参加校インタビュー

「エビデンスって何なん?」、
ビジネス知識ゼロからのグランプリ獲得

  • 第6回グランプリ

京都府立木津高等学校
近美夕子さん、伊藤一紗さん、高屋友里さん、北川紗希さん

おもろいからやってみぃひんか?

松田俊彦先生

木津高校は、日本遺産の茶園と茶工場を擁する創立118年の伝統校。グランプリを受賞したメンバーは、ソーシャルビジネス研究班の近美夕子さん、伊藤一紗さん、高屋友里さん、北川紗希さんの4人。

仕掛け人は、2018年4月に異動してきた松田俊彦先生。前任校は、第1回高校生BPGで準グランプリを受賞。その後も、4年連続でセミファイナリスト以上を受賞した京都府立桂高等学校。そのすべてのチームを指導してきた“高校生BPGの受賞請負人”だ。

「前任校で高校生BPGに携わり、普段は人前で話すのが苦手だった生徒が地域の大人たちと触れ合うなかで成長を遂げる姿を何度も見てきたので、ぜひ木津高校の生徒にもあの経験をさせたいと思いました」と、松田先生は高校生BPGについて話す。

だが、木津高校の教師も生徒も、高校生BPGのことなどほとんど知らなかった。それゆえにメンバー探しも難航した。松田先生は担当クラスや顧問をしている剣道部の生徒に、「おもろいからやってみぃひんか?」と声をかけ、なんとか4人をスカウトしてソーシャルビジネス研究班を立ち上げ、ビジネスプランづくりの土台をつくった。「最初はどういうもんか全然わかってませんでした」という近美さん。伊藤さんも、「人前に出ることが苦手なので、それを克服できるならって感じで始めました」と、当初の感想を率直に話す。

1週間考えたプランが、たったの5秒で却下

ネットニュースなどを中心に情報を収集し、ビジネスプランのテーマを探す日々が続いた。そんなある日、京都大学名誉教授の講演で聴いたフレーズ、「ジムへ行くなら階段を使え!」のフレーズがきっかけとなり、「階段エクササイズ」のアイデアが生まれた。そこから松田先生の厳しい指導が始まった。「きっかけは与えるけれど、考えて行動するのはあくまでも生徒。毎週のように課題を出してプランを考えさせました」

最初のうち生徒が提出したのは、独創性のないプランや、説得材料に欠けるプラン、論点がずれたプランばかり。松田先生は、「根本的に考え直せ」と、何度もやり直しをさせた。「1週間必死で考えたプランが5秒で却下されると、さすがにヘコみましたね」と高屋さんは当時を思い返して苦笑いする。

さらに、「他の教科や商業科の先生にプランを見せてアドバイスをもらってくるように」と指示され、生徒は文句を言いながらも先生を捕まえてアドバイスをもらい続ける。それを繰り返すうち、徐々にメンバーの企画力や構想力が磨かれていった。

次のステップとして用意されたのが、現役の銀行員を招いてビジネスプランをレビューしてもらう「ブラッシュアップ会」。参加した銀行員から「高校生とは思えない質の高いプラン」と評価されるものの、「アイデアが拡散し過ぎているので、企業向けに絞るなど現実的なアプローチが必要」との厳しい指摘もあった。北川さんは、「エビデンスとかスキームとか難しい単語ばかりで、最初は何を言っているのか全然分かりませんでしたが、一つひとつネットで検索して調べました」と話す。

試行錯誤の末、「階段は健康寿命の架け橋 ~運動不足すぎる日本人への警鐘~」というビジネスプランが完成した。オフィスビルなどと契約して階段にセンサーを設置し、ユーザーが専用アプリで登った段数を記録し、目標段数に達すると特典が得られるというもの。こうして、多くの先生や地域の大人たちの協力でブラッシュアップされたソーシャルビジネス研究班のビジネスプランは、書類審査を通過し、年明けに東京大学で開催される最終審査会への切符を勝ち取った。

駅までの帰り道に大声でプレゼンの練習

書類審査通過の喜びもつかの間、次に立ちはだかったのは、プレゼンテーションという高い壁だった。なかなか上達がみられない生徒たちを奮い立たせるべく、松田先生は過去の高校生BPGプレゼン動画を見せて、「このレベルに達しないと話にならん」とはっぱをかけた。

「その頃から、みんなで『やばいんちゃうか』って話すようになり、冬休みは毎日練習することに決めました。チームとしてのまとまりが出てきたと思います」と近美さん。冬休みの間、学校に集まり、プレゼンの舞台に立つ近美さん、伊藤さん、高屋さんが原稿を読んで寸劇を行い、北川さんが監督役となって毎日遅くまで練習を繰り返した。特に、人見知りが激しい伊藤さんと長文を覚えるのが苦手な高屋さんは、悪戦苦闘した。「家だと家族に『うるさい』って言われるので、学校から駅までの帰り道に声を出してプレゼンの練習をしました。きっと、変な子がいるって思われていたでしょうね」と高屋さんは笑う。

そして迎えた2019年1月13日の最終審査会。舞台下から発表を見守ることになった北川さんは、「練習より出来が良かったので優勝できるって確信してました。だって、練習量じゃ誰にも負けない自信がありましたから」と話す。

その言葉通り、グランプリ受賞校として木津高校の名前がアナウンスされた。その瞬間、松田先生も思わずガッツポーズで「よっし!」と声をあげ、喜びをかみしめた。「前任校で5年間グランプリが取れず、優勝には縁がないと思っていました。今回は発表も質疑応答も完璧だったので、負けても悔いはないと思っていたのですが、まさかの優勝でした」

「1年前の私は、いつも自分で答えを出そうとして煮詰まっていたけど、プランづくりを通して人に相談できるようになったところは、成長できたかな」と伊藤さん。北川さんは、「1年前だったら、大人が話しているときには黙って聞くことしかできなかったけど、今は相手の話を理解しながら会話できるようになり、自信がつきました」と自身の成長について話す。「今回はメンバーに頼ることが多かったので、次回は自分も戦えるようになりたい」と高屋さん。「今回は調べ学習的な内容だったので、次回はもっと時間をかけて自分たちで動き、将来の実になる私たちらしいプランにしたい」と、近美さんは今後の抱負を話してくれた。

第6回グランプリに輝いた木津高校ソーシャルビジネス研究班、その実力が試されるのはこれからだ。4月には男子メンバーも加わりパワーアップしたソーシャルビジネス研究班は、これまで誰も成し遂げていない前人未到のグランプリ2連覇を目指し、再び動き始めた。

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