創業コラム

実現に近づく!創業計画書の作り方

第4回 販売促進の手法 どうやって売上を増やす?

創業計画書

売上予測

販売促進

1. 売上予測ってどうやるの?

さあ、これまで多角的に事業内容を整理してきましたが、いよいよ具体的な売上予測をしてみましょう。事業を行うには何はともあれ、売上が確保できなければ継続できません。

売上予測は売上高を分解して考えてみると具体的になってきます。一般的には
売上高=客数×客単価に分解できます。これを業種によっては更に分解して考えてみましょう。

例えば、飲食業や理・美容業等のサービス業であれば、
売上高=客単価×座席数×回転数となります。
さらに、昼と夜で客単価が違う場合は、分けて試算してみると良いです。

表 飲食業(中華料理屋)の売上予測例

単位:円 座席数 客単価 回転数 営業日数 売上高
201,0001.025500,000
203,0001.0251,500,000
1か月の売上予測2,000,000

また、小売業で店舗売のウェイトが大きい業種(コンビニエンスストアなど)の場合は売上高=1㎡(または1坪)当たりの売上高×売場面積
に分解できます。

それでは、具体的にドッグ・ガーデン・カフェの売上予測をしてみましょう!
念の為、前回の4Pのフレームワークを再掲します。

表 4Pのフレームワークを用いた事業内容の整理

誰に メインターゲット ペットを家族と同じように考えてペットと一緒に過ごす時間を大切にしている人
何をProducts
商品・サービス
ペットと一緒に過ごせる居心地の良い空間・時間・場所
ワンちゃんが自由に遊べるスペース(庭:芝生と土、花)
ワンちゃん用のトイレ・水飲み場
飼い主が休めるカフェ(8テーブル×4席):最大8組
飼い主向けドリンクバー(セルフ方式)
どのようにPrice
価格
月額定額会員・予約制(サブスク):5,000円/月
あるいは1回当りの利用料を1,500円/回とするか?
Place
立地・流通経路
東京都23区内、最寄り駅徒歩15分圏内、駐輪場、駐
車場が近くにある立地
Promotion
販売促進
TVCM,口コミ、紹介推奨、ドッグトレーナー育成の専門学校と提携し、相互紹介する、定期的なイベント企画(トイプードル・デイ等)

売上予測は、月額定額会員・予約制(サブスクリプション)の場合と、来店ごとに利用いただいた分の代金を受け取る場合について考えてみたいと思います。

月額定額会員・予約制(サブスクリプション)の場合だと単純に
売上高=客単価×会員数となります。

一方で、来店ごとに利用料金を受け取る場合は、売上高=客単価×利用者組数×回転数で考えてみました。営業時間を9時~18時(9時間)、一組当たりの平均滞在時間を1時間として、お客さまのの入れ替わり時間等を考慮すると、1.5時間で1回転とするのが合理的です。1日最大6回転(9時間÷1.5時間/回転)で1か月の最大売上高と半分の稼働率の場合の売上高が下記のように試算できました。実際には、常に席を埋めるのは難しいので、稼働率30~50%程度で考えてみると良いかもしれません。

表 売上高の予測

単位:円 組数 客単価 回転数 営業日数 売上高
最大売上高81,5006.0251,800,000
50%稼働率81,5003.025900,000

売上予測で用いた分解した要素を使って、売上の増やし方について考えてみましょう。

2. どうやって売上を増やす?

売上高を増やすための売り方の工夫は実はいっぱいあります。ただやみくもにやればいいというわけでは無く、顧客のニーズを理解・把握した上でどのように売り方を工夫すれば売上が増えるか、試行錯誤していくことが重要です

一般的な顧客のニーズと売り方の工夫例は下記のようなものがあります。

表 顧客のニーズと売り方の工夫の例

顧客ニーズ 売り方の工夫
購買リスク低減1一時的に使いたい。買い替えもしたい。レンタル販売。シェアリング。
2信頼性のあるところから買いたい。紹介販売。
3確実に買いたい。予約販売。
4価値を試してから買いたい。試用販売。
5満足できなければ返品したい。返金保証付販売。
6正しい使い方を知ってから買いたい。実演販売。
7広く情報を得て納得してから買いたい。比較販売。
利便性8ネットで自宅で買いたい。ネット販売。
9購買作業負荷を軽減したい。定期販売。一括販売。
10支払を軽減したい。割賦販売。
11すぐに使いたい。使った分だけ払いたい。配置販売。
12定額で好きなだけ使用・利用したい。サブスクリプション
13お得に買いたい。割引販売。

先ほどの売上予測を使って、ドッグ・ガーデン・カフェでどうやって売上を増やすか?を考えてみましょう。

図 売り上げの分解と販促方法

売上UP 利用回数UP 客数UP 紹介販売、紹介特典、
試用販売、お試し価格
利用頻度UP スタンプカード
オフピーク割引
予約制
客単価UP 利用単価UP 店舗の高付加価値化
(居心地の良さ向上)
購買点数UP 利用料以外のサービス、
商品の品ぞろえの充実。

いかがでしょうか? 事業の特徴に合った販促方法のイメージが湧いてきましたでしょうか?
最初は月額定額会員・予約制(サブスク)も検討していましたが、顧客の立場にたって考えてみると、最初からどれくらいの頻度で行くか分からないのに、月額定額料金を支払ってくれる人は少ないかと思いました。そこで、まずは来店ごとに利用料を頂くようにして、固定客化が多くなってきてから月額定額料金制を検討することにしました。また、とにかく、 一度体験してみないと良さが分からないと思いますので、知っている人からの紹介割引や初回お試し価格も効果的かと思いました。利用料金が決まってしまうと客単価をアップさせる事が難しくなるため、客単価をあげる為には、利用料以外のサービスや商品の品ぞろえを充実させないといけない、という課題も明確になってきました。

次回は経費の計算も含めて更に具体的な事業計画の数値化をしていこうと思いますのでお楽しみに。

※上記の個別の表現については、必ずしも日本政策金融公庫の見解を示すものではありません。

掲載日 令和5年1月25日

プロフィール

加藤 篤士道 加藤 篤士道

公益財団法人日本生産性本部 主席経営コンサルタント
https://www.jpc-net.jp/

1967年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。公認会計士。
KPMGセンチュリー監査法人にて主に外資系企業の法定監査・任意監査に従事し、5年間で約100社に関与。経営コンサルティングの領域で企業の役に立ちたいと思い、公益財団法人日本生産性本部の「経営コンサルタント養成講座」の門を叩く。1年間の座学期間で生産管理・マーケティング・組織マネジメント等の理論と実務を徹底的に学び、その後、経験豊富な先輩コンサルタントから日本生産性本部のゼネラルコンサルタントとしての心構えと手法を受け継ぐ。クライアントとの信頼関係構築を重視し、企業再生・成長支援や新規事業立案・実行支援等のテーマでこれまでのコンサルティング関与先は日本全国約140業種・160社。企業の人材育成にも深く関わり、次世代リーダー養成研修、戦略財務研修、上級管理者を対象としたマネジメント研修をこなす。2020年より政策金融公庫主催の「創業支援能力向上研修」にて「創業計画策定のポイント」の講義を担当。著書「経営の基本」(中央経済社)、「加藤式Business Basic Note」(Chaperon)など多数。

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