実現に近づく!創業計画書の作り方

第2回 フレームワーク「3C」を用いて事業内容を整理してみよう!

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1. 「フレームワーク」を使って事業の内容を検討しよう

「それではどんな事業の内容なのか、あなたのビジネスモデルを教えて下さい」と言われても、ビジネスモデルって抽象的なのでどうやって説明したらいいか、解りませんよね?そんなときに役に立つのが「フレームワーク」です。真っ白な紙に書き始めるのは大変ですけど、書く欄が予め決まっていると書きやすくなります。今回は、数あるフレームワークの中から、最もポピュラーな3C分析を使って事業の内容を検討してみましょう。

3C分析とは、自社の経営に影響するさまざまなプレーヤーを大きく顧客(Customer)、競合企業(Competitor)、自社(Company)の3つに絞り、主要な登場人物の特徴を把握して、自社にとっての重要成功要因(Key Factor for Success:KFS)を見つけ出すフレームワークです。顧客(Customer)、競合企業(Competitor)、自社(Company)の頭文字である3つの「C」を取って「3C分析」と呼ばれます。

分析の優先順位は、顧客⇒競合企業⇒自社が一般的です。

図 3C分析のイメージ
図 3C分析のイメージ

3C分析をするときの視点の例は以下の通りです。

顧客分析の視点

購買人口(消費人口)の規模はどの程度か?

市場の成長性は?製品ライフサイクルはどの位置にあるか?

購買決定までの購買プロセスは?

購買頻度は?

購買の意思決定者は誰か?

実際の利用者は誰か?利用者と購買者は同じか?

購買に影響を及ぼす価格や品質などにおいて、要因は何か?

潜在顧客の可能性は?

競合分析の視点

競合企業の名前は?社数は?

競合各社の戦略(商品、サービス)の強み/弱みは?

競合各社の組織力(経営資源)の強み/弱みは?

競合の業績は?(売上高、市場シェア、成長性、収益性、顧客数、店舗数)

自社分析の視点

自社の業績は?(売上高、市場シェア、成長性、収益性、顧客数、店舗数)

自社の戦略(商品・サービス)の強み/弱みは?

自社の組織力(経営資源)の強み/弱みは?

競争優位性のある差別化要素は何か?

図 3C分析をするときの視点
出典:小倉高宏(公益財団法人日本生産性本部コンサルティング部 (編集)),「5 マーケティング (経営コンサルティング・ノウハウ)」,中央経済社,2014

それでは、実際に3Cのフレームワークを使って、前回の「ドッグ・ガーデン・カフェ」のアイディアを整理してみましょう。

前回の企画案を再掲します。

ドッグ・ガーデン・カフェ(仮称)
1. 目的(Why)

ドッグランの代わりに、小ぎれいな庭(芝生もある)でワンちゃんを自由に遊ばせたい。
公共のドッグランは飼い主が座れるスペースが無い事が多いので、ワンちゃんを遊ばせながら、飼い主もくつろげる場があるといいのでは?

2. 誰に(Who)

小型犬とその飼い主

3. 何を(What)

ワンちゃんが自由に遊べるスペース(庭)と飼い主が休めるカフェ

コンテンツ案
  1. (1)屋内スペース
  2. (2)小ぎれいな庭(芝生)と土、季節のお花が楽しめる
  3. (3)飼い主向けのドリンク&軽食やデザートメニュー
  4. (4)ワンちゃん向けのおやつ
  5. (5)テーブル席
  6. (6)ワンちゃん向けの水飲み場
  7. (7)会員制(登録・予約制)がいいか?
4. どこで(Where)

東京都23区内、駐車場が近くにある方がいい

5. 何時(When)

2023年4月~

6. 誰と(Whom)

家族や犬友達の有志で仲間を募集する

7. 価格(How Much)

投資金額:ガーデン・カフェの地代家賃・建築代を試算

利用料+飲食代

図 ドッグ・ガーデン・カフェの企画案

2. 顧客分析の視点

企画案では、顧客(誰に:Who)は「小型犬とその飼い主」と漠然としていました。まずは、顧客のイメージをもっと膨らませてみましょう

顧客分析の視点

2020年度の東京都の犬の登録頭数は324,613匹。

2004年度の234,199匹に対して90,414匹増加。1.4倍に増加。成長市場!?

利用までのプロセスは、ネットで検索、お店を認知、口コミ確認して利用。

利用頻度は、最低月1回、多ければ週1回を想定。

メインターゲットは子育てが終わった夫婦(50代位を想定)、意思決定者は女性。

実際の利用者はペットと飼い主。飼い主が購買者になる。

求めているニーズは、犬を連れて行っても遠慮しなくて済む居心地の良さ、ガーデニングのオシャレ感。

潜在顧客として、それまでペットを飼った事が無い人が犬と触れ合う事によりペットを飼おうと思うかも?

散歩の途中で飼い主が休憩出来たり、飼い主同士でコミュニケーションを取れると良い。

調べてみると、犬は狂犬病の予防注射をしなくてはならず、登録が必要なため、市区町村で登録頭数のデータが公表されていました。23区内で最も犬の登録件数が多いのは世田谷区で、私が出店を考えている文京区や豊島区、北区周辺は犬の登録件数も少ないことがわかりました。また、少子化が進む中、23区の犬の登録頭数は全ての区で伸びていました!

