むことで、地域でのリアルを伝えたい。
さらに、資金の出し手が申請書で知りたいポイントを押さえることも重要である。ポイントは大きくわけて、「①なぜ、この問題に取り組むのか?」「②どのようにして解決するのか?」「③誰が行うのか?(どんな団体が行うのか?)」、の3つであり、特に重要なのは、なぜ、この問題に取り組むのかをわかりやすく伝えることである。極論してしまえば、助成金申請額に見合った規模の問題にまで分解できるかどうかである。
具体的には、日本の社会問題という大きなところから入り、その中から申請団体として継続的に注力すべき課題を設定し、さらに今回の申請事業としてフォーカスした具体的な課題を伝えることである。つまり、日本の社会問題を、団体として考える課題、そして、今回の事業でスポットをあてる課題と、より現実的な課題に落とし込んでいくことであり、大きな問題を分解し、団体なりの定義・解釈をして、申請事業によって解決できるレベルの課題として設定するということである。
この分解・定義・設定していくことが、事業内容を規定していく。さらに、事業として実施可能かどうか、設定した課題に対して効果があるか、成果が出るものかと伝えていくことで、納得性の高い申請書となっていくわけである。
今回は助成金申請する際の考え方について、筆者が特に大事だと思っている二つのポイントについてまとめた。第3回では、助成金申請のための事業づくりについて、説明したい。

≪執筆者紹介≫
山田 泰久(やまだ やすひさ)

NPO法人CANPANセンター代表理事
群馬県出身。1996年日本財団に入会。2014年4月、日本財団からNPO法人CANPANセンターに転籍出向。NPOの情報発信サイト「CANPAN」を運営。その他に、NPO×情報発信、オンライン寄付、助成金、IT・Web、ノウハウ、ネットワーク、出身地などの文脈でセミナー開催、セミナー講師、プロジェクト、情報発信などを行っている。

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