お客さまインタビュー全ての人に、こころ安らげる住まいを

2022年4月5日掲載

Rennovater株式会社
代表取締役社長 松本 知之 様

所在地:京都府京田辺市
分野:福祉の増進・地域活性化
URL:https://rennovater.co.jp/

●Mission
「全ての人に、こころ安らげる住まいを」
代表取締役社長 松本 知之 様
Q. どのような社会的課題の解決に取り組まれていますか。

単身高齢者、障害者、生活保護受給者、母子家庭、外国人、DV被害者など、一般の賃貸住宅を借りることにハードルがある人々(以下、住宅確保困難者という。)を対象に、空き家などの築古物件を活用して良質・低賃料な住居を提供してます。家賃滞納やトラブルの発生を懸念し、住宅確保困難者との賃貸契約を敬遠する不動産オーナーも多く、一般住宅市場において住宅確保困難者が住居を確保するハードルは高いのが実情です。当社では、こうした住宅確保困難者の住居問題と空き家問題という2つの社会課題の解決に取り組んでいます。

Q. 具体的な事業内容を教えてください。

空き家や郊外の築古物件等を安価な価格で購入し、入居者が快適に過ごせる程度のリフォームを施した上で、住居を提供しています。リフォームは既存の設備をなるべく活用し、必要最低限の機能に絞り込むことで、地域の家賃相場より低い賃料で提供しています(平均4.8万円程度)。連帯保証人や敷金・礼金も求めません。

また、当社では住居を提供するだけではなく、行政や地域のNPO等と連携し、入居者に対して生活支援や就労に向けた支援を積極的に行っています。住宅確保困難者の中には経済面・健康面などに複合的な問題を抱えている方もいらっしゃるので、単なる住居支援だけでは問題を解決できないこともあります。例えば、ネットカフェ難民の方の住居探しについて相談を受けたケースでは、住居提供だけでなく就労に向けた伴走支援を行い、最終的には生活保護からの脱却と経済的自立につなげることができました。

入居者に寄り添った丁寧な伴走支援は、顧客との信頼関係の構築にもつながるため、結果としてトラブルや家賃滞納・退去といった経営上のリスクを下げる効果もあると感じます。

Q. 今後のビジョンについて教えてください。

より多くの住宅確保困難者の方々に住居を提供するために、事業規模をさらに拡大していきたいと考えています。現在は、大阪や東京を中心に約100軒の物件を提供していますが、住宅確保困難者の方からのお問合せも多く、空室もほとんどありません。物件の取得には相応の資金調達が必要なため、当社だけでは供給できる物件数に限界があります。そこで、今後は当社のミッションに共感し、住宅確保困難者へ住宅を提供したいと考えている他の不動産オーナーを募り、当社が賃貸の仲介や物件の管理を請け負うこと等を通じて、物件の供給数を増やしていくことも計画しています。

Q. 金融機関や出資先と付き合っていくうえで意識していることがあれば教えてください。

当社が解決しようとしている社会課題に対する知見、現場での課題・解決手法等の情報を包み隠さずお伝えし、金融機関や出資先の方々にとっても学びとなるようなフィードバックを行うよう心がけています。

また、出資者が増えると、経営判断を行う際に出資者の影響を受ける場合があることから、社長である私自身の柔軟な意思決定がしにくくなる可能性も考えられます。例えば、利益の追求を第一目的にするような方が出資者の多くを占めるような事態になってしまうと、当社の掲げるミッションが達成できなくなる恐れもあります。そのため、出資者を募る際は、売上高や利益ではなく、当社の社会的意義や使命感を中心に説明します。その上で、当社のミッションを理解し、共感していただける方だけに出資していただくように気を付けています。

Q. 日本公庫をご利用いただいた感想を教えてください。

実は最初に融資頂いた金融機関が公庫で、物件の取得資金のために相談しました。公庫の融資担当者の方が、当社のミッションやビジネスモデルについてよく理解してくださったおかげで、スムーズに手続きを進めることができました。公庫の融資で実績を蓄えられた結果、信用金庫や地方銀行からの資金調達に繋がっており、ご融資いただいたことに感謝しています。

支援者の声

公営住宅をはじめ、住宅確保困難者を対象とした公的な支援制度は存在しますが、量的な不足や地域的な偏りから、こうしたセーフティネットから漏れてしまう人々もおり、健康維持や求職活動・最低限度の文化的な生活の妨げとなっています。他方、一般の賃貸市場は住宅確保困難者に十分に開かれているとは言えません。Rennovater株式会社は、こうした背景から、良質な住宅に住むことができない人々の受け皿を担っており、持続的な収益を確保しながら社会的インパクトを創出するビジネスモデルを確立している点がとても素晴らしいと感じます。

社会変革推進財団では、Rennovater株式会社に対して休眠預金等活用法に基づく助成金の提供と伴走支援を実施しています。助成金支給の選定にあたっては、特に次の点を評価しました。

  • 提供する住居は全て自社物件であることから、他の不動産オーナーの意向を考慮する必要がなく、住宅確保困難者への住居提供がスムーズに行える。
  • 代表者の高いコミュニケーション力を強みに、入居者と丁寧な対話を行うことで、信頼関係を形成している。
  • 拡張性があるビジネスモデルであることから、今後も社会的インパクトの拡大が期待できる。
事業本部インパクト・オフィサー 小笠原 由佳氏

社会変革推進財団
事業本部インパクト・オフィサー
小笠原 由佳氏

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