創業コラム

実現に近づく!創業計画書の作り方

第3回 「誰に?」「何を?」「どのように?」事業内容を整理しよう!

創業計画書

4P

1. 「マーケティングって何?フレームワーク「4P」って何?」

マーケティングという言葉は聞いたことがある人は多いかと思います。それでは「あなたの事業のマーケティング戦略を教えて下さい。」と聞かれて即答できる人はどれくらいいるでしょうか?マーケティング戦略?という方も多いのでは無いでしょうか?

マーケティングは、「Market+ing」つまり「市場の現在進行形」ですね。概念的に言うと「今まさに動いている私達の身の回りの市場の変化にどう対応していくか?」ということだと思います。私はいつもマーケティング戦略では4Pというフレームワークを使って表現しています。

4Pとは製品(Product)、立地(Place)、価格(Price)、販売促進(Promotion)の頭文字をとったものです。

誰に メインターゲット 重視する価値観やライフスタイル、趣味・嗜好、性格の特徴等
何をProducts
商品・サービス
主要な商品・サービス、特徴
どのようにPrice
価格
販売価格、高価or安価(無料)
定額会員制(サブスク)or変動(使用料比例・時価)
Place
立地・流通経路
駅前、郊外型、テナント等の立地
インターネット販売、自動販売機等のチャネル
Promotion
販売促進
TVCM,広告宣伝、口コミ、チラシ配布、試食、
ネットサイト書き込み、対面販売、セルフ販売
展示会開催、取材を受ける等
図 4P分析の検討事項例

このフレームワークの最大のポイントは、ターゲットと4つのPの組み合わせがフィットしているか?ということです。この組み合わせがフィットしていないと、どんなに素晴らしい製品でも売れません。例えば、現時点では、コンビニエンスストアというチャネルで自動車は売っていません。ということは、ターゲットと4つのPの組み合わせがフィットしていない、ということです。確かにコンビニエンスストアを利用する人は時間を節約したいと考えており、自動車のような高価な製品を良く考えずにさくっと買うという事はフィットしませんね。ただ、インターネットというチャネルでは自動車を販売するようになりましたので、時代によってフィットするかどうかは変わってくるようです。創業後も随時見直しをして、4つのPがフィットしているか見直して、修正していきましょう。

それでは、実際に4Pのフレームワークを使って、前回の「ドッグ・ガーデン・カフェ」の企画を更に具体化してみましょう。

念の為、前回の企画案を再掲します。

ドッグ・ガーデン・カフェ(仮称)
1. 目的(Why)ドッグランの代わりに、小ぎれいな庭(芝生もある)でワンちゃんを自由に遊ばせたい。
公共のドッグランは飼い主が座れるスペースが無い事が多いので、ワンちゃんを遊ばせながら、飼い主もくつろげる場があるといいのでは?
2. 誰に(Who)小型犬とその飼い主
3. 何を(What)ワンちゃんが自由に遊べるスペース(庭)と飼い主が休めるカフェ
コンテンツ案(1)屋内スペース
(2)小ぎれいな庭(芝生)と土、季節のお花が楽しめる
(3)飼い主向けのドリンク&軽食やデザートメニュー
(4)ワンちゃん向けのおやつ
(5)テーブル席
(6)ワンちゃん向けの水飲み場
(7)会員制(登録・予約制)がいいか?
4. どこで(Where)東京都23区内、駐車場が近くにある方がいい
5. 何時(When)2023年4月~
6. 誰と(Whom)家族や犬友達の有志で仲間を募集する
7. 価格(How Much)投資金額:ガーデン・カフェの地代家賃・建築代を試算
利用料+飲食代
図 ドッグ・ガーデン・カフェの企画案

