事業承継マッチング支援

人気店の味を後世に残したい!
「絶メシリスト」にも掲載されているカレー店を救った事業承継

群馬県高崎市に店を構えて40年の老舗「創作カレーハウス印度屋」。
店主の体調不良をきっかけに後継者を探し始めて6年、ついに「株式会社エンジョイ」の若き代表が店の味を受け継ぐことが決まった。

Story’s Point

  • 「創作カレーハウス印度屋」店主の荒木氏は、6年前から後継者探しを検討。「絶メシ」リスト掲載の人気店であったため後継者の申し出は数多くあったが、店を任せられる人物がなかなか現れなかった。
  • 「株式会社エンジョイ」の若き代表の周東氏。3年前に高崎駅にてダーツバーを開業し、成功を収める。本格的に飲食業への参入を検討する中、リスクを抑えて成長できる可能性が見込める「事業承継」に興味を持った。
  • 店を残したいという荒木氏の想いと、本格的な飲食業に挑戦したいという周東氏の想いが重なり、事業承継へ。それぞれが新しい未来に挑んでいる。
左側(譲受側):周東氏 右側(譲渡側):荒木氏

Company Information

創作カレーハウス印度屋

創作カレーハウス印度屋
所在地 群馬県高崎市 創業 昭和59年 
業種 飲食業

譲渡側:荒木 隆平氏(当時72歳)
「創作カレーハウス印度屋」初代店主。
東京、高崎の洋食店で料理・経営の経験を積み、昭和59年に故郷・高崎にて「創作カレーハウス印度屋」を開業。以来40年、メディア掲載実績多数の地元でも愛される人気店となる。体調不良をきっかけに店の味を残すため、後継者探しを始める。

譲受側:株式会社エンジョイ(代表:周東氏)
群馬県伊勢崎市出身。高崎駅前でダーツバーを運営する株式会社エンジョイを経営。
事業拡大を機にかねてから興味のあった飲食業に参入したいと考え、事業承継にて「創作カレーハウス印度屋」の2代目店主となる。

ーー事業内容を含め、自己紹介をお願いします。

譲渡側:荒木氏

料理人になるために、調理の専門学校を卒業したあと、2年ほどドイツの洋食屋で修業しました。帰国後7年間東京の洋食屋で経験を積み、27歳の頃に故郷である高崎に戻って、はじめのうちは賃貸の店舗で洋食屋を営んでいました。その後、昭和59年に開店したのがこの「創作カレーハウス印度屋」です。
当時高崎ではカレーの専門店というのは珍しく、特に人気メニューの焼きチーズカレーはたくさんの皆さんにご好評いただきました。
創業当時からどうやってお客様を集めようか、というところは常に考えていて、大盛カレーを食べ切ったら賞金を進呈する、という企画やお店オリジナルのステッカーを作ったりもしました。
そういったところも気に入っていただけて、地元の大学生の皆さんにサークル単位で利用していただくことも多かったです。

譲渡側:荒木氏

譲受側:周東氏

高崎駅前でダーツバーを運営している株式会社エンジョイで代表を務めています。
大学を中退したあと業務委託で営業代行の仕事をしていたのですが、25歳くらいの時にある程度資金も貯まって、せっかくなら何かおもしろい仕事をしたいな、と思ってさまざまな業種を検討していました。
その時も飲食業をやってみたいという想いがあったのですが、もともと飲食業の知識が豊富にあったわけではなかったので本格的な飲食業は難しいなと感じ、料理ができなくても運営可能な飲食系の仕事は何かと考えた結果、たどり着いたのがダーツバーでした。

譲受側:周東氏

ーー事業承継に興味を持ったきっかけを教えてください。

譲渡側:荒木氏

事業承継を考え始めたのは、今から6年前です。突然体調を崩してしまいました。
それまでは朝から晩まで厨房に立って、定休日も買出しや仕込みで走り回っていてもまったく問題ないくらい健康でしたが、そういった働き方を続けられなくなりました。
いつか東京に進出したいという夢もありましたし、まだまだ現役でいけると思っていたのですが、その時に初めて、自分がいなくなったらこの店も40年間守り続けてきたこの店の味もお客様もすべてなくなってしまうのか、と思って寂しくなりました。
高崎で40年、メニューから全てをオリジナルで試行錯誤して続けてきた店ですから、この店をこの先も残していきたいと思い、後継者を探すことにしました。

