先輩インタビュー

アナザーストーリー・
人生のターニングポイント(2)

  • 第1回準グランプリ
  • 第2回優秀賞
  • 第3回ベスト100

京都府立桂高等学校
松岡 奈々 さん

合同会社WELLNESONE JAPAN CEO
松岡 奈々 さん

ベトナム中部最大の商業都市ダナン。屋台や露店の隣に三つ星ホテルや歴史的建造物、超高層ビルが立ち並び、大量のオートバイと車がクラクションを鳴らし合いながら走る。この町で起業家として活動する松岡奈々さんは「いずれはベトナム全域、アジア、世界へビジネスを広げ、農業と食の分野で栄養問題や貧困の解決に貢献したい」と目を輝かせる。

京都府立桂高等学校へ入学した頃は、起業なんて考えてもいなかった。京都の伝統野菜を研究していた1年生のとき、いくら栽培技術を研究しても売れなければ生産者は減り、絶滅してしまうと考え、ビジネスプラン・グランプリに参加すれば「売れる仕組みを学べるかも」と考えた。

第1回ビジネスプラン・グランプリに応募した「新たな京ブランドの確立と機能性食材の可能性について」と題したハスの抗酸化作用に着目したプランは、見事準グランプリに輝いた。

「ビジネスはお金儲けというイメージでしたが、コンテストに参加して、より良い社会をつくることだと気づきました」

翌年には「“TATAMI”を世界共通語へ!」と題し、食用イグサの抗菌作用を活用してカンボジアの食中毒や貧困問題を解決するプランで応募。2年連続でファイナリストに選出された。

最終審査会で株式会社ユーグレナの創業社長である出雲充氏が行った「農業やバイオテクノロジーは人々を救い世界を変える」という趣旨の特別講演に衝撃を受け、「農業や食のビジネスで世界を変えるために、私も起業したい」と決意を固めた。

失敗で終わらせない

食育カードゲーム「MoGuMoGu」

起業には大学進学が必要と考え、就職を望む両親の声を聞かず、受験勉強に邁進。しかし、結果はまさかの不合格。経営学士をオンラインで取得できるビジネス・ブレークスルー大学(東京都千代田区)へ進学する道を選ぶ。

オンラインでどこでも勉強できるなら自宅に閉じこもる必要はないと考え、反対する親を「学費も生活費も自分で稼ぐから」と説得し、単身上京。

松岡さんの人生に影響を与えたもう1人の人物が、ソフトバンクグループ代表取締役会長兼社長の孫正義氏だ。松岡さんは講演で孫氏が語った「全てのものに愛を持って事業を行う」という理念に感動し、孫正義育英財団(東京都港区)に応募する。

起業に向けて準備してきた事業計画で応募すると、1次と2次の選考を順調にクリアし、孫氏をはじめそうそうたる選考委員の前でプレゼンを行う最終選考へと進む。心臓が飛び出すほどの緊張の中、自分を信じて堂々とプレゼンに臨み、準財団生として迎えられた。

後日、財団の選考委員だった、みずほフィナンシャルグループ会長の佐藤康博氏(当時社長)から「ぜひ話を聞きたい」と連絡を受け、大手町の本社で取締役らを前にプレゼンする機会を得る。このとき佐藤会長から「何か困ったことがあったら、いつでも連絡してきなさい」との言葉をもらう。

多くの人々に背中を押され、刺激を受け、挫折を乗り越えながら、2017年5月、20歳の誕生日に合同会社WELLNESONE JAPANウェルネゾンジャパンを立ち上げた。

コンテスト参加が原点に

松岡さんが支援に携わっている幼稚園

起業の地としてベトナムを選んだのは、経済が急成長して活気があふれるほか、事業テーマとする農業が主産業で、国民の平均年齢が約30歳と若いからだ。都市部で子供の肥満や栄養過多が社会問題化していることにも着目していた。

「ベトナムの課題解決には、まず子供と親に栄養バランスの知識を身に付けさせることが必要と考え、日本式三色点数法を遊びながら学べる食育カードゲーム『MoGuMoGu』を開発しました」

起業に向け、松岡さんは2018年4月、生活の拠点をダナンに移した。オフィスは、セルフウイング(本社:東京都新宿区)の社長でビジネスプラン・グランプリの審査員も務めたことがある平井由紀子氏の協力を得て、同社がダナン市内に構える事務所の一角に構えた。

今、松岡さんは、孫正義育英財団の支援を受けて自身の事業を推進しつつ、セルフウイングベトナムの教育コンサルティング事業に携わっている。同社が現地で支援する幼稚園で日本の言葉や文化、食育を教えながら、農園開発の責任者として、忙しい日々を過ごしている。

2018年11月、念願の「MoGuMoGu」ベトナム語版をリリース。さらに、教育事業に携わる中で保育士と保護者のコミュニケーションに課題があると気づき、その解決策となるWebサービスの開発にも取り組み始めた。

「高校生のときビジネスプラン・グランプリに参加していなければ、今、私はベトナムにいません。あのコンテストが、私の原点です」

起業家として大きな夢を掲げる松岡さんには、もう一つ個人的な夢がある。「両親の反対を押し切ってベトナムに来てしまったので、いつか両親を呼び、私の仕事を見てもらいたい」。その日を夢見て、松岡さんは今日もベトナムの地で事業に邁進している。

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