先輩インタビュー

大好きなことを仕事にしたい!
ファイナリストの女子高生がオリジナルバッグで起業。

  • 第5回ファイナリスト

新潟清心女子高等学校
望月まいさん

取材日:2018年7月

2018年1月7日、東京都文京区本郷の東京大学伊藤謝恩ホールで開催された、第5回高校生ビジネスプラン・グランプリの最終審査会。ファイナリスト10組のうち、唯一個人で参加した女子高校生がいた。望月まいさん(新潟清心女子高等学校、当時2年生)。たった一人で舞台に立ち、堂々とプレゼンテーションする姿は、実に印象的だった。

プランのタイトルは「ワンタッチで便利を作る~ファスナーを使ったカスタマイズ商品づくり~」。車いすのシート部分などのパーツをファスナーでつなぎ、色や柄を自由にカスタマイズするアイデア。画一的な仕様の車いすでも、エコで、しかもおしゃれが楽しめるというものだ。子どもの頃からいつか自分のファッションブランドを立ち上げたいと考えていた望月さんが、ファスナーでパーツをつなげるアイデアを思いついたのは中学2年生のときだった。

「その頃、現役の女子高生が起業したことをニュースで知りました。それで『高校生になったら起業できるんだ』と頭に刷り込まれ、高校生になったらすぐに会社をつくろうと決めたんです」

1年間、週末レクチャーに通う

新潟清心女子高等学校は中高一貫校で、望月さんは中学時代から寮生活を送り、週末に埼玉の実家に帰る日々。高校に進学するや、さっそく会社をつくろうと、事業プランと手作りの試作品を持って、地元埼玉県の創業・ベンチャー支援センター埼玉を訪れた。

「何も知らなかったので、担当の方にいきなり『会社のつくり方を教えてください』と切り出したら、『え、ちょっと待って』と、すごく驚かれて(笑)。それをきっかけに、マーケティングから会計の基礎知識まで教えてもらえることになりました」。以来、埼玉に帰る週末ごとに、センターでビジネスを学ぶ生活が1年続いた。

ある日、センターの担当者が、日本公庫が主催する高校生ビジネスプラン・グランプリのことを話してくれた。望月さんは参考のためにと、東京・本郷の東京大学で開催された第4回大会の最終審査会に、父親とともに足を運ぶ。「みなさんのプレゼンテーションを目の当たりにして、『同じ高校生なのに、ここまでできるのか』と、衝撃を受けました。同時に、高校生ビジネスプラン・グランプリの最終審査会のステージに立つことが私の目標になりました」

ファスナー会社に手書きの手紙を

だが、それからの日々は決して順風満帆ではなかった。試作品を持ってバッグの製造工場に相談に行ったときのこと。「ファスナーは左右一対で作られたものでなければつながらない」と言われ、「これで終わったと思いました」と望月さん。でも、それでも諦められない。同じ形であれば左右がつながるファスナーがないか、全国のファスナー会社を調べた。「全国に6社あることが分かりましたが、メールや電話では取り合ってもらえず、自分の思いとプランの内容を書いた手書きの手紙を全社に送りました」

その中の1社から「できるかもしれない」と返事が届く。「希望がつながりました。夏休みを待って、1人で大阪を訪ねたのですが、あのときほど緊張したことはありません。試作品を社長さんに見ていただき、『このバッグに使うファスナーが欲しいんです』とお願いしたら、『何とかしましょう』と言ってくださったんです」。再び事業プランが動きだした。

たった1人でプランづくりに挑戦

だが、望月さんは、いきなり高校生ビジネスプラン・グランプリへの挑戦はハードルが高いと感じ、埼玉県が主催する「SAITAMA Smile Women ピッチ2017」に応募した。県内から国内外で活躍する女性起業家を輩出することを目的に毎年、開催されているコンテストだ。望月さんは「ファスナーでつくる便利な社会」という、福祉用品をファスナー付きパーツでおしゃれにカスタマイズする事業プランを提案。アイエフラッシュ賞という審査員賞を受賞した。

しかし、このときの審査員に「その事業はあなたじゃなくてもできるのでは?」「高校生なのに夢がない」などと厳しく指摘され、プランの見直しを迫られた。その努力が実り、第5回高校生ビジネスプラン・グランプリで優秀賞を獲得する。「1年前に客席から見た舞台に自分が立てて、本当にうれしかったです」と、望月さんは当時を振り返る。

起業資金は、幼少時から一度も 手をつけなかったお年玉貯金

現在、望月さんが立ち上げた株式会社Recnoでは、ファスナーでパーツの付け替えができるバッグを製作中だ。「高校生ビジネスプラン・グランプリで発表したプランを基に、自分が本当にやりたいことは何かを考えて、幼い頃からやりたかったバッグの事業でいこうと決めました」

望月さんが高校生で起業することに、それほどこだわったのはなぜか。

「社会人より高校生のほうが自由がきくし、親に養ってもらっている身の方が、いざというときにリスクが小さいということも考えました」。勢いだけではなく、現実を踏まえての決断だった。

創業の資金は、子どもの頃から一度も手をつけずに貯めてきたお年玉貯金50万円。両親も彼女の起業を応援している。

「父に相談したら、やったらいいじゃないかと言ってくれました。母も預けていたお年玉貯金をすぐに用意してくれました」。ただし、「そのお金がなくなったら会社は終わり」と言われているそうだ。

「人は好きなことをして生きていくことが一番大事だと思うんです。そのことを、事業を通して同じ高校生たちに伝えられたらうれしいです」と、望月さん。

これから先、好きじゃないことにもたくさん直面するだろう。つらいことも、きっとある。しかし、強い意志で夢に向かって踏み出した彼女は、嘆くことなく、前向きに突き進んでいくに違いない。

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