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連携による社会課題解決の取組みと可能性

2つの企業が手を組むことで実現した「パティシエのお仕事体験」

公開日:2023.7.18

お話しいただいた方

合同会社 EOT.edu 代表 日比谷 雷太 様

所在地:愛知県岡崎市

事業内容:次世代を担う子どもたちの個性を引き出すため、さまざまな体験を積む場を提供。岡崎市内のダンス、音楽、美術、お菓子づくり、プログラミングなどの各教室と連携し、好きな習い事を受講できるサービスを開始。2023年度からは仕事体験・起業家教育などの体験事業に力を入れている。
企業WEBサイト(https://dot-room.com/

株式会社LIFE  代表取締役 近藤 真仁 様

所在地:愛知県岡崎市

事業内容:2021年に出身地の岡崎市で「洋菓子店LIFE」を開店。2023年3月には2店舗目をオープン。SNSのフォロワーは9千を超え、大手百貨店の依頼で催事販売を行うなど、地元の人気店に成長している。
企業WEBサイト(https://life-patisserie.com/

子どもの教育や将来についてのそれぞれの思いから、連携した仕事体験の実施へ

事業での取組みについて教えてください。

日比谷様

子どもたちの教育環境をより良く、今の時代に合ったものにしたいという思いで、2021年に「EOT.edu」を立ち上げました。当初は、子どもたちがいろいろなことにチャレンジし、本当に好きなものを学べるようにサブスク型の習い事サービスを提供しました。また、3ヵ月で学んだことを発表するプロジェクト型の習い事のほか、仕事体験も行ってきました。現在は、仕事体験に重きを置いています。

近藤様

2021年から洋菓子店(販売業)を開業し、先日3年目に入りました。最近では3月に高島屋に2店舗目を出しました。お店のコンセプトは"楽しい、面白いケーキ屋さん"。お客さまがお店に来るときは、記念日や手土産、おいしいものを食べたいといったポジティブな理由が多く、その明るい気分をどう商品として提供できるかを考えています。さらに働くスタッフにも、ケーキ屋さんは楽しいということを伝えたい、そんな思いで経営しています。

<洋菓子店「LIFE」の店内>

仕事体験によって子どもたちの個性を伸ばすことに取り組もうと思ったきっかけは?

興味のあることの体験による学びを

日比谷様

自分の子どもの教育に触れたことです。AIや宇宙開発など、社会は大きく変化しているなかで、教育も時代に合わせていく必要があると感じました。学校教育も大切ですが、子どもが興味をもって主体的に取り組むようになるには、教科だけではないワクワクする学びが重要です。そこで、民間の立場で何かできないかと考えたのが「仕事体験」です。興味のあることを、現場で体験することは、学校教育とは別の学びになると思っています。

2社で連携して、仕事体験を開催するに至った経緯を教えてください。

相談から紹介、そして連携へ

日比谷様

仕事体験は、受け入れ先があって、そこと連携することで開催が可能となります。受け入れ先を広げたいと税理士の方に話したら、日本公庫に相談することを勧めてもらいました。子どもたちに人気の職種であるパティシエを紹介してほしいと日本公庫に相談したところ、近藤さんを紹介していただきました。日本公庫の担当者の方に同行してもらい、近藤さんにお会いして「子どもの個性を大切に、インプット型ではない仕事体験をしたい」と私の思いを伝えると、近藤さんからはたくさんのアイデアが出てきて、実施しようということになりました。

子どもの仕事体験をやってみることに決めた理由は?

子どものため、スタッフのため、商売のため

近藤様

仕事体験をやってみようと思った理由は3つあります。①子どもたちが楽しく、仕事の大変さをわかってほしい。②参加してくれるスタッフたちに、自分たちの働き方を振り返って、楽しさに気づいてほしい。③商売としてのファンを作りたい。

私には子どもがいますが、大人になったときにどのように働いていくか選択肢を増やすためにも、小さいときからいろいろ学んでほしい、という思いがあります。また、働いてくれているスタッフのことも大切です。「将来、自分の子どもを働かせられる環境の職場だ」と自信をもって言えることは、スタッフにとってもいいはずだと考えました。今回のイベントは、子どもたちのためだけでなく、職場について考える意味も込めて、「パティシエのお仕事体験」の実施を決めました。

