参加校インタビュー

3年目の挑戦で初のベスト100!
受賞より価値ある成果は生徒の成長。

  • 第6回ベスト100

福岡県立鞍手高等学校
三戸周さん、向井明さん、多良優花さん、本田渉くん、助信有夏さん、熊井直登くん

鞍手高校は、なぜ「高校生BPG」を選んだのか

「質実剛健」「自学自習」を校訓とする鞍手高校は、理科・数学に重点を置く理数科と、普通科にもオピニオンリーダー育成を目指す人間文科コースを設けるなど、特色ある教育を実践している。最大の特徴は、九州の高校で唯一、文部科学省からSSH(スーパーサイエンスハイスクール)とSGH(スーパーグローバルハイスクール)のダブル指定を受けていることだ。

鞍手高校が高校生BPGに取り組むことになった背景について、同校教員でSGH課長の松本邦明(まつもとくにあき)先生は、「SGHに欠かせない課題研究を、どのようなカリキュラムで実践するかを検討する過程で高校生BPGの存在を知り、これなら発表の機会はもちろん外部評価も得られ、生徒たちの将来のキャリア形成にも役立つと考え、課題研究の一環として取り組むことを決めました」と説明する。

生徒のビジネスプランづくりを指導した高木菜子(たかきなこ)先生は、高校生BPGについて、「入試制度の改革により、これからは知識を問う従来型の試験から、思考力・判断力・表現力を重視する試験へと変わっていきます。その能力を育成するためには、生徒同士で議論しながら主体的に何かを創り出す経験が必要です。高校生BPGは、課題の抽出からアイデアの落とし込み、ターゲット想定、収支計画の立案まで、論理的にプランシートを作成できる構造になっており、課題研究に適していると感じました」と分析する。

授業でビジネスプランを作成した生徒たちは、その経験から何を学んだのだろう。第6回大会でベスト100に輝いた「Dream Plan 7班」のメンバーに話を聞いた。

三戸周みとまことさんは、「廃電車をホテルに改装するプランを考えついたところまでは良かったのですが、電車の購入やホテルの改装費には億単位のお金がかかることがわかり、収支計画をつくるのが大変でした」と、生まれて初めての収支計画を振り返る。向井明(むかいあかり)さんは、「初期費用が膨大で初年度は赤字スタートとなるなか、どうすれば収支を改善して黒字化できるように計画を立てられるかで苦労しました」と、起業家さながらに事業計画のポイントを話してくれた。この話を聞くだけで、彼らの成長ぶりが手に取るようにわかる。

自由や奇抜さを発揮できることに価値がある

通常の授業をこなしながらのビジネスプラン作成は、生徒だけではなく教員にも負荷がかかるが、高木先生は高校生BPGの取り組みには、それを上回る価値があるという。

「ビジネスのアイデア出しに関して、教師は一切口出ししません。発想力を育てるには、生徒に完全な自由を与えることが大事だと考えるからです。一方、教師にも自由な発想を受け止める柔軟性が求められます。ビジネスには“奇抜さ”も必要ですが、教師が先入観を持っていると、その“奇抜さ”の価値を見抜けないことがあるかもしれない。そういう意味で、高校生BPGへの参加は、生徒だけではなく教師にも学びがあります」

メンバーの多良優花(たらゆうか)さんは、「ビジネスを立ち上げるには、お金もアイデアも必要だと実感しました。ビジネスプランづくりに携わってから、実際にお店を経営している方やビジネスで成功している方を見ると、本当にすごいと感じるようになりました」と話す。

学びを進化させる外部評価の重要性

実は、鞍手高校が高校生BPGに取り組み続ける最大の理由は、生徒たちに外部評価を受けさせることだった。

「総合学習の『フィールドワーク』という時間を利用して、九州大学で生徒がプレゼンを行い、専門家の目で評価してもらいました。ダメ出しされて悔しい思いをしてアドバイスを受けた後に、何度も修正を重ねてプランを完成させていったプロセスは、貴重な学習機会になったと思います」と高木先生は話す。

九州大学でのプレゼンを経験した本田渉(ほんだわたる)くんは、「『収支計画の詰めが甘い』と指摘され、落ち込みました。でも、あの経験があったから、何かを成し遂げるには筋道を立てなければダメなんだと気づくことができました」と。助信有夏(すけのぶゆうか)さんは、「九州大学の教授にアドバイスをもらい、『こういう捉え方をしたらおもしろいかもしれない』と、物事をさまざまな角度から見ることの大切さを学びました」と話す。

ほかにも鞍手高校では、SGHでシンガポール研修に出かけた際にも現地でプレゼンを行ったり、シリコンバレーの起業家とSkypeを介してビジネスプランについてフィードバックしてもらったりと、高校生BPGプランというリソースを最大限に活用し、外部評価を得る仕掛けを生徒に提供している。

ひと回りもふた回りも成長を遂げた生徒たち

「Dream Plan 7班」も、当初は遅々としてプランづくりが進まなかったという。しかし、最終的にはメンバーが団結し、「電車ホテル~田舎に泊まろう~」というユニークかつ魅力的なビジネスプランをつくりあげた。

「自主的に課題を発見し、電車ホテルというアイデアをブラッシュアップし、地域創生プランをつくりあげた。そのプロセス自体に価値があると思います。また、九州大学をはじめ外部の評価や視点を取り入れることで実効性の高いビジネスプランを完成させ、ベスト100に選ばれたことは称賛に値します。生徒たちは1年前と比べて、確実に複眼的思考力が高まったと思います」と、高木先生は教え子たちの成長ぶりに目を細める。

熊井直登(くまいなおと)くんは、「ベスト100に選ばれてうれしかったけど、逆に1位になるにはどうすればいいのかと考えるようになりました。プランづくりに取り組むなかでビジネスへの意欲が大きくなり、『経営者だったらどう考えるだろうか』という視点で物事を考えるようになりました」と、この1年で得た複眼的思考の一端を示してくれた。

鞍手高校の高校生BPGへのチャレンジは今年、4年目を迎える。過去3年で培った経験で基礎を固め、昨年ベスト100という踏み台を手に入れた彼らは、次のステージではさらに高く遠くへ飛躍した姿を見せてくれるに違いない。

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