先輩創業者の創業事例 創業後事例 凹む経験をしたほうが売上は伸びる CORPO CIRCUSコルポサーカス [石川県金沢市]代表 桶田 絵梨香さん 先輩創業者の創業事例 創業後事例 凹む経験をしたほうが売上は伸びる CORPO CIRCUSコルポサーカス [石川県金沢市]代表 桶田 絵梨香さん

不得手なことを専門家に任せ、
抱えていたアイデアを発信すれば必ず協力者が現れるはず。

「事業者」は常に不安だと言う桶田さん。競争相手もいれば突然のトラブルもある。
壁を乗り越えながら実感するのは「凹む経験をしたほうが売上は伸びる」。桶田さんの事業理念である。

ピンチ

オープン3ヶ月で直面した壁

 コアなファンを持つヴィンテージウェアの世界。桶田絵梨香さんが服飾販売のキャリアをスタートさせたのは19歳。メンズのヴィンテージを扱うショップで経験を積んだ。得意客を多く獲得できたことで手応えをつかみ、2010年に「コルボサーカス」を創業。「仕事の成果をはっきりとした数字で得たいと思うなら、起業しかない」と思ったからである。当時、同店が取り扱う服は、100年前のアンティークものを中心とし、『金沢にない店』として地元に認知されることを目指した。しかしオープンから3ヶ月で危機に直面する。

「第一の理由は、品揃えのクセが強すぎたこと。当時の単価は2万円から10万円で、今の3倍<らいの価格帯です。しかも資金ぐりなどの知識も浅くて、融資を受けた資金をある程度プールしておくという発想もなかったんです。これでは税金も払えない、と思いましたね」

 まず取り組んだのは、価格帯を下げた品揃えと仕入手法の見直し、そしてオリジナル商品の開発である。ブランド服が1年過ぎたら「在庫」(デッドストック)になる商品だとすれば、古着はシーズンが過ぎても在庫にならない。たとえば夏でも革ジャンが売れる。30年前のワンピースでも、状態が良ければ「レト口なワンピース」と評価される。さらに今風に縫製し直すなど、手を加えたら購買層も広がる。

「仕入れは『これなら売れそう』ではなく、『これを売る』と決めた商材にしました。たとえばシルクシャツなら、幅広い年齢の人に着てもらえますし、それにあうパンツや靴を揃えたら、コーディネートして購入してもらえます。そのような道筋を考え、ビジョンを持った仕入れをはじめたんです」

 同時にwebストアもオープンさせ、少しずつ顧客がつくようになる。

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気づき

顧客獲得は心理戦

 試行錯誤の最中、ファストファッション風の服も置いてみた。しかし「今思えば、最初の事業計画からズレていました」と言う桶田さん。そこに気づくことができたのは、業界を問わず実績をあげている経営者の方々にアポイントを取り、アドバイスを求めたことに拠る。

「皆さんのアドバイスをうかがっていくと、大事なのは『人の心に対する気配り』という共通点があると気づきました。特に服飾の世界で利益を出すのは心理戦だと思うんです。
 たとえばウチに来るお客さまの中には、スタッフに『私もその服、持ってるんですよ!』なんて明るく接客されるのは苦手という方もいらっしゃいます。黙ってお店の中を見て、あとはネットで買うという方も多いと思います。あるいは古着好きな方は独自の世界観を持った人も多いので、洋服ではなく、サブカルチャーの話でつながるお客さまもいます。スタッフの個性を気に入って、得意客になってくれる方もいると思います。
 私自身、20代の半ばの頃は、説得力がなくて高いものはお勧めしにくかった経験があります。でも30代となった今なら、説得力のあるコーディネートができます。最終的に購買につながるのは『人』なんだなと実感しています」

 現在のアルバイトスタッフは、もともとコルポサーカスの顧客であり、桶田さんのビジョンを理解している。売り上げが伸び、正社員としての雇用を考え始めた今、「貴重な人材である彼女たちをどう育てるか」が次の課題であるという。

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アクセサリーもデザイナーに依頼してオリジナルで制作。

創業7年目の新展開

リース&VIPのためのフロア開設

 アドバイスを求めた方々に、共通する理念はもうひとつあった。それは「事業を一段階大きくするためには、投資が必要なときもある」ということだ。
 もちろん投資する対象は、コルポサーカスの根本的な事業理念からブレないことが大前提である。その上で、購買層の拡大をどこに求めるべきか。桶田さんが気づいたのは、金沢で増加する美容院の数と、そこで働く女性のニーズだった。

「彼女たちはセンスが問われる職業にも関わらず、格好いい服を買うお金と、ショッピングにかける時間が潤沢にあるわけではありません。そこで服をレンタルできる『PLAY-RO0M』を、店の2階にオープンしました。リース料は安く抑えていますが、気に入ってくれたら購入もできるシステムで、1着の服に販売料+リース料が生まれます。このフロアには高額なヴィンテージも置いて、招待するお客さまだけが入れる部屋にしました」

 PLAY-ROOMのスペースは、元々は住居用で賃借されていたが、桶田さんが製作した改装後のイメージイラストや新事業への想いに共感した店舗オーナーの計らいにより、店舗用として賃借できたもの。新しいチャレンジをするとき、桶田さんはいつもクリエイティビティをフル稼働させている。

「学生のとき、先生の『お金は貯めるのではない。うまく借りるのだ』という言葉が印象的でした。そこで最初の融資を受けるときも、事業計画書のかわりに自分で作ったスタイルブックを持っていって、自分の思い描くイメージを一生懸命説明しました」

 桶田さんは今、地域の学校や母校で講演することもある。『金沢にない店を作る』というコンセプトは、事業の方法論においてもオリジナルなのだ。

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「他社に勝つ要素は、心理戦と知識」と語る。

桶田 絵梨香さん写真 桶田 絵梨香さん おけだ えりか

アメリカ、ヨーロッパのユーズドやヴィンテージウェアを扱う店。Webストアも展開している。
代表の桶田絵梨香さんは金沢文化服装学院ファッションビジネス科卒業。20代前半でメンズのヴィンテージウェア店での勤務等を経験した後、2010年にCORPO CIRCUSをオープンした。

Campany info

CORPO CIRCUS
所在地:石川県金沢市
創業年月:2010年
事業内容:服飾販売
URL:http://www.corpocircus.jp/

※内容は2018年10月時点のものです。

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