2. メインターゲットの明確化

前回の3C分析で顧客分析をしたときは、メインターゲットは「子育てが終わった夫婦(50代位を想定)、意思決定者は女性」としていました。しかし、愛犬の散歩をして色々な飼い主さんとコミュニケーションを取りながらじっくりと考えてみると、私がこの人たちに「ドッグ・ガーデン・カフェ」にきて欲しいな、と思う人たちは、別に年齢や性別は関係無いということに気が付きました。メインターゲットとして想定している人達の共通点は何か、妻と話し合った結果、「ペットを家族と同じように考えてペットと一緒に過ごす時間を大切にしている人」という結論に達しました。

そのターゲットにフィットする4Pは何か、という視点でフレームワークを考えてみました。

誰に メインターゲット ペットを家族と同じように考えてペットと一緒に過ごす時間を大切にしている人
何をProducts
商品・サービス
ペットと一緒に過ごせる居心地の良い空間・時間・場所
ワンちゃんが自由に遊べるスペース(庭:芝生と土、花)
ワンちゃん用のトイレ・水飲み場
飼い主が休めるカフェ(8テーブル×4席):最大8組
飼い主向けドリンクバー(セルフ方式)
どのようにPrice
価格
月額定額会員・予約制(サブスク):5,000円/月
あるいは1回当りの利用料を1,500円/回とするか?
Place
立地・流通経路
東京都23区内、最寄り駅徒歩15分圏内、駐輪場、駐
車場が近くにある立地
Promotion
販売促進
TVCM,口コミ、紹介推奨、ドッグトレーナー育成の専門学校と提携し、相互紹介する、定期的なイベント企画(トイプードル・デイ等)
図 ドッグ・ガーデン・カフェの4P検討例

かなり具体的になってきました。一番悩んで、未だに決めきれていないのが、Price(価格)です。前回、競合分析をした時、市区町村が運営するドックランは無料で、大手ショッピングモール併設ドッグランは平日30分500円、土日祝日は30分700円でした。それを考慮すると、週1利用で、1回当り1時間位はゆっくりして欲しいので、1回当り1,500円又は月額定額で5,000円くらいでも妥当ではないかと考えたのですが、どうでしょうか?

また、実際には立地選びが大変だと思います。「駅からの距離」、「駐車場や駐輪場の有無」、「採算の取れる賃借料・初期費用」等から物件候補を探し、さらに物件周辺の競合他社をみながら検討していきましょう。立地選びはタイミングもありますので、早めに不動産会社に物件探しを依頼して、色々な物件を慎重に探す必要があります。資金的に無理の無い物件(場所)にしないと後が大変です。

いかがでしょうか?事業内容が具体的になり、課題も絞られてきたように思います。皆さんも4Pのフレームワークを使って課題を明確にしてみてはいかがですか?

次回は販売促進の手法について、更に具体的に検討をしていこうと思いますのでお楽しみに。

※上記の個別の表現については、必ずしも日本政策金融公庫の見解を示すものではありません。

掲載日 令和4年12月28日

プロフィール

加藤 篤士道 加藤 篤士道

公益財団法人日本生産性本部 主席経営コンサルタント
https://www.jpc-net.jp/

1967年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。公認会計士。
KPMGセンチュリー監査法人にて主に外資系企業の法定監査・任意監査に従事し、5年間で約100社に関与。経営コンサルティングの領域で企業の役に立ちたいと思い、公益財団法人日本生産性本部の「経営コンサルタント養成講座」の門を叩く。1年間の座学期間で生産管理・マーケティング・組織マネジメント等の理論と実務を徹底的に学び、その後、経験豊富な先輩コンサルタントから日本生産性本部のゼネラルコンサルタントとしての心構えと手法を受け継ぐ。クライアントとの信頼関係構築を重視し、企業再生・成長支援や新規事業立案・実行支援等のテーマでこれまでのコンサルティング関与先は日本全国約140業種・160社。企業の人材育成にも深く関わり、次世代リーダー養成研修、戦略財務研修、上級管理者を対象としたマネジメント研修をこなす。2020年より政策金融公庫主催の「創業支援能力向上研修」にて「創業計画策定のポイント」の講義を担当。著書「経営の基本」(中央経済社)、「加藤式Business Basic Note」(Chaperon)など多数。

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