アイデアを出し合い、工夫を凝らしたプログラム

「パティシエのお仕事体験」では、どのようなことをしたのですか。

定員を大きく上回る応募

日比谷様

今回は定員が7人。SNSで募集をかけたところ、近藤さんの協力もあり、60人ほどの応募がありました。仕事体験の日もお店は通常営業のため、店内には子どもだけ入ってもらうことにしました。そのため、親御さんにはインスタライブの専用アカウントで、どんな状況かを伝えるよう工夫しましたね。

商売は誰かのために何かをするもの

近藤様

「ホールケーキを1台作ります。 誰のために作りますか?そのケーキのデザインを考えてください」というお題を事前に出しました。商売は、誰かを喜ばせる、人がやりたくないことを代わりにやる、便利になることを提供するなど、誰かのために何かをするもの。 ケーキ屋さんは、人を喜ばせるためにケーキを作る仕事なので、「誰のために作るのか」を考えてもらいました。

ケーキ作りだけではない仕事体験

近藤様

当日、子どもたちにはパティシエの帽子をかぶってもらい、「いらっしゃいませ」の声出しからスタートしました。重たい小麦粉袋を持ち上げて、実際に触ってみてもらう。機械を使ってスポンジ生地を作り、家庭とは方法が違うことも伝えていく。事前に準備したデザインのパーツを使って、スポンジにデコレーションする。できあがったケーキは、ショーケースに並べ、入店した親御さんに買ってもらう。購入代金が参加料となります。「今日は誰かのためにケーキを作った。仕事として働いたので、給料が出ますよ」と言って、商品引換券をポチ袋に入れて渡し、お金の勉強も要素に入れました。

<子どもたちがレクチャーを受けているところ>

仕事体験の開催で得られたものと今後の挑戦

このイベントによる事業へのプラスの効果は?

ファンづくり、スタッフのモチベーションアップ

近藤様

今回のイベントは、ファン作りの視点もあります。お金の面で言うと、ここまでのことをすると人件費、材料費などで儲けはありません。ただ、このイベントで儲けを考えるより、徹底的にやって、子どもや家族、クチコミをしてくれる人などにファンになってもらおう。このような商売の視点として、設計しました。その結果、商品引換券によって、参加者の方々にまた来店してもらえましたし、話すきっかけもできました。スタッフも参加してくれた子どもたちのことを覚えているから嬉しいし、やってよかったと思える。通常業務のルーティンで忘れてしまう気持ちに立ち返る効果もありました。

連携による自社の認知度アップ

日比谷様

効果は本当に想像以上で、自分にとっても学びになりました。お客さま目線、ファン作りという視点がなかったので、驚きの連続でした。また、作ったケーキのクオリティーが高く、子どもが考えたとおりの出来栄えで、親御さんがお金を出して買うときにとても感動していました。参加者の親御さん用のインスタライブの動画は、弊社内でも活用させていただき、事業の宣伝や紹介にもなりました。イベントの参加者募集時に近藤さんにSNSで案内していただいた効果で、フォロワーが増えたのも大きいです。

今後の展望や希望について教えてください。

日比谷様

子どもや親御さんには、さまざまな仕事があるんだということを伝えていきたい。そして、だれかを喜ばせるという感情を知ってもらいたい。そのうえで、発展版として単発で終わらない探求・創造のプログラムを作ったりするなど、いろんな企業とコラボしていきたいです。今後、<学校と社会をつなぐコーディネーター>の役割を、「探究型仕事体験」「創造型仕事体験」というコンテンツを通して行っていきたいと考えています。

近藤様

夏休みなどの機会を活用して、定期的にパティシエ職業体験を実施したいと考えています。ここからは希望になりますが、子どもの教育について、自分たちも関わりたいという企業がいれば、スポンサーとして支援してもらうなど、もっと輪が広がっていく可能性があるのかと思います。今後、選択肢の一つとして考えていきたいです。

日本公庫担当者の声

2社とも創業間もない事業者ですが、それぞれの強みを活かしたコラボレーションが実現し、その結果、子どもたちの成長に向けた社会的課題解決につながるだけでなく、付加価値あるサービス提供や、新規の顧客確保につながりました。何よりも参加した子どもたちやそれを見守る親御さんの笑顔を見ることができとても良かったです。この中から、将来の洋菓子経営を目指す子どもが出てくることを期待したいです。

今回の件は、公庫が資金繰り支援だけではなく、本業支援を行っていることを知った税理士からマッチングできないか依頼があり、このような支援に結びつきました。

岡崎支店国民生活事業融資第二課 清水 大輝

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