お役立ちコラム

ソーシャルビジネスの
広報活動②
~ユーザーに
好印象を与える
ホームページとは~

執筆者
堤大介 ファンドレイジング・コンサルタント、上級ウェブ解析士

ユーザーになった
つもりで考える

ソーシャルビジネスの担い手であるNPO・一般企業(以下「NPO等」)のホームページにおいて「ユーザーに好印象を与える」のはどういうホームページでしょうか。

いろいろな角度から考えることができますが、ここでは考えやすくするために一度ユーザー目線で考えてみましょう。

例えばあなたがインターネット上でさまざまなホームページを訪問する際に、好印象ではなく悪印象を持ってしまうのはどのようなホームページを利用したときでしょうか。ご自身の経験からも思いつくものがあるのではないかと思いますが、例えば以下のいずれかに当てはまってしまうようなホームページですと、良い印象を持ったり、その団体を信頼したりするということはできないのではないでしょうか。

  • 団体概要、代表者情報がない
  • 顔が見えない(写真が少ない)
  • 誰が参加しているのか分からない(受益者や参加者の声など活動実績を想像できる情報がない)
  • 更新されていない(現在も活動しているのかわからない)
  • 技術的な問題がある(エラー等がある、スマートフォン対応していない)

裏を返すと、これらの項目をすべてクリアしていれば、「怪しい」というような不信感を持たれることは少なく、一定程度の好印象を持ってもらうことができると言えるのではないでしょうか。

ただし、ここまでの話はNPO等の公益的な活動を行う団体に限った話ではありません。営利目的であれ非営利目的であれ、どのような活動・事業のホームページにおいても重要であり、かつ基本的な話といえます。

ビジョンを
伝えることが
共感につながる

では、NPO等のホームページならではの観点として良い印象を持ってもらうためにはどのようなことを考えるべきでしょうか。

私が特に重要だと考えているのは「ビジョンを明確に提示する」ということです。

ビジョンとは、その組織や事業・活動が目指す「理想の地域や社会の状態」のことです。わかりやすく言えばその組織は「何を実現することを目指しているのか」ということ。NPO等の活動においてビジョンや理念などを掲げずに活動をしているということはほとんどないかと思いますので、まずはそれらをきちんとサイト訪問者に伝わるようにしましょう。

ビジョンをサイト訪問者に伝えるために特に意識していただきたいことは大きく二点です。

まず一点目は「目に入りやすい位置に掲載する」ことです。例えば実際のホームページの例では、トップページにひと目で分かる位置に大きく表示したり、どのページにも共通で表示される団体名やロゴ名と合わせてビジョンを表現するキャッチコピーも表示するといったような工夫をしていたりします。

団体ロゴと合わせてビジョンを伝えるのは、ホームページにおいてだけでなく、チラシや名刺など他の媒体においてもひと目で相手に自分たちのことを伝える上で非常に有効な手法です。

図1:団体ロゴとビジョンを合わせて伝えている事例 イメージ図1:団体ロゴとビジョンを合わせて伝えている事例 イメージ

図1:団体ロゴとビジョンを合わせて伝えている事例

ビジョンをわかりやすく伝えるために重要な点の二点目は「言葉だけでなく写真やイラストなどのビジュアルとセットで表現する」ということです。社会課題の解決などを目指すNPO等の取り組みは一般的に馴染みのない、理解してもらいにくいものであることが多いですし、掲げているビジョンは抽象度の高い壮大なものになることも少なくありません。抽象的なビジョンを言葉だけで伝えようとしても、なかなか深く理解してもらう、あるいは共感してもらうところまでつなげるのが難しいのですが、そこでオススメなのが写真やイラストと組み合わせで表現するということです。

図2:ビジョンを言葉とビジュアルのセットで表現している事例 イメージ図2:ビジョンを言葉とビジュアルのセットで表現している事例 イメージ

図2:ビジョンを言葉とビジュアルのセットで表現している事例

例えば認定NPO法人フローレンスのホームページのトップページでは、「みんなで子どもたちを抱きしめる そんなあたりまえを目指して」というビジョンを表現するコピーの背景に、子どもと抱き合う大人(親)の様子を複数の動画を次々と切り替えることで、実現したい社会の具体的な場面の象徴的なイメージを伝える工夫をしています。

また、認定NPO法人スマイルオブキッズのホームページでは、「愛する子どもたちのために」という理念に関わるコピーの横に子どもを抱いている大人の温かみのあるイラストが描かれています。そして、少し時間が経つと実際の活動の様子を伝える写真に切り替わるのですが、その際にイラストと似たような構図で子どもを笑顔で抱いているスタッフさんの写真が示され、コピーで宣言した理念を実際の現場で体現している様子が伝わってきます。

例としては子どもや子育てに関わる活動をしていて、キーワードとしても「子ども」「笑顔」「抱く」と近しい表現の両団体ですが、それぞれの活動現場での象徴的な場面と理想を表すビジュアル表現が組み合わさることで、その団体独自のビジョンがしっかりと表現されています。

このように、「誰のために取り組んでいるのか、どのような社会になることを望んでいるのか。」という抽象的な理想状態のイメージを言葉だけでなく写真やイラストとセットで表現することで伝わりやすくすることができます。ビジョンの言葉としての抽象度が高い場合には、ビジョンが実現したときに見られるような象徴的なシーンを描いたり、実際の活動風景の中でビジョンの実現につながっていると感じられる瞬間の写真を活用したりするといった観点で考えてみてください。ビジュアル表現が組み合わさることでより共感につながりやすくなります。

ユーザーからの
共感が活動の
輪を広げる

ビジョンへの共感というのはNPO等の活動においては非常に大切で、それがなければ参加にも支援にもなかなかつながりません。ホームページの活用やホームページ上でのデザイン等の表現を考える上でも、細かなデザイン上のテクニックやトレンドはもちろん大切ではありますが、まずは自分たちのビジョンをどのように表現すると一番伝わりやすいのかをしっかりと考えてみることをオススメします。

執筆者紹介

堤大介 ファンドレイジング・コンサルタント、上級ウェブ解析士

1986年北海道生まれ栃木県育ち 筑波大学第一学群社会学類卒。大学卒業後、2010年に楽天株式会社に新卒入社。新規事業開発系部門にてマーケティング、事業開発などに従事し6年間勤務。2011年よりプロボノとして複数のNPOの支援、立ち上げを経験。2016年5月より株式会社PubliCoにて、非営利組織の戦略コンサルタントとして2年間従事。2018年4月より株式会社STYZに転職し、非営利組織向け寄付プラットフォームSyncableのサービス開発、コンサルティング部門の立ち上げを行い、2019年5月に公益組織支援のコンサルティングとして独立。

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