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人口1500人の村で油作り 創業理念は「油で世界を救う」
岡山県西粟倉村で、種の風味や特性を活かした油作りと商品開発を行う「ablabo.」。
主宰は大林〝油〟佳さんである。大阪大学で国際政治学を学んだ28歳の女性は、なぜ今、西粟倉村で油にまみれているのだろうか。
岡山県西粟倉村は林業を軸とした独自の道を歩み、2013年には内閣府から環境モデル都市に指定された村である。80代のタクシー運転手が「村の猫の数は知ってるが、移住者の数は把握できん」と言う中に、「初代油姫」を名乗る大林由佳さんがいる。名刺には「食用油の製造・販売、新種の油の研究開発、搾油ワークショップ開催」とある。
大林さんが油ビジネスに乗り出したきっかけは、小豆島で出会ったオリーブオイルである。
「それはもう、ハッと息を呑むほど美味しいオリーブオイルでした。油は料理の基本であり、人間の体を構成する重要な食材です。油がなくなったら生きていけないのにないがしろにされていると感じたところから、油の世界に入りました」
大林さんは大阪大学で国際法や国際政治を学び、在学中から留学を計画していた。しかし、留学の仲介業者が倒産して夢破れ、休学中のインターンシップを経て、株式会社西粟倉・森の学校へ入社する。
「大学を卒業するとき、企業に入社するイメージは漠然とあったのですが、変化の激しい時代には、自分で自分の仕事を生み出せるほうが、就職するよりも強いと思ったんです。私が入った当時、森の学校は株式会社にもなっていない創業期だったので、『創業』を間近で見られるとも思いました」
「森の学校」で働きながら、食用油の世界での創業の道を探り始める。岡山県内で搾油をする人を探したところ、90代の「師匠」と出会う。
「師匠の話を聞いていたら、後継者がいないというんです。跡継ぎがいなければ、この美味しい油も途絶えてしまいます。そこで『私が油を搾ります』と言ったんです。何か事業計画があったわけではないですが、諦めなければなんとかなるさ精神で(笑)、菜種油を搾る次年度の7月まで、森の学校の仕事をしながら創業準備を開始しました」
油で世界を救う 人を幸せにできるビジネスを
実際に事業計画を立ててみると、生活できるほどの製造量をすぐに生み出すのは困難だった。そこで日本公庫から融資を受け、村役場の協力や補助も受けられることとなり、創業に向けた計画は徐々に形を整え始めた。
「事業計画ができたから走り出すのではなく、自分の『創業したい』気持ちを確認しながら走りはじめました。融資を受けるための事業計画は、その気持を整理できる作業でした。
搾油は今年で3年目。今の事業計画は、『どうしたら日本の油を守れるか』です(笑)。種の風味や特性を活かした日本ならではの油は、数年後にはなくなってしまうのが現状です。そこをなんとかしなければという使命感を感じているんです」
搾油の主な材料であるひまわりの種作りは、地元岡山の農業グループと契約を結んでいる。契約農家探しは「公庫さんから融資を受けるよりも大変だった」のだが、西粟倉村役場の協力を得ることができた。これにより、ひまわりの種200キログラム程を仕入れることができるが、搾油・加工すると、100グラム瓶400本程度にしかならない。それでは企業として十分な利益が出ないので、ハーブオイルの開発や、製造委託も請け負う。苦労はあるが「油の神様に愛されてしまったから仕方ない」と、どこか楽しそうだ。
「大学時代の目標は国連で働くことでした。ずいぶん路線変更をしたように見えるかも知れませんが、世界の貧困問題や、劣悪な労働環境の問題などについても、油の原材料栽培からアプローチすることもできるはず。気づくと、そんなに大きな路線変更ではないんですね。どこで生きるかではなく、いかに充実して生きられるかが大事だと思うんです」と大林さん。人口1500人の西粟倉村で立てた「油で世界を救う」目標実現は、決して夢物語ではなさそうだ。
創業までの歩み
- 大学2年の時に海外留学を断念。
- 大学休学中のインターンを経て「森の学校」入社。カフェ事業の立ち上げ等に携わる。
- 旅行先の小豆島でオリーブオイルに出会う。
- 滋賀県の菜種油の製造所を訪問し、油の小売業での創業を考える。
- 岡山県内で唯一、伝統製法で油を搾る94歳の神谷氏(師匠)と出会い、小売業ではなく、製造業での創業を決意。
- 「森の学校」退職。
- 日本公庫から融資を受ける。西粟倉村の協力もあり、工房となる建物を確保。
- 創業
- ひまわりの種の契約栽培開始
UIJターンに積極的な若者女性
内閣官房の「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」(平成26年度)によれば、10・20代女性のうち、今後東京からの移住を検討していると回答した方の割合は46.7%となり、その他の世代の女性の中で最も高くなった(男性は50代が50.8%と最も高い。)。
UIJターンに積極的な10・20代女性だが、彼女たちが移住を考える上で重視する点として、「生活コスト」や「子育てのしやすさ」を挙げており、各自治体も家賃補助や保育施設の安定供給等の支援策を充実させ、取込みを図っている。
大林 由佳さん おおばやし ゆか |
Campany info
ablabo. |
※内容は2016年10月時点のものです。