創業コラム

創業へのステップ

第6回 資金調達の準備をしよう

融資

補助金・助成金

クラウドファンディング

前回のコラムでは、経営の3大要素のうち「ヒト」と「モノ」についてご説明しました。今回は、もう一つの重要な要素である「カネ」についてご紹介いたします。具体的には、どのように事業資金を集めるのかという、資金調達手段や資金調達を行うための準備についてご説明していきます。

1.主な資金調達の方法

自己資金

「自己資金」とは、自分の手持ち資金のうち、事業にかけられるお金のことをいいます。給料から毎月コツコツと貯めてきた預貯金をはじめ、退職金、株式やFX、仮想通貨等の売却金、生命保険の解約返戻金などから捻出します。車などの資産を売却して自己資金とする人もいます。家族や親戚から援助(贈与)を受けた場合も自己資金とみなされる場合があります。また、 自己資金は返済の必要がない資金ですので、一般に自己資金は多いほうが金融機関から高い評価を得られやすいと言われています。創業を考えたら、まずはしっかりと自己資金を貯めるようにしましょう。

融資

自分以外の第三者からお金を借りることです。借りたお金ですから将来的には返さなくてはいけません。借入先は、家族や親戚、友人、先輩などの個人的なつながりのある人、日本政策金融公庫や民間の銀行や信用金庫といった金融機関、信販会社などのノンバンクなどがあります。創業者がお金を借りる場合には、日本政策金融公庫の創業融資や、自治体と民間金融機関が連携して提供する制度融資を利用するのが一般的です。

出資

自分以外の第三者から会社に出資してもらうことです。主な出資者は、家族や親戚などの個人的なつながりのある人や、スタートアップ企業やベンチャー企業に出資を行うエンジェル投資家、投資家から資金を募ってファンドを組成し、ファンドを運用するベンチャーキャピタルなどが挙げられます。出資の場合、対価として出資者へ会社の株式を渡しますので、会社や代表者が返済をする必要はありませんが、出資者が株主となるため、安定した経営を行うためには、誰に出資をしてもらうのか検討しておくことが重要です。

2.その他の資金調達手段

融資や出資以外に創業者が資金調達する手段として、補助金や助成金、クラウドファンディングなどがあります。

補助金・助成金

補助金や助成金は、国や自治体などが政策に沿った事業に取組む事業者を支援することで事業活動を促進したり、雇用を促進したりするために実施しているものです。主に、経済産業省が所管しているものを補助金、厚生労働省が所管しているものを助成金といいます。補助金や助成金の大きなメリットは、原則として返済不要という点です。ただし、後払いで交付されることも多いため、計画している事業にかかる資金を先に手出ししなければいけなかったり、対象となる経費が限られたりなど注意点もありますので、補助金や助成金を利用する際は公募要領をよく確認しましょう。

  • 補助金と助成金の例
  • 代表的な補助金 (今までの一例)
  • ものづくり・商業・サービス生産性促進補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

  • 代表的な助成金(今までの一例)
  • キャリアアップ助成金
  • 業務改善助成金
クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、インターネット上のWebサイトを通じて大勢の人からお金を集める資金調達手法です。クラウドファンディング(Crowd funding)のクラウドは雲(cloud)ではなく、群衆(crowd)です。つまり、クラウドファンディングとは、群衆からお金を集める(funding)仕組みということです。

■クラウドファンディングの種類

クラウドファンディングでは、支援してくれた人へリターン(見返り)を渡すのが基本的な仕組みです。このリターンの内容により、①購入型、②寄付型、③金融型に分けられます。

①購入型は、リターンに商品やサービスの提供を設定したものです。商品のPRやテストマーケティング、宣伝広報といった使い方ができます。現在は購入型がクラウドファンディングの主流です。

②寄付型は、文字通り見返りを求めずに純粋に寄付を行うものです。リターンはお礼のメールやWebサイトでの経過報告などです。

③金融型には融資型と投資型があります。融資型は集めたお金を融資先へ貸し出し、投資型は集めたお金を投資先へ出資します。リターンは配当金や株式の取得になります。事業計画に合わせて、クラウドファンディングをうまく使いこなせると良いでしょう。

3.資金調達の準備:事業計画書の作成

資金調達の過程で融資を受けたり出資を募ったりする場合には、一般的に事業計画書を作成する必要があります。事業計画書を書くことで、準備不足の点や改善すべき点が見えてきたり、良いアイデアが浮かんできたりもします。第三者から資金調達を行わない場合も、頭の整理として事業計画書を作成することをお薦めいたします。
事業計画書に決められたフォーマットはありませんが、概ね次のような事項を書きます。ただし、金融機関や利用する融資制度によっては所定のフォーマットがありますので、留意してください。

  • 事業計画書に記載する主な項目
  • 創業者のこれまでの経歴
  • 創業の動機
  • 創業者の強み
  • 市場環境・競合分析
  • 顧客ニーズ
  • 事業の内容
  • マーケティング戦略
  • 事業スケジュール
  • 参加メンバーのプロフィール
  • 要員計画
  • 資金計画(必要な資金と調達方法)
  • 売上・収支計画

事業計画書作成において一番重要なポイントは、金融機関などの支援者に対し、事業が上手く行くかという点を客観的で過不足なく、説得力があると伝えられるかにあります。例えば、

・顧客ニーズは本当にあるのか、計画している事業で顧客ニーズを満たせるのか

・その事業を実現するためにあなたの経験や強みが活かせるか、仮にあなたに足りない点があるとするならば、それを補完できるメンバーはいるか(またはどのような経歴か)

・売上計画を実現するためにはどのタイミングでどのようなプロモーションを行うのか、そのための資金はどのように調達するのか

などについて、関連付けて説明すると説得力がある事業計画書となります。
ただし、事業計画書は支援者の立場によって評価のポイントが異なる点は留意が必要です。例えば銀行などの金融機関であれば事業でしっかりと利益を出し返済ができるかという観点で見てきますし、ベンチャーキャピタルであれば、どれだけ成長できるか、株式上場ができるかという観点で見てきます。事業計画書の作成にあたっては、どのような資金調達手段をとるか、という点も意識して考えていきましょう。

今回は、経営の3大要素のうち「カネ」を中心にご説明してきました。「カネ」は企業の血流でありとても重要な経営資源です。資金調達にはさまざまな手段がありますので、それぞれのポイントを理解しておきましょう。また、繰り返しになりますが、事業計画書は資金調達の準備に必要なのはもちろんですが、他者から資金調達を行わないとしても事業の準備状況や過不足がある点を把握するのに役立ちます。創業しようと決意したら、事業計画書を書くようにしましょう。

さて、これまで6回にわたって、創業を考える上でのポイントについてご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。本コラムが、皆さまの創業に向けたステップを進める一助となれば幸いです。

掲載日 令和6年3月26日

プロフィール

三浦 高 三浦 高

V-Spirits 総合研究所株式会社 代表取締役・中小企業診断士
https://v-spirits.com/

資金調達支援(融資、補助金)、事業計画書策定支援、起業支援、ハンズオン支援を中心に活動。全国各地で資金調達や起業、経営に関するセミナーや研修の講師を多数務めている。

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