メインターゲットは、実際に私が愛犬と散歩をしている時や、ドッグランで会う飼い主さんを思い浮かべてみました。結構、イメージが膨らんできます。

3. 競合分析の視点

次は、競合があるかどうか、調べてみましょう。

競合分析の視点

文京区が運営するドッグラン。座るところが無いので、飼い主は立ちっぱなしで疲れる。草木が無く殺風景。

屋外のため、夏は暑く、冬は寒い。雨が降ると行けない。本当は雨の時ほど散歩させる場所が無くて困るのに。

広大な敷地のある公園は無料。芝生や草木、自然が多くて広い。ベンチもある。

大手ショッピングモール併設ドッグランは平日は30分500円、土日祝日は30分700円。

天然芝で、小型犬専用エリアと全犬種用フリーエリアに分かれる。

隣にトリミングサロン、ペットホテル、ヘルスサポート店が隣接し、ペットホテルは一時預かりも対応。

アンディカフェはサロンやホテル、ドッグランなどの犬の複合型サービス施設。目黒、恵比寿などで6店舗展開。

愛犬同伴OKで、一緒にお肉料理や無農薬野菜のヘルシー料理を楽しめる。ランチ1,000円~

パーティーやオフ会など、貸切で利用も可能、愛犬も食べれるドッグメニューあり。30席。

図 競合分析の視点

調べてみると、色々と出てきました。無料で利用できる公園の近くにお住まいの飼い主さんたちには、ドッグランのニーズは薄いのだろうと思います。

おすすめのドッグランで調べると、私のイメージに近いのは、大手ショッピングモール併設ドッグランがありました。でも、とてもここまで総合的には出来ません。

次に、ドッグカフェで調べると、単にペット同伴がOKのカフェは結構あることが分かりました。その中でもドッグランが併設されているところがあり、サロンやペットホテルも複合的に行っているので、ここと同じことをしても勝てそうにありません。

競合を調べると、自分が思っている以上のサービスを揃えているところがあり、「やっぱりダメかな」とへこんでしまうこともあるかも知れません。でも、逆に自分らしい独自性を見つける参考になると思います。特に、価格設定はとても参考になりますね。

4. 自社分析の視点

さあ、顧客分析と競合分析を踏まえて、いよいよ最後に自分の店の特徴を考えてみましょう。

自社分析の視点

屋内と屋外のスペースを使い、屋外はシェードで日差しや雨風を防げるような設計にしたい。

本物の芝生と人工芝を使用し、季節の草花を植えてガーデニングも楽しめるようにする。

会員制かつ完全予約制にして利用料は月額固定のサブスクリプションにしてカフェもセルフ型飲み放題にしてはどうか?

ドッグトレーナー育成の専門学校と提携して、生徒さんと一緒にイベントを企画出来ないか?

飼い主さん同士がコミュニケーションを取れるような企画を考えてみる。例:トイプードルデイ

犬の公衆トイレを整備出来ないか?消臭剤のメーカーやトイレメーカーと共同開発出来ないか?

図 自社分析の視点

色々とアイディアが浮かんできました。現時点では、飼い主さんの目の行き届く位の広さの屋外ドッグラン&ガーデン+居心地の良い屋内店舗のコンセプトが重要成功要因かと思っています。そして、固定客になってもらうべく、会員同士の適度なコミュニケーションを促すようなイベント企画も競合他社との差別化要素にしたいと思います。

どうでしょうか?段々とビジネスモデルの中身が具体的になってきましたね。皆さんもアイディアを3Cのフレームワークを使って整理してみてはいかがですか?

次回は更に具体化していきたいと思いますのでお楽しみに。

※上記の個別の表現については、必ずしも日本政策金融公庫の見解を示すものではありません。

掲載日 令和4年11月23日

■プロフィール

加藤 篤士道

加藤 篤士道

公益財団法人日本生産性本部 主席経営コンサルタント

https://www.jpc-net.jp/

1967年東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。公認会計士。
KPMGセンチュリー監査法人にて主に外資系企業の法定監査・任意監査に従事し、5年間で約100社に関与。経営コンサルティングの領域で企業の役に立ちたいと思い、公益財団法人日本生産性本部の「経営コンサルタント養成講座」の門を叩く。1年間の座学期間で生産管理・マーケティング・組織マネジメント等の理論と実務を徹底的に学び、その後、経験豊富な先輩コンサルタントから日本生産性本部のゼネラルコンサルタントとしての心構えと手法を受け継ぐ。クライアントとの信頼関係構築を重視し、企業再生・成長支援や新規事業立案・実行支援等のテーマでこれまでのコンサルティング関与先は日本全国約140業種・160社。企業の人材育成にも深く関わり、次世代リーダー養成研修、戦略財務研修、上級管理者を対象としたマネジメント研修をこなす。2020年より政策金融公庫主催の「創業支援能力向上研修」にて「創業計画策定のポイント」の講義を担当。著書「経営の基本」(中央経済社)、「加藤式Business Basic Note」(Chaperon)など多数。

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