創業コラム

創業へのステップ

第3回 商圏分析と競合調査をしよう

商圏分析

競合調査

前回のコラムでは、ターゲットの絞り込みと集客方法についてご説明しました。今回は商圏分析と競合調査についてご紹介いたします。

店舗運営には、店舗の立地が大きく影響します。インターネットやSNSでの情報発信により、従来よりも広範囲で集客ができるようになりましたが、基本的に店舗は周辺地域が集客基盤となります。商圏分析により、周辺地域にどのような特徴があるのか、どのような顧客層が多いのか等の特徴を把握しましょう。また、あわせて競合の調査も必要です。競合店の把握方法から競合調査のポイントに至るまで、さまざまな方法をご紹介いたします。

1. 商圏分析

あなたの商品・サービスが適している地域はどこでしょうか?当然ながら自社の商品・サービスを利用する顧客が多くいる地域でビジネスを行うのが最良です。では、どこに顧客が多くいるのでしょうか。商圏分析を行うことで地域の消費者の特性や市場規模を把握することができます。出店を考えるときは、最初に商圏分析から行いましょう。商圏分析の方法は大きく分け、インターネット調査と現地調査の2種類があります。

1-1インターネット調査

まず簡単に行えるのはインターネットによる調査です。インターネットでは次のようなサイトが活用できます。

市区町村のホームページ

市区町村のホームページで、まずその市区町村がどのような地域なのかを把握しましょう。世帯数や人口はどれだけか、産業は何が盛んか、観光地はあるのか、特産品は何があるかなど地域の情報が豊富にあります。市区町村のホームページで特に有用なのが、町丁字単位にて年齢世代別、男女別に人口が把握できる点です。市区町村にもよりますが、大概の自治体は詳細な人口データを公表しています。このデータにより、来店の可能性がある地域のターゲット顧客の母数となる人口を把握することができます。人口を把握することでおおよその市場規模がわかります。店舗系のビジネスを行う場合には必ず確認しましょう。

J-STAT MAP(地理情報システム:総務省統計局)

J-STAT MAPとは、国勢調査や事業所・企業統計調査など統計情報を地図上に表示することができるサイトで、誰でも無料で利用できます。例えば地図上に高齢者と単身世帯の割合を表示したり、周辺地域の年齢層や性別などのデータを表示したりなど、統計情報を可視化し分析することができます

Googleマップ

Google社が提供している地図サイトです。ストリートビュー機能を使うと選択した場所の写真が表示され、あたかも自分がその場所を歩いているかのように写真を送り進めることができます。これにより、その場所に行かなくても周辺地域の大まかな雰囲気はつかめるでしょう。

uMAP(OpenStreetMap project)

uMAPとは、オープンソースの地図情報サイトです。中でも、駅別乗降客数を地図上に反映した地図では、駅の乗降客数が地図上で視覚的に見ることができ、半径数km以内の駅の乗降客数を把握でき、隣接する駅との間隔からどこまでを商圏にできるかが分析しやすいサイトです。検索エンジンで「駅別乗降客数地図」と検索すると出てきます。
※uMAPは有志が作成したものであるため、データの精度については他のデータベースも参考に多角的に確認されることをお勧めします。

1-2現地調査

実際に現地に行って出店候補地や周辺を確認します。特に、後背地や店舗前の歩行者、車の通行量、導線、周辺環境を確認しましょう

後背地

後背地とは駅や商業施設などポイントとなる地点から自店舗の背後にある地域のことです。例えばA駅から東に徒歩5分のところに店舗があるとすると、後背地は店舗の後ろ側周辺(B地点)になります。B地点の人々は通勤や通学、ショッピングなどでA駅を利用します。自宅から店舗前を通って駅に向かい、帰りはその逆を通ります。後背地に住む人々の世代や性別、世帯構成を把握することが重要です。実際に後背地を歩いて周辺環境を把握しましょう。

後背地 図 後背地
店舗前の歩行者や車の通行量

当然ですが、店舗の前を通る人(または車)が入店しますから、店舗前の通行量の把握はとても重要です。現地調査は時間帯と曜日を変えて行うことがポイントです。時間帯と曜日により全く通行量が違うことはよくあります。店舗の営業時間を想定し、来店ピークとなる時間帯の通行量を把握しましょう

導線

想定される顧客がどこから来て、どの道を通り、どこに向かうのか把握しましょう。周辺をよく歩き観察しましょう。

周辺環境

出店候補地の周辺環境を確認します。集客の見込める商業施設、駐車場の有無や競合を含めた周辺の店舗出店状況などを確認します。注意したいのが、後背地だと思っていたところに川があり地域が分断されており、実際の後背地としてはもっと狭かったということもあります。自ら住民になったつもりで周辺環境を見てみましょう

2. 競合調査

これだけ商品やサービスがあふれている世の中です。競合が存在しないビジネスなどまずないでしょう。いくつもの競合があり互いにいかにして競合に優位に立てるかを日々競っています。また直接的な競合関係だけでなく、いたるところに競合が潜んでいます。競合を把握し、競合に少しでも優位に立つためには競合調査をする必要があります

競合の把握

コーヒーが自慢のカフェを開店するとします。競合店はどのように把握すればよいのでしょうか?まず、周辺の喫茶店やカフェは競合になりますね。同じ業態で同じ商品を提供する場合は直接競合といいます。もちろん直接競合は一番意識しないといけません。一方、ファミリーレストランやハンバーガーショップ、洋食屋、コンビニなどカフェではないけれども、同じくコーヒーを提供するところもあります。これらももちろん競合です。類似業種・業態のことを間接競合といいます。さらにコーヒー以外の代替品を提供するところも競合になります。例えば今回の店舗が、落ち着いた雰囲気の店舗でおいしいコーヒーを提供するというコンセプトだとすると、癒しの空間を提供するエステティックサロンも代替品として競合関係になるでしょう。このように競合関係は非常に幅が広いのです。直接競合だけでなく、間接競合や代替品の存在も意識して競合を正確に把握・分析しましょう

競合調査のポイント

競合調査のポイントは、競合店がどのような展開をしているのかです。Web検索での調査、ポータルサイトでの評価など消費者側の属性や評価コメント、比較している競合店の商品サンプルの入手・資料請求、同じ商圏にある競合店の前での張り込み調査、実際に店舗を利用しての現地調査、駅からの導線上にある競合店の調査、商圏がかぶらない先輩経営者からのヒアリングなど、まずは大量の情報を集めましょう。

そして、
  • 他社(他店)が自社(自店)よりも優れている点
  • 自社(自店)が他社(他店)よりも優れている点
を書き出してみましょう。

いうまでもなく、他社(他店)が自社(自店)よりも優れている点については、できる限り参考にして取り入れてみましょう。自社(自店)が他社(他店)よりも優れている点については、さらに磨きをかけて競合を突き離しましょう。他社の集客方法も参考にして、良いものは取り入れていきましょう。

いかがでしたでしょうか。商圏分析と競合調査を通じて、商圏内の顧客に合わせた、他者にはない差別化した商品・サービスを提供していきましょう。

掲載日 令和5年12月26日

プロフィール

三浦 高 三浦 高

V-Spirits 総合研究所株式会社 代表取締役・中小企業診断士
https://v-spirits.com/

資金調達支援(融資、補助金)、事業計画書策定支援、起業支援、ハンズオン支援を中心に活動。全国各地で資金調達や起業、経営に関するセミナーや研修の講師を多数務めている。

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