事業承継マッチング支援

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「継ぐスタ」について

「継ぐスタ」、 それは新たな創業のカタチ。

経営にお悩みの方

「継ぐスタ」とは、「事業を受け継いでスタートする創業形態」を指しています(日本公庫による呼称です。)。このページをご覧になっている方の中には、事業を立ち上げることや経営者になることに関心をお持ちの方が多いかと思われますが、「継ぐスタ」はそれを実現する手段の一つです。

近年、中小企業を受け継いで経営者になることを勧める書籍やそれを取り上げたテレビ番組等を目にする機会が増えていますので、このような創業形態があることを知っている方も少なくないでしょう。事実、日本公庫が創業を希望している方に対して実施したアンケートでは、「継ぐスタ」に関心があるという回答が4割近くに上りました。

創業希望者の「継ぐスタ」への関心度合い
関心あり 関心なし
39% 61%

第8回女性・若者向け相談ウィークアンケート結果より

この「継ぐスタ」が、新たな創業形態として注目を集めている理由は、従来の「ゼロからの創業」にはない二つのメリットがあるからです。

一つ目は、「創業時のコスト軽減」です。
飲食店の創業を例に考えてみましょう。お店をオープンするためには、出店場所を借りて、内装工事を行い、厨房機器を揃えるといったことが必要です。しかし、「継ぐスタ」の場合は、既存の店舗や機械設備等を受け継ぐことができますので、「ゼロからの創業」と比較して、新たな設備投資を抑え、資金負担を減らせる可能性があるのです。

創業時や創業直後には、準備段階では想定していなかった支出が発生することも少なくありませんので、創業時のコストを抑え、手元資金に余裕を持たせることは重要と言えます。

ゼロからの創業よりコスト軽減できる

二つ目は、「経営資源の承継」です。
同じように、飲食店を例にすると、オープンしたお店を成長させていくためには、強みとなる経営資源が必要になります。例えば、「熟練の技術でつくりだす味」、「お客さまからの信頼」、「食材仕入等の取引基盤」、「地域での知名度」など。

当然ですが、こうした経営資源の創出・確保は容易ではありません。
しかし、「継ぐスタ」の場合は、本来、ゼロからつくりあげていく経営資源を受け継ぐことができますので、「ゼロからの創業」と比較して、創業後の経営を円滑に進められる可能性があるのです。また、創業に向けて温めてきたアイディアを実現するうえで、受け継いだ経営資源を活かすことができるのは大きなアドバンテージであり、実現できることの幅が広がるとも考えられます。

経営資源を受け継げる 経営資源を受け継げる

一方で、「継ぐスタ」ならではの難しさもあります。

まず、既に存在する事業の中から、受け継ぐ対象を探すことになるため、自分のやりたいことが具体的であるほど、受け継ぎたいと思う事業が見つかりにくくなります。
また、優れた経営資源を持つ事業や高収益の事業等は受け継ぎたいと思う方がたくさんいますので、受け継ぐために必要な条件が厳しくなります。

従来の「ゼロから創業」と新たな選択肢である「継ぐスタ」。自分のやりたいことに合う創業形態はどちらかを十分検討したうえで、創業しましょう。

次に挙げるような考えの方は
「継ぐスタ」が向いているかも!?
継ぐスタ向きの考え方とは?
  • 自分の知識や経験を活かしたいが、「ゼロからの創業」はうまくいくか不安!
  • 「ゼロからの創業」では高額の設備投資が必要になってしまう。事業を受け継ぎ、初期投資を抑えたい!
  • 創業当初でも赤字は出したくない。なるべく早く事業を軌道に乗せたい!
  • ゼロから自分のアイディアを実現するのは難しいので、他社の経営資源を活用したい!
  • 自分がゼロから立ち上げることよりも、企業を経営したいという想いが強い!

それでは次に、どのような方法で「継ぐスタ」を行うのかを、大まかなステップごとに見ていきましょう。

1受け継ぐ事業を探す!

当たり前のことですが、受け継ぎたいと思う事業が見つからなければ、「継ぐスタ」はできません。
これまでの経験等を踏まえ、自分がやりたいことや実現したいことを十分検討したうえで、受け継ぎたいと思う事業を探しましょう。ただし、見も知らぬ企業を訪ねて回るというのは、現実的ではありません。
日本公庫の「事業承継マッチング支援」のようなマッチングサービスを利用するなど、事業を譲り渡したい方に効率的にアプローチできる方法を検討してみてください。

icon取組みのヒント 
未経験分野へのチャレンジも可能

受け継ぐ事業に関する経験や知識は重要ですが、未経験の分野で「継ぐスタ」に取り組もうとする方も決して珍しくはありません。
この場合、一定期間(数か月から数年程度)、事業を譲り渡す側の経営者の下で修業したり、事業を譲り受けた後、前の経営者に顧問になってもらって助言を受けたりすることで、知識・経験の不足を補うことが可能です。

2事業を譲り渡す側と合意する!

