創業コラム

創業へのステップ

第5回 「ヒト」や「モノ」への投資について考えよう

雇用形態

オフィスの形態

設備の調達手段

前回のコラムでは、売上予測と損益分岐点(損益分岐点売上高)についてご説明しました。今回は、事業を行う上で大事な3要素である「ヒト」「モノ」「カネ」のうち、「ヒト」と「モノ」についてご紹介いたします。

「ヒト」とは文字通り人材です。当初は自分ひとりで創業するにしても、事業拡大に合わせて従業員を雇う必要が出てくる場合もありますし、業種によってはスタート時点から複数人の従業員が必要な場合もあるでしょう。人件費をかける以上、貴重な人材にどのように働いてもらうか、考えていく必要があります。
一方、「モノ」はオフィスや店舗、機械装置や什器備品などのことです。業種業態によってはオフィスや店舗の立地が重要となるほか、機械などの設備が必要不可欠な場合もあります。これらの選び方や調達方法についてもご説明していきます。

1.「ヒト」への投資

1-1雇用形態

従業員を雇用するということは、いわば一緒に仕事をする仲間になってもらうということになるわけですので、相手の要望も聞きながら最も良い雇用形態を選択する必要があります。雇用形態には主に①正社員、②パート・アルバイト、③業務委託の3パターンがあります。

①正社員

常勤として働いてくれる従業員です。週休2日の会社であれば週5日で40時間働いてくれます。長く安定して働いてくれるので、責任ある仕事を任せることができるでしょう。正社員を雇う場合は労災保険や雇用保険といった保険への加入が義務となりますので、事務手続きや費用面での負担は大きくなりますが、雇われた従業員としては、長く安定して働けるということで安心感を得ることができるでしょう。この人なら、という人材に出会えたら、正社員として働いてもらうのがベストでしょう。

②パート・アルバイト

比較的短時間で働いてもらう形態の従業員です。飲食店や小売店だけでなく、経理などの事務職としても多く採用されています。飲食店であれば、仕込みやランチタイムの繁忙時だけ働いてもらうといったことができます。また、主婦や学生などの子育てや学業の合間だけ働きたいというニーズを取り込むこともできます。短時間で働いてもらう場合にはこの形態を採用しましょう。

③業務委託

仕事を委託する会社と委託を受ける方の双方で業務委託契約を結ぶ形態です。正社員やパート・アルバイトと違い、自社とは雇用関係がありませんので厳密にいうと雇用ではありませんが、一緒に働くという意味で便宜上雇用形態に含めております。業務委託はITやデザイン関連業種で多く採用されています。一般に、月の稼働時間や月額委託料、委託内容、条件などを決めて稼働してもらい、請求書をもとに業務委託料を支払います。いわゆるフリーランスに委託する場合はこの形態になります。一般にフリーランスの方は専門性を有している一方、自由な働き方を望む傾向にあることから、そのような方には業務委託でお願いするのが良いでしょう。

1-2人材採用のタイミング

人材の採用はどのようなタイミングで実施するのがよいのでしょうか。業種・業態や規模によって変わってきますが、例えば席数が多い飲食店であれば、最初から複数の従業員が必要でしょう。ここで考えていただきたいのは、どのタイミングで、どのような人材が必要となるのかを明確にしておくことです。最初は自分ひとりでスタートしたとしても、仕事量の増加により対応が追い付かず、顧客に迷惑がかかるようなことになってはいけません。あらかじめ、自社にとって必要な人材と必要となるタイミングを意識しておき、余裕をもって社員を採用すると良いでしょう。

1-3多様な働き方

従来は、従業員がオフィスに出社し、皆で一緒に働くのが一般的でしたが、コロナ禍によるオンラインサービスの充実により、テレワークで働くことも一般的になりました。飲食店や小売店といった接客業や、工場など生産が伴う業種でのテレワークは難しいですが、事務や企画、デザイン、エンジニア等の職種であれば十分テレワークが可能です。テレワークを取り入れることで従業員は自分の好きなところで働くことができ、多様なライフスタイルを実現できるというメリットがあり、会社としても大きなオフィスを構えなくて済むことで、賃料などの経費を削減できるといったメリットがあります。
一方、テレワークのデメリットとしては従業員同士の人間関係や帰属意識の希薄化などが考えられますが、テレワークと出社を組み合わせるハイブリッド勤務とする、定期的に懇親会を開くなどしてこれらのデメリットを解消できる場合もあります。テレワークが可能な業種の場合は、働き方に取り入れても良いかもしれませんね。