譲受側:周東氏

ダーツバーを開業するにあたって金融機関の融資が決まったタイミングが、ちょうど新型コロナウイルスが流行する直前でした。そんな中でダーツバーという一種の飲食業の開業に踏み切るのは、かなり勇気がいりました。ただ、いざやってみると思っていたほどの打撃は受けずに、順調に売上を伸ばしていくことができました。
その中で新たに別事業を展開したいと思ったのは、将来を見据えてのことでした。
ダーツバーは夜から朝まで営業していて自分も店頭に立っていたのですが、いずれ体力的にきつくなってくるだろうなと考えていました。ダーツバーはお酒のイメージが強いと思うのですが、私はお酒があまり強くないんです(笑)。本格的に体調を崩す前にということで、別の事業を探し始めたんです。
飲食業で探したいなという想いはあったので、当初はダーツバーで蓄積したお酒関連のノウハウを活かせる居酒屋や、フランチャイズでの経営を検討していました。ただ、いずれも調理面の技術的な課題や設備投資を含めて検討すると、私に実現は難しいなと思ったんです。
そんな中で、「事業承継」という選択肢があることを知り、M&Aのマッチングサイトに登録したのが「印度屋」を第三者承継する第一歩になりました。

ーー(荒木氏へ)事業承継を検討し始めてから今回の成約に至るまで、6年の歳月が流れています。周東様以外にも後継者に立候補する人はいましたか?

譲渡側:荒木氏

高崎市の「絶メシリスト」にも登録して後継者を探していましたので、この6年の間に県内、県外問わず多くの申し出をいただきました。
ただ具体的な計画を持って、申し出てくださる人がいなかったというのが現実です。中には1度も食べに来たことはないけれど、家族で移住したいから譲ってくださいという人や、運転資金の目途は立たないけど譲ってほしいという人もいました。
私が事業承継する目的は、あくまでこの店を後世まで残してほしいから。ありがたいことにお店には常連さんもいらっしゃいます。事業承継なのでまったくゼロからのスタートということではありませんが、店を続けていくためには運転資金も必要だし、少しでもお客様を増やすためには集客のアイデアもなければいけません。後継者探しを始めたきっかけは体調を崩したことでしたが、回復後はまだ充分働く元気もあったので、そういった視点で吟味しているうちに年月が経ってしまったというところはありますね。
あとは、お店の全盛期はアルバイトを11人ほど雇っていたこともありました。その中から後継者を探すというパターンもよくあると思うのですが、当時はまだ自分もバリバリ働けていたので後継者を選ぶという発想はありませんでした。
後継者探しを模索している中で高崎商工会議所の紹介で日本公庫の事業承継マッチング支援に登録しましたが、日本公庫の担当者の方にはさまざまなアドバイスをもらい、その中で後継者探しの幅を広げるために提案されたM&AのマッチングサイトのBATONZ(バトンズ)に登録したことで、今回の出会いがありました。

ーー(周東氏へ)飲食業に絞って新規事業を探していたということですが、印度屋の他にも検討されていたお店はあったのでしょうか?

譲受側:周東氏

複数のM&Aのマッチングサイトでいろいろと探していたのですが、本格的に検討するに至ったのは印度屋だけでした。
元々自分が店頭に立つことを視野に入れていたので、立地はダーツバーに近い高崎近辺で良いところがないか探していたんです。
正直なところBATONZ(バトンズ)で見つけるまで印度屋のことは知らなかったのですが、実際に足を運んで料理を食べてみたり、地元での評判をリサーチしたりしている中で、ここを受け継ぐことができたら面白いだろうなと思いました。立地も良くて、地元からも愛されていて、お店の設備もそのまま使うことができます。さらに何と言っても荒木さんに料理を教えてもらえることは魅力的でした。今振り返ってみると、日本公庫から事業承継のための資金をスムーズに借りることができたのもありがたかったですね。

ーー(荒木氏へ)周東様の第一印象や、最終的に後継者として印度屋を譲ることにした決め手を教えてください。

譲渡側:荒木氏

まず、若くて非常に爽やかな好青年だな、と好感を持ちました。
これまでに申し出てくださった方々と周東さんが一番違うと感じた点は、経営者としての視点をきちんと持っているところでした。既にダーツバーの運営で従業員を抱えていたので、人の上に立つということもできていましたし、資金繰りや今後の展望についてもしっかりと考えてくれる方だなと。なにより、コロナ禍で始めたダーツバーの事業で成功を収めているというのはすごいことだと思います。逆境の中でも成功する方法をきちんと考えて、実現できているということですから。私自身も20代後半で店の経営を始めたので、親近感を覚えましたね。
私の場合、27歳くらいの頃は儲かったお金をほとんどお酒と趣味の音楽に費やしてしまっていましたが(笑)、周東さんは遊び歩いたりせずに、将来のことをちゃんと考えている堅実派です。
料理に関しては未経験ではありましたが、そこは私が教えることができる部分なので問題なく受け入れました。とにかく店を末永く存続させて、さらには規模を拡大してくれそうなバイタリティを感じて託すことを決めました。

左側(譲受側):周東氏 右側(譲渡側):荒木氏

ーー(荒木氏へ)承継する際に提示していた条件にはどのようなものがありましたか?

