技術協力
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当公庫 国民生活事業は、これまで蓄積してきた小企業の融資審査ノウハウを提供することによって、開発途上国の金融機関が抱える課題の克服に協力しています。日本のODA実施機関等と連携し、これら金融機関に対する現地や日本でのセミナー等を企画・実施しています。
ベトナム
社会政策銀行に対する
技術協力
当公庫 国民生活事業は、財務省 財務総合政策研究所(財務総研)と協力して、ベトナム社会政策銀行(Vietnam Bank for Social Policies:VBSP)に対する人材育成にかかる技術協力を実施してきました。

1ベトナム社会政策銀行とは?
市場経済への移行が急速に進むベトナムは、雇用創出による貧困の軽減という観点から、小企業の育成を重要な政策の一つと位置付けており、小企業金融システムの整備を急いでいます。
2003年1月、VBSPは、貧困者や小企業を融資対象とする政策金融機関として、「ベトナム貧困者銀行」を組織変更して設立され、雇用を創出する小企業に対して融資を推進しています。
事業形態 | 政策金融機関 |
---|---|
業務内容 | 貧困者や小企業に対する融資 |
設立 | 2002年10月4日に首相令により設立が決定。業務開始は2003年1月1日 |
支店数 | 63支店、618取引所 |
従業員数 | 8,800人 |
融資残高 | 約43億米ドル |
(2010年12月末時点)
2当公庫 国民生活事業がVBSPに技術協力を行った背景
業務内容を拡大し、小企業に対する社会政策的な融資を始めたVBSPですが、設立間もないため、職員の多くは金融経験が乏しく、小企業への融資審査実務についての知識やノウハウの蓄積が喫緊の課題となっていました。
こうした状況を背景に、VBSPから日本の財務総研に対して、中小企業金融に関する技術協力の要請がありました。これを受け、当公庫 国民生活事業は、2003年6月から、本ODA事業の実施機関として、60年近くにわたって培ってきた経験やノウハウを提供しています。こうした取り組みは、VBSPの大半を占める経験の乏しい職員にとって、非常に有益なものになっています。
3これまでの活動実績
第1期:VBSP職員の融資審査能力等の向上
2003/02/10-19
事前調査[於 ベトナム]
VBSPに対する技術協力の可能性を検討するため、VBSPの実態や技術協力ニーズを把握するための現地調査を実施しました。
2003/06/17-18
討議議事録への署名[於 ベトナム]
2003年6月から2005年5月の2年間にわたり、財務総研のODA事業として国民公庫(現日本公庫 国民生活事業)が技術協力を行っていくことが合意されました。
2003/10/13-21
第1回現地セミナー
VBSPの支店長と融資担当課長を対象に、首都ハノイ、中部の主要都市ダナン、南部の商業都市ホーチミンの3都市で、それぞれ2日間「小規模企業金融セミナー」を開催しました。セミナーには、計135名が参加し、小規模企業の審査について、ケーススタディーを交えながら実践的な手法を伝えました。
2004/02/04-20
第1回日本招へいセミナー
VBSPの幹部や2003年10月に実施した現地セミナー参加者の中から選ばれた支店長ら計21名に対し、3週間にわたり研修を実施しました。金融実務に関する講義のほか、支店視察や取引先企業訪問を行い、企業を見る目を養いました。
2004/05/18-21
中間評価[於 ベトナム]
1年目の技術協力で実施したセミナー内容等の普及状況を把握するため、現地調査を実施しました。
2004/10/05-14
第2回現地セミナー
VBSPの支店長、中堅の融資担当職員等、計92名を対象に、ハノイ、ホーチミンの2都市で「小規模企業金融セミナー」をそれぞれ3日間開催しました。セミナーでは、ケーススタディーやロールプレイングを通じて、具体的かつ実践的な信用調査ノウハウを伝えました。
2005/02/21-03/04
第2回日本招へいセミナー
VBSPの支店長13名ほか本店職員等4名(計17名)を受け入れ、2週間にわたり研修を実施しました。金融実務に関する講義のほか、支店視察や取引先訪問など現場実習も行いました。
2005/05/23-06/01
最終評価[於 ベトナム]
2年間実施した技術協力の成果を評価するため、現地調査を実施しました。また、今後の技術協力の内容について協議し、当事業のサポートの下、VBSPが「融資審査関連書類」(融資審査フォーマット、融資審査マニュアル、融資審査問題集)を2006年2月までに作成することで合意しました。
フォローアップ:「融資審査関連書類」の作成
2005/10/3-7
融資審査関連書類指導ミッション[於 ベトナム]
VBSPが作成している融資審査関連書類について指導を行うため、VBSPを訪問し、実務担当者と協議を行いました。
2006/02/21-23
フォローアップセミナー及び討議議事録への署名[於 ベトナム]
上記融資審査関連書類の活用方法についてフォローアップセミナーを開催しました。また、今後2年間の技術協力に関しても同意しました。
▲第1期の技術協力により完成した「融資審査関連書類」
第2期:「融資審査関連書類」の普及・定着
2006/06/5-16
第1回日本招へいセミナー
