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美しい包装で贈り物にさらなる価値を

(株)クリエイティブ
コバコ

(株)クリエイティブコバコ 代表取締役 小林 れい

代表取締役

小林 れいさん

代表者 小林 れい
創業 2004年
資本金 30万円
従業者数 1人
事業内容 持ち込みラッピングサービス、
店舗コンサルタント
所在地 京都府京都市中京区冷泉町65
さいりん館
電話番号 075(200)1659
URL http://cova-co.net

大切な人への贈り物だからこそ、包装にもこだわりたい。そんなニーズに応えるのが、持ち込みラッピング専門店「京のつつみ屋小箱」だ。経営する小林れいさんは、ラッピング教室の講師からスタートし、京都市に店舗を構えるまでになった。今では小売店のディスプレーに関するコンサルティングも行う。販売に付随するサービスの一つであったラッピングを単体のビジネスとして成長させるまでの道のりを追った。

奥深いラッピングの世界に魅せられて

もともと雑貨店を開きたいと考えていた小林さんは、OLとして一般企業で働きながら夢の実現に向けて準備を進めていた。おしゃれな雑貨はプレゼントとしてのニーズも多いことから、ラッピングの技術を学んだ。器用なタイプではなくなかなか上達せずに、ときには泣きながら技術を身につけたそうだ。何度も失敗しながら習得したからこそ、うまく包むためのコツを教える言葉の選び方に人一倍関心をもつようになった。ラッピングに魅了された小林さんは、雑貨店ではなく、ラッピング教室という形で夢をかなえた。

いち早くラッピングに関するウェブページを開設し、企業向けに出張講座をスタートすると、一定の知名度を得ていたこともあり、たくさんの依頼が入った。「思うようにうまく包めない」。受講生のもどかしさは、かつて小林さん自身も経験しただけに、気持ちは痛いほどわかった。学ぶ人の心に寄り添った小林さんのレクチャーが評判になるまで、そう時間はかからなかった。

開けるのがもったいないほど美しい包装

開けるのがもったいないほど美しい包装

ベールに包まれていた真のニーズ

受講者が少しずつ増えるなか、教室に一人の男性がやってきた。男性の来校は珍しく話を聞いてみると、ラッピングを学びたいわけではなく、ネット通販で手に入れた妻へのプレゼントをきれいに包み直したいという。個別の包装サービスはやっていなかったが、そのまま帰ってもらうわけにもいかない。仕上がりのイメージを聞き出しながら包装して渡したところ、とても喜んでもらえた。このとき、小林さんは気づいた。ネット通販などの簡素なラッピングで満足できない人たちは多いのではないか。きれいにして贈りたいというニーズがあるに違いない。こうして2008年、持ち込みラッピング専門店「京のつつみ屋小箱」をオープンした。

来店客の9割が男性だ。恋人や奥さん、子どもたちへのプレゼントを手にやってくる。「プレゼントの中身はもらう相手が決めてしまうので、せめてラッピングに自分の気持ちを込めたい」という。ラッピング代は品物の大きさと包装資材で変わるが、小さいものなら800円からだ。小林さんが包んだプレゼントを受け取った相手の喜ぶ姿を見て、渡す側もうれしくなってしまう。また次の機会にも小林さんの手を借りて喜ばせたいと、リピーターになっていく。

企業からもラッピングの依頼がくる。「大事な取引先へのお土産だから、特別な演出をしたい」「パーティーで渡すので、壇上で映えるようなラッピングにしてほしい」といった具合だ。これまで、自転車やゴルフバック、サーフボードも包んだ。どんな大きさの物でも対応できるというから驚きだ。

あなたのお店を人気店に

店が軌道に乗った頃、小林さんはラッピング研修を担当した小売店の担当者から「ラッピングで培った見せ方の技術は、店舗のディスプレーづくりに応用できるのではないか」と言われた。最初は戸惑ったが、これまでに身につけた知識や接客経験をもとに、商品の置き方や動線のつくり方などをアドバイスしたところ、後日「成果が早速、売り上げに表れました」と喜ばれた。小林さんは新たな活躍の場を見つけたのである。

最近取り組んだのが、食品メーカーからの依頼だ。直売店のディスプレーを見直したいという。店舗の雰囲気が変わると、お土産やプレゼントの需要が増えた。すると、ギフトラッピングについても教えてほしいと依頼された。ディスプレーとラッピング、両者の相乗効果が生まれている。ラッピングで事業が成り立つのか。小林さんは不安を感じていたというが、お客さんがステップアップのヒントを贈ってくれたようである。

取材中、奥さんへのプレゼントを手にした男性がラッピングの依頼にやってきた。恥ずかしそうにラッピングのイメージを話す男性に、小林さんは具体的な色づかいやリボンの形、包装紙の柄などの提案をしていく。少しずつイメージが形になっていくさまを目の当たりにして、次第に男性の顔は笑顔になっていった。贈る側の気持ちがプレゼントにこもった瞬間だ。店を出る男性の表情は何とも誇らしげだった。

(青木 遥・2019.09.30)

本事例に関連するテーマについてさらに知りたい方はこちら(総合研究所の刊行物にリンクします)

女性活躍 未来を拓く起業家たち「暮らしに勇気を与えるママ起業」  調査月報(2019年1月号)
市場開拓 経営最前線「曾祖父の味と夢を受け継ぐ菓子店」  調査月報(2019年4月号)

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