2.「モノ」への投資

2-1オフィス(店舗)の形態と立地

オフィスの形態と立地は、経営戦略の根幹にかかわる重要な事項です。業種業態や経営方針を踏まえ、考えていく必要があります。

オフィス(店舗)の形態
①賃貸オフィス・店舗

テナントビルや商業施設などの一角を借り、オフィスや店舗を開設する形態です。賃借するにあたって敷金や保証金、家賃が発生するため、初期費用やランニングコストがかかりますが、オフィスや店舗を構えているということで対外的な信用を高めることができます。

②レンタルオフィス

レンタルオフィス事業者が所有する物件の会員となることで、その施設を利用できる形態です。法人であれば本店所在地として登記もできます。個室型オフィスの一角を利用したり、共用のフリースペースが利用できたりとさまざまな契約形態があります。一般に交通至便の好立地にあることが多く、安く好立地なところに出店できるメリットがあります。

③バーチャルオフィス

オフィスの住所や電話番号のみを借りることができる形態です。法人であれば本店所在地として登記もできます。実際に入居はしないため、基本的にオフィスとして利用することはできませんが、オプションで会議室の利用や電話の転送ができるところもあります。安く利用できる点がメリットですが、バーチャルオフィスを法人の本店とした場合、法人名義の銀行口座が作りにくかったり、金融機関からの融資を受けにくいことがあります。

オフィス(店舗)の立地

飲食店や小売店などの業種では、いかに人が集まるところに出店できるかで事業の成否が決まるといっても過言ではありません。駅周辺や商業施設内、テナントビルであれば出店する階数によっても集客に大きく影響します。一般に1階への出店が理想的です。道路に面しているため、顧客が店舗を見つけやすく来店を促しやすいためです。ただし、1階は他の階に比べ家賃が高くなる傾向にあります。家賃が高くなることを許容できるようでしたら、2階よりは1階に出店した方が良いでしょう。

2-2モノ(設備)の調達手段

機械装置や什器備品、車両などのモノを調達する手段としては、主に次の3種類があります。自社にあった手段を検討しましょう。

①手元資金で購入

文字通り、調達したいモノを手元にある資金で購入する方法です。購入したモノは自社の資産となります。取得価額が10万円以上で1年以上利用できるものを固定資産といいます。固定資産は複数年にわたって費用化するという会計上のルール(これを減価償却といいます。)を適用することができます。設備を購入する場合は初期投資が高額になりますが、一般に、長期間の使用を前提に考えた場合は、後述するリースやレンタルと比べて支出総額は低く抑えられます。

②リース

リースとは、リース会社所有の資産(リース資産)を、リース料金を払うことで利用できる方法です。何をリースするか(リース資産とするか)は借り手とサプライヤー(売り手)で決めます。借り手とサプライヤーで決めた資産をリース会社が買い取り、それをリース料の支払いと引き換えに貸し出す3者契約となります。リースは設備導入の際に多額の資金を準備する必要がなくなるというメリットがあります。一方で、リース期間は長期間となる傾向があります。また、中途解約ができず、解約する場合は残りのリース料を一括で払うか違約金を支払うことになるというデメリットもありますので、留意が必要です。

③レンタル

レンタルとは、レンタル会社が所有する資産を、レンタル料を払うことで利用できるものです。一般にレンタル会社であらかじめ所有している資産の中から、使いたい資産を選んでレンタルを受けます。レンタルは短期間の利用に適しています。リースとは異なり、レンタルは一般に中途解約が可能です。

いかがでしたでしょうか。「ヒト」と「モノ」はとても重要な経営資源です。経営戦略の根幹を担う重要な事項でもあるため、最適な調達方法と調達のタイミングを検討していきましょう。

掲載日 令和6年2月27日

プロフィール

三浦 高 三浦 高

V-Spirits 総合研究所株式会社 代表取締役・中小企業診断士
https://v-spirits.com/

資金調達支援(融資、補助金)、事業計画書策定支援、起業支援、ハンズオン支援を中心に活動。全国各地で資金調達や起業、経営に関するセミナーや研修の講師を多数務めている。

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