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社会起業家のストーリー 味方を増やす共感の力とは

現場を知って、"最初の一歩"を踏み出そう!

公開日:2023.10.27

お話しいただいた方

キヤスク代表 株式会社コワードローブ 代表取締役CEO 前田 哲平 様

所在地:千葉県習志野市

2021年1月にコワードローブを設立。2022年3月より障がいや病気のある方々とその方をそばで支える人向けの服のお直しオンラインサービス『キヤスク』を運営している。
企業WEBサイト(https://co-wardrobe.com/

株式会社ソマノベース 代表取締役 奥川 季花 様

所在地:和歌山県田辺市

2021年5月に災害リスクの低い山づくりを目指し(株)ソマノベースを設立。自宅で植林用苗木を育てる、購入者参加型の新しい形の観葉植物「MODRINAE」を発表し、Wood Change Awardやウッドデザインアワードを受賞。その後ECサイトを開設。今期から企業向けにもMODRINAEを販売開始している。
企業WEBサイト(https://somanobase.com/

"現場を知る"ことが重要

「キヤスク」の事業について教えてください

前田様

既製服を"着やすく"お直しをする事業です。私は元々2020年までユニクロで働いており、そのときに、障がいや病気のある方の服の選択肢が少ないということを目の当たりにしました。自分にできることはないかと考えたときに、洋服を新しく作るよりも、お直しをする方が自分の解決したいことを目指せるのではないかと思い、独立して今のサービスを始めました。

<キヤスク概要>

「ソマノベース」の事業について教えてください

奥川様

土砂災害による人的被害をゼロにすることを目指して、それを「林業」から解決しようとする事業です。私は高校時代に紀伊半島大水害(2011年)の被災をして、友人を亡くしてしまったことをきっかけに、国の予算だけで防災に取り組むのではなく、民間からも何かできることはないかということで事業を立ち上げました。

<ソマノベース概要>

それぞれの事業における具体的な事例を教えてください

当事者に"寄り添った"事業の展開

前田様

一般のお直しでは依頼できないような、体の不自由な方のニーズに対応したサービスを提供しています。例えば、指先が不自由でボタン留めが難しいという方にはマジックテープにするなどのお直しです。また、担当するスタッフについては、障がいを持つお子さまのお母さんが担当しており、お客さまのニーズ把握や共感を持った対応ができ、そのサービスを在宅のままフルリモートで提供するというサービスモデルを展開しています。

<パンツの両足横開き>

奥川様

今、日本には間伐されてない山や管理放棄された山がたくさんあるのですが、そういった山を管理していくことが災害防止にも災害リスクを下げることにも繋がってきます。ですが、現状はお金も知識も人手もないというところばかりで、手を付けられていないので、私たちは全国の森林に関わる様々な方とコミュニティを作りながら、一般の方や企業の方に森林に関わるプロダクトやサービスを提供して、そこから山を整備していこうという活動をしています。一番メインでやっているプロダクトが「MODRINAE(戻り苗)」というもので、どんぐりを植林用の苗木になるまでを各ご家庭で育てていただく、そんな体験型の製品を作っています。

<MODRINAE(戻り苗)>

事業を始めるにあたって準備したことやプロセスを教えてください

より具体的なサービス設計と"現場を知る"こと

前田様

まず当然ですが、サービスの骨格作りをしました。どういう形で、どうやってお客さまに提供するのかの骨格を作った後に、クラウドファンディングで事業の立ち上げ資金の一部を集めました。もう一つは、車椅子ユーザーの知人にお願いをして、実際に自分が着たい服を一般のお直しする店舗へ持っていってもらって、依頼して戻ってくるまでの過程を体験してもらいました。その後、そこで不便に感じたことを全部教えてもらって、それと逆のことをすればいいのではと、サービス設計を具体的に考えました。

奥川様

3つあって、ソーシャルビジネスについて勉強すること、現場を知ること、また実証してみることをやってきました。まず私はソーシャルビジネスだけをやっているベンチャーに入って、事業の立ち上げにも関わり、稼ぐことと社会性を両立することの大事さや難しさを学びました。現場を知るというのは、林業の現場の視察を大学生のときからやっていたり、実際に林業の会社に就職させていただいて木を切るとかそういったことから経験をさせてもらったりしました。そして、最後に実際やってみるということで、私もクラウドファンディングで資金を募ったり、ビジネスコンテストに出て自分たちが考えたアイデアを発表して、反応をみたりということをやりました。

強い思いが事業の軸を作る

ソーシャルビジネスを始めるにあたって、お二人のように"原体験"が必要だと思いますか

「この人を助けたい!」という強い思いが事業の軸を作る

前田様

振り返ってみたら原体験があって今のビジョンがあるのだなと思うので、原体験は何らか必要だと思いますし、それが必ず今のビジョンに繋がってくるのではないかなと思います。

奥川様

強い共感みたいなものは、必要なのではないかと思います。例えば自身が被災していなかったとしても、「この人を助けたい!」という強い思いが心の底から出てくれば、それはある種原体験なのかなと思うので、そのような経験があるほうが事業の思いを伝えやすかったりしますし、助け合うためにはどうすればいいかという事業の軸ができていくのかなと思います。

"最初の一歩"を踏み出そう!

最後にソーシャルビジネスを目指す方へ伝えたいメッセージがあればお願いします

"最初の一歩"を踏み出すことが重要

奥川様

ソーシャルビジネスは世間でも難しいと言われていて、私自身もまだどのように売り上げを上げて会社を存続させるか、とても苦労している部分もあります。このようななかで、同じような思いでソーシャルビジネスをされている方々との"横のつながり"が大事だなと思っています。皆さん様々なノウハウを持っていらっしゃるので、自分も事業を立ち上げられるだろうか?と思っている方は、まずそういった環境に入ってみる、たくさんの人たちとつながってみる、このようなことがもしかすると最初の一歩になるのかなと思います。

前田様

これはソーシャルビジネスに関わらずだと思いますが、やはり当初の想定と実際やってみるのとでは全然違うということは当然出てきますし、やりながら軌道修正していくことがビジネスだと思います。なので、まずいきなり起業という形ではなくても、クラウドファンディングで資金を募ってみるなど、そういうところからでもいいので、何とかしたいという思いがあるならば、それを形にするために、まず何か行動するということがとても重要な最初の一歩なのではないかと思います。

<イベント時の様子>

(※)本記事は、日本公庫主催イベント「あなたのビジネスが社会を変える~わたしたちの最初の一歩~」(2023年8月25日(金))の内容を抜粋したものです。

聞き手

KIBOW社会投資ファンド 代表パートナー グロービス経営大学院 教員 山中 礼二 様

キヤノン株式会社で新規事業の企画・戦略的提携に携わった後、2000年にグロービスに参加。グロービス・キャピタル・パートナーズでベンチャー企業への投資と経営支援を担当。その後、医療ベンチャーのヘルス・ソリューション(専務取締役COO)、エス・エム・エス(事業開発)を経て、2013年よりグロービスに復帰。社会起業家向けのインパクト投資を行っているKIBOW社会投資ファンド、グロービス卒業生向けのG-GROWTHファンド、アクセラレーター・プログラムG-STARTUPファンドなどを担当している。

企業WEBサイト(https://kibowproject.jp/investment/impact.html

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