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社会起業家から学ぶ!チャレンジが生み出す事業化への道

「一億総相互扶助社会に!」「海外の労働環境を変えたい!」その"思い"をビジネスに!

公開日:2024.11.1

お話しいただいた方

株式会社CNC 執行役員 古林 拓也 様

所在地:島根県雲南市

2018年、新潟県村上市にて地域商社を設立・経営。2023年、京都府京田辺市にて家業(小売業)を継承。ソーシャルスタートアップ・執行役員、財団法人・インパクト・オフィサー、大学・非常勤講師等を兼任。経営と政策の協働を通じ、ローカルイノベーションの実現に取り組む。
企業WEBサイト(https://cncinc.jp/

Sunday Morning Factory株式会社 代表取締役社長 中村 将人 様

所在地:福岡県福岡市

「社会問題をビジネスの力で解決する」をミッションに掲げる(株)ボーダレス・ジャパンに新卒で入社。1年間マーケティングを学んだのち、バングラデシュの児童労働問題の解決を目指し、子ども服の事業をスタート。2017年ベビー服ブランド「Haruulala organic」を立ち上げ独立。現在バングラデシュの工場で130名の仲間と共に、さらなる雇用の創出に取り組む。
企業WEBサイト(https://sundaymorning-f.com/

「"コミュニティナース"を全国へ!」「バングラデシュの労働環境を変えたい!」

まず「株式会社CNC」の事業について教えてください

古林様

私たちは"一億総相互扶助社会"の実現に向けて、"コミュニティナース"の育成と、"コミュニティナーシング"という手法を日本全国に広めていこうという仕事をしています。

"コミュニティナース"というのは、地域の方々と繋がり、街を元気にしていく、そのような存在のことを指しています。ナースというと、看護師を想起されると思いますが、職業や資格で縛られず、誰もが実践できるものとして、毎日の喜びや社会的な健康を作り出していくことに寄与していく、このような役割を担うのが、私たちが定義する"コミュニティナース"です。

現在全国で、約1,000名を超えるコミュニティナースが活躍しています。公営住宅や公民館、産直の市場、カフェ、郵便局、移動販売など、全国の様々なチャンネルで、暮らしのそばから地域の方々の一人ひとりと顔の見える関係性を築いています。住民同士のつながりを深め、互いに助け合うコミュニティを広げていくことで、結果的に育児や介護の負荷を減らしたり、孤立状態を和らげたり、病気の進行を未然に防ぐことに繋がります。このようなコミュニティナースとしての活動をさせていただいているのが当社です。

続いて「Sunday Morning Factory株式会社」の事業について教えてください

中村様

私たちは、オーガニックコットンで作ったベビー服ブランド「Haruulala(ハルウララ)」や、産前産後のスポット商品に焦点を当てたマタニティ専門ブランド「MEDEL(メデル)」、カジュアルなセットアップブランドの「KITEN(キテン)」といったアパレルの製造販売を行っています。

10年前に私がバングラデシュに行ったときに、幼くして家計を支えるために働いている、いわゆる児童労働をしている子供たちを見て、この環境を何とかしたいと思って事業を始めました。

バングラデシュという国は、近年では経済発展を遂げている国の一つなのですが、数十年前まではアジアの最貧国と言われるぐらい貧しい国でした。「バングラデシュの子供を育てるお父さん・お母さんたちが、生活に困らない安定した収入が得られる仕事があったら、子供たちは学校に通えるようになるのでは」と思い、現地に縫製工場を建てました。

そこで最初に立ち上げたのが、「子供たちの未来を変えるベビー服」をミッションに掲げた「Haruulala」というブランドになります。

現在は、バングラデシュの工場で作ったものを日本国内のほか、台湾や香港といった海外に向けて販売しています。

社会実装による"収益化"と、作り手への"還元"をどうするか?

