ソーシャルビジネス・トピックス第10回 助成金の獲得から活用へ ~NPOの資金調達~①
助成金を活用するということ

執筆者
NPO法人CANPANセンター  代表理事  山田  泰久

■助成金についての整理

これから3回にわたって、主にNPOを対象にした助成金についてご紹介したい。ここでいうNPOは、特定非営利活動法人(NPO法人)や公益法人、一般法人、社会福祉法人などの法人格のある団体から、ボランティア団体、任意団体なども含む広義の意味のNPOである。
ところで、助成金と補助金の違いはご存じだろうか。どちらも国や自治体が資金提供元となり、融資とは違い返済不要の資金である。助成金は要件を満たしていれば誰で受け取れるもの、補助金は申請して事業内容の審査に通過すれば受け取れるものという違いがある。
一方で、助成財団や企業などが、補助金のような形(つまり申請と審査がある)でNPOに対して資金援助を行っているが、これらの資金のことも助成金や補助金と表現している。実は、同じ助成金という言葉でも性質の異なる資金のことを指している。このコラムでは、細かい言葉の定義に捕らわれず、NPOを対象に、申請して審査に通過すれば受け取れる資金のことを助成金と称して、話を進めていく。
なお、これらの助成金の中には、省庁の補助金など、NPOに限らず社会的企業も利用できるものがあるので、参考にしていただきたい。

■なぜ、助成金の獲得ではなく、活用なのか?

NPOにとって助成金の獲得はあくまで通過点であり、ゴールではない。助成金を獲得し、その資金をどのように「活用」して、団体や活動の発展に、あるいは社会課題の解決につなげていくかという視点を持つことが大事である。この視点を持つことで、そもそも助成金の申請対象となる事業の内容が大きく変わってくる。助成事業終了後も同じような成果を生み出すことができる仕組みを考えること、その仕組みを申請事業の内容に反映させること。この2つのポイントがしっかり盛り込まれていることが助成金獲得の近道になると筆者は考えている。
助成金は基本的に継続して得られる資金ではない。多くの助成金が単年度の支援である。従って、助成金の出し手は1回限りの支援で、助成先団体に対してはその後も継続して成果を出し続けてほしいと願っており、そうした助成金の出し手の想いが汲み取られた助成金申請が必然的に優先されるものである。
また、助成金は受け取った団体だけのものではなく、団体の発展や助成事業の受益者のために活用されるのはもちろんのこと、助成金によって得られた事業の成果やノウハウを、広く他の地域や社会全体、あるいは他の団体に還元していくことも重要である。助成金の成果を一団体だけではなく、広く社会に活用していくという視点が課題先進国といわれる日本ではこれから特に重要であり、助成金の出し手も審査の項目としてさらに意識していくことと思われる。

■助成金の付加価値の活用

助成金を単なるお金としての経済価値だけで考えるのではなく、助成金が持っている付加価値とその可能性に着目し、付加価値を最大限に活用する視点も必要不可欠である。つまり、資金提供者である助成財団や行政が持っているノウハウ、ネットワークを最大限に活用させてもらうということである。
例えば、助成財団には先駆的な活動を行っている団体や様々な専門家とのネットワークがあるので、助成事業に関係することであれば、担当者に依頼して、そうした団体や専門家を紹介してもらうことも可能である。また、助成財団には公益活動に関する様々なノウハウや知見が蓄積されているので、持続的で波及性のある事業づくりのノウハウや視点などを教えてもらうこともできる。さらに、助成財団や行政から助成金を得ていることは、その団体にとって実績となり、信頼度の向上につながるもので、まさに助成金が持つ信頼・信用という付加価値の活用である。
助成金が持っている付加価値、即ちその資金提供者が持っている付加価値を活用させてもらうことで、団体や事業の発展につながるのである。

■助成金をいつ活用するか?

活用という視点の中で、もう一つ大事なことは、いつ助成金を活用するかである。助成金申請をした時に「なぜ助成金が必要なのですか?」と必ず聞かれる。その際に、資金不足を答えにするのではなく、団体や活動が発展・成長していく上で必要な資金だからという考え方を伝える必要がある。つまり、5~10年くらいの中長期戦略の中で、どの成長ステージでどれくらいの助成金を活用して発展していきたいのかという考えを持って、助成金を申請するということである。
活動を始めた立ち上げ期、活動が継続し、さらに専門性を高める事業確定期、従来の事業の他に新しい地域や分野に取り組む新規事業展開期、その分野のモデル事業として先駆的な取り組みを行う社会影響期など、それぞれのステージでどのくらいの規模の助成金を活用して成長していくのかを考えることである(ステージが上がれば対象となりうる助成金額も大きくなる)。また、団体の成長戦略以外にも、外部環境や社会の変化も助成金活用の大きな理由となりえる。

成長にあわせた助成金の活用

≪執筆者紹介≫
山田 泰久(やまだ やすひさ)

NPO法人CANPANセンター代表理事
群馬県出身。1996年日本財団に入会。2014年4月、日本財団からNPO法人CANPANセンターに転籍出向。NPOの情報発信サイト「CANPAN」を運営。その他に、NPO×情報発信、オンライン寄付、助成金、IT・Web、ノウハウ、ネットワーク、出身地などの文脈でセミナー開催、セミナー講師、プロジェクト、情報発信などを行っている。

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