お役立ちコラム
ソーシャルビジネスの
広報活動①
~ホームページで
見つけてもらう、
知ってもらう~
- 執筆者
- 山田泰久 (一財)非営利組織評価センター 業務執行理事
よい団体と評価
されるために
見つけてもらう、
知ってもらう
『よい団体とは、よい活動とよい情報発信をしている団体である』
NPO向けの情報発信講座で毎回伝えていることです。NPOを含む非営利組織やソーシャルビジネス事業者が数多く増えている中で、よりよい活動を提供していくとともに、団体や活動のことを知ってもらう取り組みが必要です。事業の対象者に情報がしっかり届き、活動やサービスを利用してもらって、はじめてよい活動になるわけです。ソーシャルビジネスとして扱っている領域や分野は世間にはあまり知られていません。ソーシャルビジネス事業者は、組織または活動として、見つけてもらう、知ってもらうことが必要です。
一般のビジネスでも、認知度向上のためにインターネットでの情報発信が当たり前になってきました。よく知られていないソーシャルビジネスだからこそ、多くの人が情報収集のために活用しているネットでの発信に力を入れることが大事になってきます。また、自団体の広報や宣伝だけではなく、ソーシャルビジネスの場合は市民視点の情報発信として、専門的な情報を必要としている人に情報を届けることや、自ら情報発信できない人に代わって発信することのような、地域のメディアとしての機能も求められています。
活動や
生み出す価値の
見える化
そもそも、NPOやソーシャルビジネスの活動は外から見るだけではわからない存在です。例えば、親子サロンを行っているコミュニティカフェは実際に訪問して体験しないとその役割や意義は伝わりにくいものです。活動を理解してもらうためには、自分たちの活動についての可視化と、その活動から生み出される価値についての言語化をしたうえで、発信していきましょう。自分たちが感じている価値は実際に体験した当事者以外には伝わりにくいものです。あらためて丁寧に言語化して発信していくことが、活動を正しく理解してもらうのに必要不可欠です。この作業は、事業の対象者だけではなく、助成財団や寄付者などの支援者、あるいは就職を検討している人に対するアピールにもなります。情報発信はサービスや活動の顧客に対するものと思いがちですが、同時に助成金や寄付などの支援獲得、人材採用などの側面でも役に立ちます。
ソーシャル
ビジネス
だからこそ
インターネットを
活用しよう
総務省が毎年発行している情報通信白書令和2年度版によれば、2019年の個人のインターネット利用率は89.8%となっています。また、端末別のインターネット利用率は、「スマートフォン」が63.3%、「パソコン」が50.4%となっています。SNSを含むインターネットでの発信は必須であり、かつスマホ対応を意識するべきです。とはいえ、地域での情報発信においては、半分は紙、半分はインターネットの「情報発信半々時代」です。本コラムではインターネットをテーマにしていますが、紙もインターネットもそれぞれ大事な情報発信です。紙中心の人にとっては紙の情報がなければ、インターネット中心の人にとってはネットの情報がなければ、存在していないのと同じです。情報を届けたい人に応じて、ツールを使いわけざるをえない時代はまだまだ続きますが、もはやインターネットの情報発信はやらない選択肢はない時代になっています。
インターネットでの情報発信では、ストック情報とフロー情報を意識しましょう。ストック情報とはGoogleなどの検索サイトで検索した時に見つけてもらいやすい情報で、インターネットの中に過去からストック(蓄積)されています。フロー情報はTwitterやFacebookなどのSNSでどんどん流れていくもので、直近に発信された情報が見られています。2種類の情報をバランスよく発信していくことがポイントです。一般の人が情報を探す時には検索サイトでキーワード検索を行いますので、ストック情報を蓄積してくことが大切です。ホームページやブログでの情報発信は、このストック情報がどんどん蓄積されていきます。ホームページでの情報発信は、まだ接点のない人とキーワード検索を通じてつながるチャンスです。
世間一般的にまだ身近とは言えないソーシャルビジネスにおいては、事業者が自ら積極的に情報発信を行い、見つけてもらうことがとても大事です。特に、情報収集の方法がWebやSNSなどのインターネットの利用が当たり前になっている今、ホームページでの情報発信が重要です。インターネットが新しい顧客との接点になったり、助成財団や行政の関係者に対する説明責任とアピールになったりします。ホームページは見つけてもらう、知ってもらう、理解してもらう、そしてアクションをしてもらうために、ソーシャルビジネス事業者にとってはなくてはならないツールです。
情報発信で
信頼性を
高めるための
ポイント
ソーシャルビジネスによるホームページは、どのような事業や活動、サービスを提供しているのかを伝えるためのメディアです。あるいは、寄付や助成金などの支援を獲得するためにも使われます。もう一つ、大事な役割があります。それは団体の信頼性です。サービスを提供したり、寄付を集めたりしている団体が信頼できるかどうかが、利用者や寄付者にとっては重要な評価軸になります。したがって、団体の信頼性を高めるために情報発信が必要です。その観点では、以下の表の通り、3つのポイントがありますので、これらを意識してサイト構築を考えましょう。
信頼性の判断ポイントと発信するべきコンテンツ
信頼性の 判断ポイント |
団体の「基本的な情報」 自分たち(団体)は 何者なのか? |
団体の「活動・事業情報」 自分たち(団体)は 何をしているのか? |
団体の「財務情報」 何にいくらお金を 使っているのか? |
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発信するべき コンテンツ |
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信頼性の 判断 ポイント |
団体の「基本的な情報」 自分たち(団体)は 何者なのか? |
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発信 するべき コンテンツ |
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信頼性の 判断 ポイント |
団体の「活動・事業情報」 自分たち(団体)は 何をしているのか? |
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発信 するべき コンテンツ |
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信頼性の 判断 ポイント |
団体の「財務情報」 何にいくらお金を 使っているのか? |
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発信 するべき コンテンツ |
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ソーシャルビジネスを行っていると、どうしても活動中心となってしまい、情報発信がおろそかになってしまいます。しかし、活動と情報発信は、地域で困っている方に活動を届け、地域や社会に貢献する存在であるソーシャルビジネスにとっては、車の両輪です。どちらも欠かすことができないものです。したがって、情報発信も事業と同じように体制づくりが大事ですので、以下のポイントを意識して体制を整備してみてください。
- ①文章を作成する、写真を撮影する、ホームページにアップするという分業体制をつくる
- ②更新のために、テーマと作業の年間スケジュールと月間スケジュールを作成する
- ③情報発信の上手な団体を同じ地域、同じ分野でそれぞれ3団体、計6団体を見つけ、ベンチマークする
ホームページを含めた情報発信は、自分たちのことを見つけてもらう、知ってもらうためのものです。その一方で、様々な社会課題がある中で、みなさんの活動を通じて社会課題のことを知ってもらい、理解してもらうための周知啓発のことを常に意識して情報発信を行っていくのも大事なことです。みなさんの日々の情報発信が社会を変える小さな一歩にもなります。
執筆者紹介
山田泰久 (一財)非営利組織評価センター 業務執行理事
1996年日本財団に入会。2009年から公益コミュニティサイト「CANPAN」の担当になり、NPOの情報発信、助成金、IT活用、寄付をテーマに様々なNPO支援の活動に取り組む。
2016年4月、(一財)非営利組織評価センター(JCNE)の設立とともに、業務執行理事に就任し、非営利組織の組織評価・認証制度の普及に取り組んでいる。
非営利組織評価センター:https://jcne.or.jp/