受け継ぎたいと思う事業を見つけられたなら、事業の譲渡・譲受について、事業を譲り渡す側との合意を目指していきます。
まずは、自分にはどのような経験や知識、技術があるのか。経営者として何を成し遂げたいのか。自分がどういった人間なのかをお相手によく理解してもらい、「あなたに事業を譲り渡したい」と思ってもらうことが必要です。

また、事業を譲り受ける側は、譲渡の対価をお相手に支払い、譲渡にあたって設定されるさまざまな条件(例えば、従業員の雇用を維持してもらいたいなど)を満たさなければなりません。
そこで、事業を譲り渡す側と譲り受ける側の双方が十分なコミュニケーションを取って交渉を行い、双方が納得できる対価の金額や条件の詳細を詰めていくことが必要になります。

icon取組みのヒント 専門家の活用が「継ぐスタ」実現の近道

事業を譲り受けることはいわゆるM&Aのプロセスを実行することと同様です。
お相手との交渉や デューデリジェンス補足 に基づく譲渡の対価の検討、契約手続等、専門知識を要するプロセスを独力でこなしていくのは、かなり難しいと言わざるを得ません。
そこで、「継ぐスタ」に取り組むうえでは、事業を譲り渡す側とフェアな交渉を行い、妥当な価格・条件で合意し、適正な契約手続きを行うために、税理士や弁護士等の専門家から支援を受けることが一般的です。

日本公庫は、「事業承継マッチング支援」をご利用いただく方からのご希望に基づき、「事業承継・引継ぎ支援センター補足 」等を通じて、こうした専門家をご紹介することが可能です。
なお、こうしたプロセスを理解するための知識を、自身で習得することが望ましいのは言うまでもありませんので、専門書やセミナー等も積極的に活用してください。

3事業を譲り受ける契約をする!

事業の譲渡・譲受に関して合意した後は、お相手と譲渡契約を締結し、契約に定められた事項(対価の支払等)を履行することにより、事業の譲渡が実行されます。
なお、契約主体や譲渡形態は、「継ぐスタ」の方法によって、主に次の3つのパターンが考えられます。

  • 個人企業(契約主体)として独立し、「事業譲渡補足 」により事業を譲り受ける。
  • 自分が代表となる法人企業(契約主体)を設立し、「事業譲渡」により事業を譲り受ける。
  • 一個人である自分(契約主体)が、「株式譲渡補足 」により事業を譲り渡す側の新たな代表に就任する。
icon取組みのヒント M&A資金は金融機関からの調達を検討

お相手に支払う対価(M&A資金)は、事業を譲り渡す側の財務状況や事業実態等により異なりますが、自己資金が不足する場合は、外部からの調達が必要になります。調達方法は、親族からの援助や友人、知人、金融機関等からの借入のほか、対価を分割払いとする方法等もありますが、高額になる場合は、金融機関からの借入が一般的です。
日本公庫では、「継ぐスタ」向けの融資制度を設けていますで、お気軽にご相談ください。融資の詳しい情報については、「スモールM&A向け融資の活用法」でご紹介しています。また、日本公庫の融資により「継ぐスタ」を実現した事例にご関心がある場合は、第三者承継事例集「ギフト」vol.3 (PDF7.6MB)iconをご覧ください。

4譲り受けた事業を成長させる!

事業を譲り受けたら「継ぐスタ」は完了、というわけではありません。
むしろ、そこからがスタートであり、受け継いだ事業を成長させることが新たな経営者の方のミッションです。そのためには、自らの創意工夫により新分野の開拓を行うなどの「攻める」取組みと、従業員や取引先との信頼関係を維持したり、先代が積み上げた経営ノウハウを伝授してもらったりするなど、受け継いだ事業の強み(経営資源)を「守る」取組みの両方が重要です。

icon取組みのヒント 経営の相談相手は先代と支援機関と仲間たち

「継ぐスタ」に取り組まれる方の多くは、経営経験をお持ちではないでしょう。そのため、自身が新たな経営者になったとき、迷い、悩む場面に直面することも少なくないと思います。そんなとき、助言をしてくれる方が必要になるでしょう。
先代経営者の方、税理士や商工会議所・商工会、金融機関等の支援機関、同じ経営者の立場にある仲間たち。自身の周りにいる方々を頼ってみてください。きっと、自身の決断を後押しするヒントが得られるはずです。

最後に、今なぜ「継ぐスタ」なのかをお話したいと思います。

現在、日本では、中小企業の経営を次代につなぐ「事業承継」が大きな社会的課題になっていることをご存じでしょうか。後継者不在の企業は100万先を超えるとも言われ、数多くの素晴らしい事業が失われてしまうことが危惧されているのです。

ですがこの状況は、「継ぐスタ」を目指す方たちにとって、事業を受け継ぐ好機であるとも言えます。
ですから今、ぜひ、この機会を掴み、「継ぐスタ」で創業の夢を実現することを考えてみてください。