中小企業の現場から -Case Studies & Reports-

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地域に寄り添う小さなオールラウンダー

(有)小田商店

(有)小田商店 代表取締役 小田 大典

代表取締役

小田おだ 大典だいすけさん

代表者 小田 大典
創業 1923年
資本金 300万円
従業者数 9人
事業内容 廃棄物の収集運搬と産業廃棄物の中間処理、精米、LPガス販売
所在地 北海道北見市端野町二区447-5
電話番号 0157(56)2042
URL https://oda-store.com
地域の人に愛される店

地域の人に愛される店

自然豊かで農業が盛んな北見市端野たんの町に、約百年続く老舗企業、(有)小田商店がある。精米、米やLPガスの販売、廃棄物の処理を行う、町の小さなオールラウンダーだ。異なる分野の事業を同時に手がけているのはなぜだろうか。

それぞれの代で新たな事業に挑む

1923年、農家をしていた小田重春さんが精米業を始めたことが同社の起こりである。オホーツク地域における数少ない稲作地帯の端野町では、玄米の状態で米を保管している人が多い。一度精米すると、日持ちがしないからだ。必要な量を一度に精米できることが受けて、地元の人を中心にファンを獲得した。

その後、米の販売も手がけるようになり、順調な歩みを続けてきたが、米の仕事だけにとどまることはなかった。2代目の恵英しげひでさんは、1968年、プロパンガスの許可を取得し、販売をスタートした。当時、北見市では都市ガスが普及しつつあったが、都市ガスは万一災害が起きたとき、復旧に時間がかかる。極寒の端野町では、厳冬期にガスが使えないと死活問題になる。不測の事態が起こったときに不安だという声があったため、恵英さんは、ボンベをつなぐだけですぐに使用可能なプロパンガスの取り扱いを始めたのだ。

3代目の大典さんが1989年に開始したのは、一般廃棄物の収集運搬業である。きっかけは、「分別回収を推進したいので力を貸してほしい」と、懇意にしていた役場の職員から声をかけられたことだ。1980年代の日本では、大量消費により一般廃棄物の排出量が急増し、ペットボトルの普及などにより、廃棄物の種類も多様化した。ごみをしっかり分別する必要性が高まっていたが、端野町では分別ルールがあまり守られておらず、複数の種類のごみがまとめて捨てられることもあった。そこで、大典さんは、町の人に分別意識を高めてもらうため、役場の職員と一緒に何度も説明会を開いて、分別の大切さ、具体的な分別方法などを説明した。粘り強い取り組みにより、しっかり分別がされるようになった。それをきっかけとして、同社は産業廃棄物も手がけるようになった。今では廃棄物の収集運搬の売り上げは、全体の約8割を占めている。

分別回収を支えるごみ収集車

分別回収を支えるごみ収集車

地域住民を第一に

それぞれの代で、新たな事業を軌道に乗せてきた同社には、代々受け継がれているポリシーがある。端野町に住む人のことを第一に考えることだ。

実は、大典さんが代表を務めているときに、機械が古くなったため、精米業をやめようと思ったことがあった。しかし、新鮮な米を食べられるようにする所がなくなるのは困ると、地域の人たちから引き留められた。その声に応えたいと、新しい機械を購入して、事業を続けることにした。今後も、希望者がいる限りは、精米業を続けていくつもりだ。

プロパンガスの販売事業では、代金の回収方法は自動振り込みが主流となっているなか、顔の見える関係を維持したいと、顧客の家を訪問して集金するという昔ながらのやり方も続けている。その際には、注文してくれた米をついでに届けたり、ごみの分別に関する質問に答えたりするなどして、ちょっとしたコミュニケーションを図っている。効率は悪いが、孤立しがちな高齢者にとっては、話し相手ができるのはうれしく、安心感を得られる。こうした配慮が、ファンの獲得につながっている。

同社は小回りを利かした活動で端野町を支えてきた。大典さんは「息子の代、孫の代まで、地域から必要とされる存在であり続けたい」と語る。また新たな挑戦があるに違いない。

(白石 健人・2023.2.22)

本事例に関連するテーマについてさらに知りたい方はこちら(総合研究所の刊行物にリンクします)

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地域活性化 経営最前線2「地域の未来を塗り替える塗装店」  調査月報(2022年12月号)

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