連携・協働のステップ
連携・協働のステップ
解説コラム
ソーシャルビジネスに
取り組みたい中小企業へ
連携・協働のススメ
- 執筆者
-
秋元祥治
岡崎ビジネスサポートセンター・チーフコーディネーター
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
消費者の
社会課題への
意識の
高まりと
企業の活動
ここのところ急速にSDGsやESG投資といった言葉を聞くことが増えたのではないでしょうか。当初は、大企業の取組みが中心で、また虹色のバッチが印象的...といった程度の認識の方もおいでだったでしょう。
しかし、見回してみると人々の生活の中に確実に広がりを見せています。例えば、プラスチック製品がリサイクル可能な素材に置き換わっています。ある大手製造小売企業はペットボトル飲料を販売終了し、再生可能なアルミ缶に切り替えました。マイクロプラスチックの問題から、ホテルのアメニティも木や紙などによる環境配慮型商品などに切り替わるなど、確実に広がりつつあります。
地域の中小企業にとっても、これらは見過ごすことができない新たなビジネストレンドです。エコと言うキーワードだけでなく、最近ではエシカル(和訳:道徳的・倫理的な)と言うキーワードを目にすることが増えました。消費者の中には、どうせ買い物をするなら社会貢献につながるような商品を購入したい、と考える人も増えています。
大手飲料メーカーが行ったキャンペーンは、途上国の井戸の採掘や水の供給に売り上げの一部を寄付するもので、社会貢献につながるだけでなく実際に自社商品の販売拡大につながった取り組みとして注目を集めました。
さらにコロナ禍で新たに注目されているのは「応援購入」というキーワードです。厳しい環境のなか、応援の気持ちを込めて購入をする、あるいは共感するから購入を通じて支援するといった消費トレンドも生まれています。
中小企業が
ソーシャル
ビジネスに
取り組む方法
としての
連携・協働
では地域の中小企業は、どのようにして社会性のある商品開発やビジネス展開を行うことができるでしょうか。ヒト・モノ・カネが必ずしも充実しているとは言えない中小企業に、ぜひお勧めしたいのが専門性を持つNPOと連携した展開です。
地域に特化した取り組みや、環境、森林、水、途上国の開発支援、子供の育成など様々な専門領域に特化したNPOが日本各地に存在しています。
NPOと聞くと、かつてはボランティア団体をイメージする人々も多かったかもしれません。しかし今ではソーシャルビジネスと呼ばれ、ビジネス的な視点で社会課題の解決に取り組む団体も確実に増えてきています。
ボランティアではなく、事業として取り組む社会起業家・ソーシャルビジネスと呼ばれる人々は地域の企業や店にとっても連携先として選択肢となりえます。
NPOとの
連携・協働の
プロセス
NPOを探す
連携・協働先としてNPOを探す方法にはどのようなものがあるでしょうか。
第一歩は、自身のSNSで「〇〇〇に興味があるんだ」「△△△のようなNPOを探している」と発信してみることからでも良いかと思います。きっとそうするとSNSで繋がっている方の中から、「こんなのあるよ」とか「ここに聞いてみたら」といった新たなつながりにも至るでしょう。Googleなど検索エンジンなどでご自身の関心の領域について「NPO 森林保全」といった形で検索をする事も取り組みやすい情報収集です。
また、次におすすめなのは、地域にある中間支援組織に相談をしてみることです。NPOセンターやNPO支援プラザといった地域ごとによって名称は異なりますが、中間支援組織はNPOのお世話役であり、企業との連携の橋渡しを担う機関です。様々な団体をネットワークしていますので、情報の収集に行ってみる、相談をしてみるのもよいですね。
NPOを知る
こうしてネット検索や中間支援組織等をつうじた情報収集を経て、連携してみたい、やりとりしてみたいと言う団体が見つかったときには、より詳しい団体概要をリサーチしましょう。
その際に参考になるのは、情報公開されている団体や事業に関する報告書です。例えば日本財団によるNPOなどの連携促進の取組みである、「CANPANプロジェクト」の一環として、Webページ上で多くのNPOの決算内容や過去の事業報告がアップされています。
また、すべてのNPOは活動報告や決算報告を都道府県に届け出し公開することが義務付けられていますので、所在する都道府県(一部市区町村に権限委譲されていますが)に問い合わせれば、こうした資料を見ることができます。過去の決算資料や事業活動の内容などを見れば、その団体の実態や活動状況、財務状況も知ることができます。
非営利組織評価センターのように、NPOに対して第三者目線で審査・認証を行っている機関もあります。同機関の「グッドガバナンス認証」では、非営利組織の中でも組織運営やガバナンスが一定水準以上のレベルの団体を認証しています。このような認証を受けているNPOは、組織内部の状況を第三者機関に開示して、信頼性・透明性の向上に努めていると考えられますので、連携・協働先について調べる際には参考になります。
連携・協働する
NPOは、ソーシャルビジネスと言われるように、社会性のある事業を行うという意味では同じ事業体です。必ずしも協働を特別視する必要はなく、通常の民間同士のビジネスと同じように考え連携を申し込み、相互にとってメリットがあるような形で取り組むことが重要になります。 ただ、営利事業者との違いを1点上げるとすれば、 多くのNPOは連携によって利益が上がるか否かと言う観点以上に、自分たちのミッションの実現につながる活動か否かで取り組みの可否を判断することが多いかもしれません。
執筆者紹介
秋元祥治
岡崎ビジネスサポートセンター・チーフコーディネーター
武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 客員教授
01年より人材をテーマにした地域活性に取り組むG-netを創業し、03年法人化、現在理事。中小企業支援と若者をつなぐ成功事例として全国的に評価されている。また、2013年・33歳で「売上アップ」に焦点を当てた中小企業支援機関「オカビズ」センター長に就任。さらに全国25か所以上に広がる「ビズモデル」の開設・運営支援を進めている。
受賞歴に、内閣府「女性のチャレンジ支援賞」、「ニッポン新事業創出大賞」支援部門特別賞ほか。内閣府「地域活性化伝道師」・中小企業庁よろず支援拠点事業全国本部アドバイザリーボード・中小企業庁「認定支援機関連絡協議会WG委員」等、公職も多数。2021年より武蔵野大学アントレプレナーシップ学部客員教授に就任。