先輩創業者の創業事例 UIJターン創業事例 技術提供サービス業 MKR株式会社[新潟県東蒲原郡阿賀町]代表 伊藤 辰哉さん先輩創業者の創業事例 UIJターン創業事例 技術提供サービス業 MKR株式会社[新潟県東蒲原郡阿賀町]代表 伊藤 辰哉さん

常に持ち続けてきた
「チャンスがあれば開発する」の気概。
「地方創生は、きちんと利益を生み、技術を継承できるようにするのが大事」と語る伊藤さん。
開発に向けるエネルギーは、退職後のシニア起業であることを忘れさせるほどの熱を感じさせる。
人生の経験を無駄なく活かす「成年開発者」である。

 新潟県阿賀町鹿瀬に本社を置くMKR株式会社は、企業でエンジニアとして働いてきた伊藤辰哉さんが退職後に創業した会社である。
 会社概要に記された事業内容を見ると、再生可能エネルギーの研究開発と販売・啓蒙活動、ロハスハウスの企画・開発、地域特産物の研究開発・販売とある。これだけを見ると、潤沢な資金と多くの人材を抱えた大企業にも見えるが、実質社員は代表である伊藤さん1人。拠点は伊藤さんの故郷である阿賀町の実家を「本社」とし、会社員時代から暮らす埼玉県を「埼玉オフィス」として行き来する生活である。
 ではなぜ、これほど多彩な分野に取組むことができるのだろうか。まずは2016年6月に特許を取得した、風速2~4メートル程度のそよ風でも発電できる発電装置を例に挙げる。発電装置には太陽光フィルムを貼り付け、ウィングは航空機翼断面形状にすることで、四方からの風力と太陽光で発電できることから「ハイブリッド発電装置」と名付けられた。構想から開発、特許取得までは約4ヶ月。この先は実証実験を行い、製品化する必要があるが、実証実験は母校である日本大学と実用化共同研究について相談中とのこと。
「私の仕事はアイデアを具現化し、開発をすることで、『技術提供サービス業』と言えるでしょう。その先は職人さんや専門家に発展してもらって商品化をします。1人でできることは限界がありますし、ひとつのことだけに専念すると、事業が狭くなってしまうんです」
 伊藤さんは会社員時代、いくつもの特許級の開発に携わってきた。しかしいくら独創的な開発をしても、それは「職務発明」となってしまう。そこで退職の15年ほど前から創業の構想を温め、静かに時機を待ったのである。

特許を取得した「小型太陽光・風力ハイブリッド発電装置」設計図。

開発の目的と着地点を定めたら8割方、
事業は完成である

 故郷に目を向けたのは、2014年、地元で「地域おこし協力隊」として活動する人物に、地方創生のアイデアを求められたときだった。
「もともと僕は、地方創生には興味がありませんでした。でも、ものづくりのアイデアはあった。そこで森林が豊かな地元の間伐材を利用したバイオマス発電~電解水素製造~水素ガス貯蔵~家庭用燃料電池という「町内レベルでの循環型再生可能エネルギーの構築」(実証実験誘致)を自治体に提案しました。
 地域活性化のために大事なのは、補助金に頼らなくても利益を出せること。そして携わる人間がいなくなっても技術を継承できること。補助金がなくなったらその事業もなくなってしまうのでは意味がありません」

設計からデザインまでを手がけた「MKRスピーカー」。

この事業ポリシーは、再生可能エネルギーの開発や、
地域特産物の研究開発につながった。

 間伐材を利用して開発した「MKRスピーカー」は意匠・商標登録を行った。
「そもそも僕はスピーカーを作りたかったのではなく、地元に放置されている間伐材をノーブルユースすることを考えたのが、開発の出発点でした。発案から試作品完成までは約3ヶ月間。僕の開発の仕方は、アイデアを徹底的に絞り込んで、これしかないと思ったときにスタートします。そして開始したら途中で絶対にやめない。行き当たりばったりではダメなんです。開発する目的と着地点を絞り込んだ時点で、8割は完成です」
 技術者として、多くのものづくりを経験した。企業人としてもまれながら忍耐力も身についた。だからこそ「今はストレスフリー」だという。さらに36年間勤めた都内メーカーを退職後には特許事務所に3年間勤務して、今の仕事につながる専門家たちとの出会いもあった。
「僕は何かチャンスがあったら新しい開発をしようと、常に気構えしてきました」という伊藤さんは今、湧き上がるアイデアを具現化するため、異業種交流に飛び回る日々だ。交通費も時間もかかるのになぜ、故郷にこだわるのか。「故郷に宝物があることを、地元の人は知らない」という言葉が、その答えになるだろう。会社名のMKRは「Mount Kanose Research」の略。本社を置く場所の名は故郷「鹿瀬」なのだ。

「新潟本社」は伊藤さんの生家。趣のある古民家を活用する構想もある。

本社をおく阿賀町は阿賀野川の上流に位置する風光明媚な土地でもある。

創業までの歩み

伊藤 辰哉さん写真
2012年
36年勤務した都内メーカーを退職。
特許業務法人に転職。
2014年
地域おこし協力隊との出会いで創業の具体化に向けて動き始める。
2015年1月
阿賀町ゼロエミッションプロジェクト構想を自治体に提案。
2015年6月
創業
2016年2月
MKRスピーカー開発。
意匠登録、商標登録。
2016年6月
日本公庫より融資を受ける。
(創業利率特例Uターン等活用)

地域おこし協力隊とは?

都市部に居住等していた方が過疎地域等に一定期間居住し、当地のブランドや地場産品の開発、農林水産業への従事などの地域協力活動を行いながら、当地への定住・定着を図る取組み。平成21年度より総務省が実施している。

地域おこし協力隊を受け入れる自治体に対しては、隊員1人あたり400万円上限の財政支援がある。また、隊員が任期満了日前後1年以内に起業する場合、更に100万円を上限に財政支援を受けられる制度も整備されている。
(平成28年10月現在)

伊藤 辰哉さん写真 伊藤 辰哉さん いとう たつや Campany info

MKR株式会社
所在地:新潟県東蒲原郡阿賀町
創業年月:2015年6月
事業内容:技術提供サービス業
URL:http://mkr.ne.jp/

※内容は2016年10月時点のものです。

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