事業を製麩に絞った同社は、大手との競争を避けられるとはいえ、老舗ばかりの業界で勝負することになる。そこで大地さんは、伝統を大切にしながらも、固定観念にとらわれない「新しいお麩のかたち」を模索していこうと考えた。取り組みの例を二つ紹介しよう。
一つ目はブランディングだ。売り上げのおよそ9割をBtoBが占める同社は、商品の販売先を土産物店やサービスエリア、百貨店などに限っており、日常的な買い物で利用されるスーパーなどには販売していない。これには、麩菓子は駄菓子であり安価で買える、という従来のイメージから脱却するねらいがある。自宅用としてはもちろんのこと、プレゼントや景品など、幅広い用途での購入につながっている。
二つ目は商品開発だ。製麩事業に専念して以降、同社は数々の新商品を生み出している。代表的なものに、「やきいもふがし」がある。さくら棒と同じくらいの大きさに焼き上げた麩菓子に、地元名産のサツマイモ「三島甘藷」のペーストを練り込んだ砂糖蜜を塗り、六つに切り分けたものだ。焼き芋そっくりの見た目とロースト感のあるフレーバーに仕上げている。目新しさもあって、東海道土産としてテレビ番組で紹介されたことをきっかけに知名度が上がり、ヒット商品となった。また、アレンジ商品を次々とつくり出す同社には、地元の商業施設で展示したり、都内のイベントで販売したりするためのコラボレーション商品の依頼が来るようになった。
そのほか、同社はSNSを活用した情報発信や展示会への出店などにも力を入れている。こうした取り組みが実を結び、製麺から撤退したときには麺の半分ほどだった麩の売り上げは、いまや当時の麺の倍にまで増加した。業界動向を的確にとらえて進むべき方向を見極めてきた同社の歩みは、日々変わりゆく競争環境のなかで中小企業が生き残るためのヒントとなるだろう。
