お役立ちコラム

助成団体との
信頼関係が大事!
~助成金活用のススメ~

執筆者
五井渕 利明(ごいぶち としあき) 一般社団法人JIMI-Lab 代表理事(※取材当時)

こんにちは。一般社団法人JIMI-Labの代表理事、五井渕と申します。私は現在、複数のNPOに同時に所属するスタイルで働いています。自治体での勤務経験があり、営利企業向けのビジネス展開も行っており、これまで多角的な視点でソーシャルビジネスや協働・連携について考えてきました。今回のテーマである「助成金」についても、自分で申請書を書いて助成事業を実施する、助成事業のサポート・伴走支援を行う、審査委員を務めるなど、様々な形で関わってきました。

そもそも、
補助金とは?
助成金とは?

最初に確認しておきたいのが、補助金と助成金の違いです。実はあまり意識されることがありません。

一般的に補助金という名称がつくものの多くは、政府や公的機関が政策実現のために運営しています。この場合、大きな目的となるのは「経済成長」の促進です。そのため、設備投資(最近ではIT関連が多いですね)やサービスの開発・拡大を後押しするためのものが多くあります。

一方で、助成金という名称がつくものの多くが、民間企業などが母体となり、公益財団が運営しています。大きな目的となるのは「社会公益」の拡張です。対象としては、新たな事業の開発、調査・研究、組織基盤強化、設備・備品の調達などです。

助成金・補助金の活用を考える際に、「設立目的」は非常に大切です。募集要項では最初に読み込むべき項目です。なぜ、その助成金・補助金はつくられたのか。例えば、社会公益の拡張が目的である助成金に、自社利益の拡大を目的として事業者が申請する場合などは、明らかなミスマッチであると言えます。

助成金活用の
基本原則とNG例

助成金を活用する上では、下記のことが基本原則だと考えています。

当事者・社会公益を中心とした
ビジョンを共有した
パートナーシップの構築

まず、助成する側と申請する側の双方で、ビジョン(目指す姿)を共有することが何より重要です。社会課題によって困窮する当事者を中心として、どのような社会公益を実現するか。そのビジョンに向かって、資金提供や事業推進といった役割分担を行うパートナーシップ・協働関係を構築することが必要です。

助成金申請におけるパートナーシップ・協働関係は、以下のようなアクションで構築されていきます。

  • 取り組む社会課題・当事者を取り巻く状況を深く、多角的に理解する。
  • 募集要項を読み込むとともに、自団体のビジョンや事業戦略を整理する。
  • 助成団体の担当者と事前にコミュニケーションし、方向性のすり合わせを行う。
  • 自団体の力では成し遂げられない新たな事業を構築し、パートナー(助成団体等)に提案する。

何よりもまず、NPO・ソーシャルビジネス等の事業者は、協働先となる助成団体等のことを「お金を出してくれる相手」ではなく「ビジョンを共有するパートナー」として認識するということが不可欠です。

助成金申請において、以下のようなNG例に陥っていないか、常に心がけましょう。

  • お金をもらう(出す)ことが目的化している。
  • 当事者視点ではなく自団体の利益優先になっている。
  • パートナー(助成団体等)の視点や目的を考えていない。
  • ビジョンはあくまで自団体だけのもので、パートナーとすり合わせされていない。

これからの
助成金活用

NPO・ソーシャルビジネスの経営に関わっていると、資金調達や財源についての様々な議論に触れます。特に助成金については、組織の経営が助成金に依存してしまうリスクがあることから、賛否両論があります。

私個人としては、社会公益や当事者にとって必要であれば、助成金も積極的に活用していくというスタンスをとっています。

なぜなら、これからますます、ひとりで、あるいは一団体でできることは限られていくからです。

社会の問題は複雑化・重層化し続けていて、人の暮らしや価値観は多様になっています。その中で、単一のサービスやソリューションで全てを解決するのはとても難しいことです。

社会公益のことを真剣に考えたときに、異なる他者・領域との協働や連携は不可欠なのです。助成金活用というパートナーシップによって、より良い未来が少しでも近づくのであれば、どんどんチャレンジするべきだと思います。

最近では、地域内外での協働体制をつくって事業を推進することを求める助成金も増えつつあります。

たとえば、マイナーながら大切な領域に特化した支援を磨いてきたNPOが、そのスキルをより広く展開し、多くの当事者に出会うため、地域のコミュニティと連携する事業。

たとえば、NPOや自治体、地元企業などの複数のステークホルダーが問題意識を持ち寄って、研究者と共に課題構造をひもとくことで、新たなソリューションを生み出す調査研究。

そうした事例を自ら生み出すためには、日常の事業・活動の中で、地域内外のステークホルダーとの信頼関係をつくることが重要です。日ごろから、情報やネットワークにアクセスし、視野を広げておく必要があります。

この記事を読み、この情報プラットフォーム「SBステーション」にアクセスしているあなたは、そうしたアンテナを高く持っていらっしゃるのでしょう。そうしたアクションの積み重ねが、地域内外での思わぬご縁やタイミングを呼び込み、新たな事業をつくるきっかけになるのだと思います。

どこかでお会いしてご一緒できる機会があれば幸いです。

みなさまの事業・活動が良い形で前に進んでいくことを心から願っています。

執筆者紹介

五井渕 利明(ごいぶち としあき) 一般社団法人JIMI-Lab 代表理事(※取材当時)

数多くのコミュニティやプロジェクトの運営実績から、幅広い知見やバランス感覚に定評がある。NPO・行政・企業それぞれでの勤務・事業の経験から、それぞれのちがいを理解した支援が可能。

多くの協働事業のコーディネートを手がける他、講師・ファシリテーターとしては年間100回以上の登壇がある。

誰もが「共に生きたい」と思える世の中を実現したいと願い、様々な組織の経営や事業に参画している。。

認定NPO法人かものはしプロジェクト(日本事業マネージャー)、NPO法人CRファクトリー(副理事長)、株式会社ウィル・シード(インストラクター)、など。

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