先輩創業者の創業事例 創業後事例 「ママの支援」と「地域」NPO法人ママトリエ [大阪府箕面市]代表 小西 美由紀さん 先輩創業者の創業事例 創業後事例 「ママの支援」と「地域」NPO法人ママトリエ [大阪府箕面市]代表 小西 美由紀さん

孤独なママの支援は自分自身を活かす事業でした。
出産、子育てでキャリアを中断する女性がいる。地域のコミュニティに属せず、子育てに悩むママがいる。
ママたちを支援しようと 立ち上げたNPO法人は今、そのママたちにより、新たな成長のステージへ。

足固め

フリーペーパー「Mamatelier」創刊

 2012年に箕面市で市民活動団体として誕生した「ママトリエ」。キーワードは「ママの支援」と「地域」である。
 この2つは、小西美由紀代表理事自身にとって「支援が必要なもの」だった。

「もともとフリーペーパー制作会社で働き、終電まで仕事をする毎日が、出産すると一転し、何をしたらいいのかわからなくなりました。しかも夫の仕事の関係で引越した先は生まれ育った土地ではなく、子育ての相談をする人もいない、人間関係も希薄に感じるような場所です。そこでやっと探したベビーマッサージ教室を通じて相談できる人や友だちができたとき、私と同じような悩みを抱える地域のママたちのために何かできないかと思ったんです」

 幼稚園のママ友に呼びかけると、元営業職、保育士など、さまざまなキャリアを持つママが集まった。「これなら会社レベルのことができる」とフリーペーパー『Mamatelier』を創刊したのが2012年9月。お弁当のレシピなどの記事に加えて、地元の歯科医や宅配サービスなど、地域密着型の広告も掲載されている。誌面制作でこだわったのは、名刺広告や純広告は掲載せず、広告であっても記事型の誌面にすること。それは「いい媒体を作ったら、それが営業をしてくれる」という、以前の職場の上司のアドバイスによるものだった。

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気づき

「融資を受ける罪悪感」を払拭

 フリーペーパー立ち上げ資金は箕面市の助成金をあてた。この媒体を地域が待っていたかのように、広告も順調に入ってきた。そこで直面したのはキャッシュフローの問題である。制作費の支払いと、広告費の振り込み時期が噛み合わず、黒字倒産の危機となったのだ。

「それまで主婦は借金などしてはいけないものだと思っていました。でも印刷費はクレジットカード決済だったので、実際には借金をしていたんですね。そこで税理士さんに相談して、日本公庫を紹介していただいて融資を受けました」

 次に直面した問題は人材活用である。協力してくれるママ友全員が、キャリアを活かした仕事ができるわけではない。

「自分の存在意義に悩むスタッフのために考えたのが、コミュニティとなる力フェ作りです。カフェはアロマや手作り講座などのスクール事業を実施する場でもあります」

 まずは物件探しと資金作りである。ビジネス交流会などで自分の思いを語っていくうちに、無料で場所を貸してくれるビルのオーナーに出会う。ビルはリフォームする必要があったが、トイレの改装費だけをフリーペーパーの売り上げや箕面市の助成金などでまかない、あとはママ友とその家族が総動員して改装する。さらにカフェ事業のために、建物の火災保険や食中毒のための保険をかける必要が出てきた。それが「ママトリエ」をNPO法人化するきっかけである。

「事業の内容を考えると、ママたちが立ち上げた非営利団体というほうが、イメージが良かったんです。フリーペーパーも公立の幼稚園や保育園に置かせていただいていたのに、株式会社化すると営利事業だと思われてしまいます。ママ卜リエは利益を再分配しない非営利法人なのでボーナスは出ません。事業内容も限られますが、ママトリエは出版業と力フェ事業、スクール事業からブレるつもりがないので、特に制限を感じることはありません」

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1階のギャラリーに並んだママたちの手作り作品。数万円の売り上げを手にするママもいる。

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カフェの2階。フロアマットはフリーペーパーの広告営業に行った先の企業の厚意で、無料でいただいたもの。

新展開

スキルアップするママたち

 フリーペーパー創刊時、事業計画書には「あまりお金のことは書けなかった。なぜならわからなかったから」。結局、自分の給料を捻出することなく、深夜まで働き、自分の子どもは保育所に預けていた。

「当時は認可保育所にも入れず、仕事に行こうとして子どもに泣かれたときは、『自分は何をしているのだろう?』とハッとしました。私は仕事どころか、美容院や歯医者さんにも子どもを預けて行くことができなかったんです。でもママ友たちと一緒に仕事をするようになったら、任せるべきことは人に任せなければならないと気づかされました。一方で私のように人を頼れず、孤独に陥るママがたくさんいることも実感しました」

 現在、ママトリエに関わるスタッフは約50人。小さな仕事でも人件費と制作費を計上し、きちんと支払いをする。

「融資を受けて人件費を払えるようになったら、スタッフのモチベーションが上がりました。エクセルが使えなかった人が立派な人事管理表を作成できるようになり、経理経験のないママが経理を担当したり。仕事を割り振れるようになったので、私は渉外業務に専念することができます」

 創業から6年目の今、ママたちのネットワークを活かした新たな事業計画が進んでいる。事業計画を推し進めているのは、もちろん、さまざまなスキルを身につけたママたちである。

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スタッフ勢揃いの後、子どものお迎えに、家事にと瞬く間の移動が始まった。

小西 美由紀さん写真 小西 美由紀さん こにし みゆき

2012年、大阪府箕面市で市民活動団体として誕生。フリーマガジン「Mamatelier」(ママトリエ)は現在、大阪府北摂エリアで2万5千部を発行する。2016年には子育て支援の拠点となるコミュニテイスペース「ママコミュニテイプニカ」をオープン。キッズスペースのあるカフェ、託児付きママスクール、ママ作家の作品が並ぶギャラリースペースなどを擁する。

Campany info

NPO法人ママトリエ
所在地:大阪府箕面市
創業年月:2012年
事業内容:
フリーペーパー発行・カフェ事業
URL:http://www.mamatelier.com

※内容は2018年10月時点のものです。

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