譲渡側:荒木氏

この店自体と、この店の味を残すことですね。40年やってきて看板メニューのチーズカレーの味を求めていらっしゃるお客様も大勢いるので、そこはきちんと修業して残すようにしてほしいと思っていました。

創作カレーハウス印度屋

ーー実際に承継するにあたり、どのようなステップを踏んだのでしょうか。また、その中で大変だったことなどあれば教えてください。

譲受側:周東氏

BATONZ(バトンズ)を通してマッチングをしたのが令和4年11月で、完全に引き継いだのは令和5年5月1日です。お互いの条件などを話し合う場を何度も設けましたが、譲っていただくことは早い段階で決まり、あとは細かいオペレーションなどのすり合わせを行いました。
店の味を継ぐということで、当初の予定では修業期間として令和5年の3月から7月くらいまでを想定しており、その後に独り立ちをする計画だったんです。
それが5月に早まったのは、さまざまなトラブルがありまして…

譲渡側:荒木氏

4月中旬くらいに、私に病気が見つかってしまったんです。手術もしなければならなくなり、当初設けていた修業期間を短くして5月の初旬に終えることにしました。
書類上では3月1日に引渡しをしましたが、ゴールデンウィーク中は客足が増えるので連休明けまではサポートとしてお店に立ちました。

譲受側:周東氏

荒木さんの体調不良に加えてもう1つ想定外だったのが、一緒に修業する予定だったスタッフが期間中に足の骨を折るケガをしてしまって。
当初はそのスタッフと私の2人で厨房を回していこうという話をしていたのですが、急に1人ですべてを覚えなければならなくなり途方に暮れました。当時はまだ私はダーツバーのほうにも顔を出していたので、3月から5月にかけては体力的に大変な時期でしたね。
料理も未経験な上に、覚えるメニューも多くて。最初の頃は、ひたすらオムレツをきれいに作る練習をしていました(笑)

譲渡側:荒木氏

さまざまなトラブルが重なって必死だったということもあると思いますが、本当に熱心に練習してくれました。やっぱり若くてやる気のある方に譲ることができて良かったと実感しましたね。
練習の甲斐あって、常連さんからも味が落ちたとか、変わったとか言われることがなかったのでとても安心しました。

ーーあらためて、第三者承継のメリットはどんなところだと思いますか?

譲渡側:荒木氏

昨今の飲食業界では後継者不足の問題に加えてコロナウイルスの流行で、長年営んできた店を廃業するケースがとても多いと思います。そのような厳しい状況の中でも、店や店の味を後世に残す手段になり得るということが第三者承継のメリットだなと感じました。私の場合はとにかく店を残す、というところが最大の目的だったので、良い出会いに恵まれて良かったです。
新しい人の手に渡ることで自分の代では実現できなかったことが叶ったり、自分では思いつかなかった方向に展開したりしていく可能性があるのもおもしろいですね。

譲受側:周東氏

私のように、自分で飲食業をやりたいという気持ちはあるけれど過去の経験やノウハウはない、という人にとってはメリットしかないと思います。
すでにお店や設備があって、お客様もついているという状態なのでリスクは抑えることができるのに、可能性は無限にあるというか。今回のケースのように長年の歴史あるお店を引き継ぐという場合は、利己的になりすぎず、これまでやってこられたことに敬意を払って残すべきところは残す、変えられる部分は変えていくことで、これまで以上に店を発展させていくこともできるんじゃないかなと思っています。

右側(譲渡側):荒木氏 左側(譲受側):周東氏

ーー今後の展望をお聞かせください。

譲渡側:荒木氏

長年の趣味が高じて、8年くらい前にカレーハウスがあるビルの2階部分に「OLDIES CLUB」というライブハウスを作ったんです。これまでは店の営業を優先していたこととコロナ禍で思うように稼働できなかった悔しさもあるので、これからはこのライブハウスの運営により力を入れていきたいです。東京からバンドを呼んだり、音楽好きの仲間を集めて楽しい夜を過ごしたり、と想像するだけでワクワクします(笑)

譲受側:周東氏

自社のスタッフも抱えているので、売上はこれまでよりも高いところを目指していかなければならないと思います。せっかく受け継いだ店をすぐに潰してしまうなんてことになったら、意味がない。
設備面も効率を重視してリニューアルして、店を回す基盤をしっかりと固めてから、集客の施策などもいろいろとアイデアを出して店を拡大していきたいですね。

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