コミュニティナースの事業はどのように収益を確保しているのでしょうか。

古林様

導入を目指す民間企業や地方自治体に対し、コミュニティナースの拠点立ち上げ支援を行っています。導入のフェーズに応じて、人員の採用・育成・派遣、コンサルティング、事業開発支援を提供することで私たちの売り上げとなります。

私たちのクライアントは自治体や企業の方ですが、地域の中に相互扶助のネットワークを入れることによる成果はそんなにすぐは出てこないので、社内の稟議を通すことがとても難しいという話を聞きます。社内でご理解いただけるように、自治体や企業の皆さまと我々が一緒にストーリーを組み立てて、コミュニティナースの実装に向けて話を進めさせていただいております。

作り手に還元する経営において、"還元率"を高めるための工夫について教えてください。

中村様

"単価を上げる"ということを念頭に置いていますね。まず事業を立ち上げる際は、出産祝いのギフト商品に特化しました。ギフトはある程度の価格のものを購入すると思うので、私たちはギフトとして選ばれる商品を作ろうと決め、素材をオーガニックコットンにするなど、単価を上げる工夫をしてきました。

私たちにとって商品の原価は、作り手、つまり工場で働くメンバーへの還元となります。この還元が児童労働の解決につながります。「原価をどんどん上げていこう!」という方針は、普通のメーカーの、いかに原価を下げられるか、とは逆の取り組みになると思います。しかし、私たちは原価を上げに行くことが目標になっていて、どのようにしたら原価を上げ、作り手に還元できるかを日々考えています。

この事業を開始して7年になるので、当時からいる職人さんたちのスキルがどんどん上がってきています。スキルの向上に伴って彼らの給与も上げて、より高度なものを作っていこうということになり、そこで単価の増加も見込める大人向けのジャケットやセットアップの製造へと発展してきたという経緯があります。

事業を展開する上で大事にしていること、またその苦労とは?

これまでにない概念の事業を展開する上で、大事にしていること教えてください。

古林様

一番エネルギーを使ってきたのは、私たちが目指す一億総相互扶助社会を実現するために、どの地域でも再現可能なサービスや仕組みを作り上げるということですね。

また、我々が提供するサービスを広げることで、地域にどのような効果があるのかということをしっかりお伝えするようにしています。例えば、「コミュニティナースという役割は、従来のコミュニティーワーカーと何が違うのか?」ということや、「コミュニティナースを地域に入れた場合の費用対効果はどのくらいなのか?」などの声を多くいただきます。それに対して、私たちなりの答えというか、思いをしっかりお伝えして、ご一緒させていただくパートナーの方とともに互いに納得感をもちながら進めていくことを大切にしています。

立ち上げの際の苦労などがあれば教えてください。

中村様

私たちはものづくりをしている会社なので、事業の立ち上げ期に一番苦労したのは一定の品質の商品を生産するための仕組みづくりでしたね。私たちの工場は、児童労働の解決に向けて取り組んでいるので、従業員となるのは子供が働かざるをえなくなるような家庭のお父さんやお母さんです。「ミシンの縫製技術がない」「文字が読めない」「子供がいるので長時間働けない」といった事情や制約を抱えた人でも働くことができるように、トレーニングや生産ライン作りなどの仕組みを作るまでが一番大変でした。

最初は、商品の品質が安定せず、30~40%が規格外商品となってしまっていました。そのせいで資金繰りも大変でしたね。その後、従業員の教育や生産するための仕組みづくりの成果が出たおかげで、規格外商品を全体の2%程度まで改善することができました。

(※)本記事は、日本公庫主催イベント「社会起業家から学ぶ!チャレンジが生み出す事業化への道」(2024年8月28日(水))の内容を抜粋したものです。

聞き手

株式会社taliki 代表取締役CEO/talikiファンド代表パートナー 中村 多伽 様

所在地:京都府京都市

京都大学卒。在学中にカンボジアに2校の学校建設を行う。その後、ニューヨークのビジネススクールヘ留学。現地報道局に勤務し、2016年大統領選や国連総会の取材に携わる。様々な経験を通して「社会課題を解決するプレイヤーの支援」の必要性を感じ、帰国後に株式会社talikiを設立。社会起業家のインキュベーションや上場企業の事業開発を行いながら、2020年には国内最年少の女性代表として社会課題解決VCを設立し投資活動にも従事。

企業WEBサイト(https://www.taliki.co.jp/

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