VBSPの支店長12名ほか本店職員等4名(計16名)を受け入れ、2週間にわたり研修を実施しました。当事業が独自に蓄積してきたノウハウの中でも「創業支援」や「債権管理」を中心に講義を行いました。また、支店視察や取引先企業の訪問を通して、企業を見る目を養いました。
2006/10/16-28
第1回現地セミナー
融資業務の現場を担う取引所所長を中心とした138名を対象に、ハノイ、ダナン、ホーチミンにおいて、VBSP向け「小企業金融セミナー」を開催しました。2日間のセミナーでは、「融資審査マニュアル」を使用し、実務的な融資審査手法について講義をしました。ベトナムの企業を題材にしたケーススタディーでは、受講生による活発な討議が展開されました。
2007/03/06-09
中間評価[於 ベトナム]
1年目の技術協力内容の普及状況を把握するために、現地調査を実施しました。セミナー受講生の努力により、その内容がVBSP全体に広く浸透していることを確認することができました。
2007/06/11-22
第2回日本招へいセミナー
VBSP本店幹部職員、支店長16名を受け入れ、2週間にわたり研修を実施しました。創業支援や債権管理の講義を中心に、実践的に審査ノウハウを伝えました。また、地方の支店や取引先企業を視察することで、地域経済を支える当事業の役割についても理解を深めてもらいました。
2007/10/24-11/2
第2回現地セミナー
融資業務の現場を担う取引所所長ら138名を対象に、ホーチミン、ダナン、ハノイにおいて「小企業金融セミナー」を行いました。受講生は、実在するベトナム企業をケーススタディーの題材としたプログラムを受講するとともに、熱のこもった討議を繰り広げました。また、セミナーと並行して支店及び取引所の視察も行いました。視察では、当事業の指導のもと、VBSPが作成した「融資審査マニュアル」を実際の業務に活用していることを確認することができました。
2008/05/13-15
最終評価[於 ベトナム]
第2期の技術協力の成果を確認するとともに、プロジェクト評価を行うため、現地調査を実施しました。
第3期:融資審査研修の創設
2009/02/17-20
事前調査[於 ベトナム]
次期技術協力の可能性について検討するため、財務総研と合同で調査ミッションを派遣しました。現地では、本店幹部へのヒアリングを行うとともに、ハノイ支店と近年設立されたトレーニングセンターを視察しました。
2009/11/4-6
討議議事録への署名及び第1回現地セミナー
最長2年間の技術協力についての合意内容が記載された討議議事録に署名するとともに、第1回セミナーを実施しました。セミナーでは、当事業による講義実演と、当面の目標(VBSPによる融資審査講義実施)に向けた具体的な取り組みについての協議が行われました。
2010/03/9-12
第2回現地セミナー
行内で融資審査講義を担当する VBSPのトレーニングセンター(TC)職員等を対象にセミナーを開催しました。TC職員が講義の予行演習を実施し、当事業はそれに対するフィードバックを行いました。併せて、当事業は、講義方法や資料の作り方について指導をしました。
2010/10/26-28
中間評価[於 ベトナム]
VBSPのトレーニングセンター職員が、同行の新入職員に対して「融資審査講義」を実施しました。当事業は実際に講義を傍聴し、受講者へのヒアリングなどを行って、これまでの技術協力の成果を検証しました。
2011/05/24-27
日本招へいセミナー
VBSPの本店職員7名を受け入れ、4日間のセミナーを実施しました。人材育成を担当する部署からの講義や意見交換等を通じ、当事業の研修体制について理解を深めました。
2011/10/19-21
最終評価[於 ベトナム]
ハノイで実施された研修を傍聴、評価し、VBSP幹部や現場職員へのヒアリングを実施しました。その結果、これまで日本側から得たノウハウをもとに、VBSPが融資審査研修を効果的に実施していることを確認しました。
4VBSPから寄せられた声
ハン頭取(2006年10月)

国民公庫(現日本公庫国民生活事業)は、2003年1月に設立されたばかりのVBSPに対して、いち早く支援をしてくれた機関です。
2003年6月に技術協力内容について合意した後、これまで日本・ベトナム両国で合計6回のセミナーを実施してくれました。セミナーでは、講義だけではなく、実践的なロールプレイングやケーススタディーも行われ、国民公庫の55年以上にわたる経験を分かりやすく伝えてもらっています。国民公庫の技術協力が有益なのは、日本の貴重な経験をもとにしながら、ベトナムの商習慣やVBSPの手法に合わせた内容となるように努めていただいているからです。その結果、2005年末には、国民公庫の協力のもと、融資審査フォーマットやマニュアルが完成し、VBSPの全支店に導入することができました。職員育成にも使用できる融資審査マニュアル等ができたのは、VBSPにとって初めてのことです。
このことからも、本プロジェクトは最も効果的なものであると言えます。さらに、2006年2月には、融資審査手法に加え、債権管理や創業支援についてのノウハウを伝える2年間の技術協力が決定しました。
日本の政策金融改革でも、国民公庫の小企業向け融資が政策金融として必要なものであることが認められたと聞き、同じ政策目的を持つ機関として自分のことのようにうれしく思います。今後も、国民公庫のノウハウをできる限り吸収するよう最大限の努力をしていくつもりです。