リバスキュラーバイオ株式会社
代表取締役兼CEO:大森一生
所在地:大阪府
事業領域:バイオテック
Interview


血管をつくる源となる「血管内皮幹細胞」を活用し、これまで治せないとされてきた微小血管障害の治療法開発に挑むのが、大阪大学発の創薬ベンチャー、リバスキュラーバイオだ。同大微生物病研究所の髙倉伸幸教授の研究成果を基に、血管の損傷や機能不全によって起きる難治性皮膚潰瘍、血友病を対象とした細胞医薬品の開発に取り組んでいる。
血管は、全身に血液を循環させることで酸素や栄養分を体中に届けるとともに、血液凝固因子など体に必要なたんぱく質をつくる働きを担う。血管に障害があると臓器は適切に機能できず、様々な疾患の原因となる。同社は皮下組織から採取した血管内皮幹細胞を培養して細胞シートを作製。患部に移植することで血管を再生する独自技術を編み出した。「血管の力で世界中の患者さんの人生を変える。それが私たちの目標です」と同社の大森一生社長は力を込める。

製品候補のひとつである血管内皮細胞シート
糖尿病専門医として臨床と研究の両面で治療に取り組んできた大森社長は、経営学修士号取得を目指して入ったビジネススクールのつながりから髙倉教授を紹介された。世界で初めて血管内皮幹細胞を発見した髙倉教授の研究成果は、衝撃的だったと大森社長は振り返る。
「糖尿病は、重篤化すると血流障害で足を切断することがあります。大きな血管はカテーテル治療でうまく通っても、そこから先の微小血管が壊れたままだからです。髙倉教授が長い時間をかけて作られてきたデータは、その現状を一変するものでした」
髙倉教授は製薬企業出身の西角文夫氏と共に、治療薬の実用化を目的とした橋渡し研究や資金獲得を進め、起業のタイミングを計っているところだった。話し合いを重ねた3人は2022年9月、西角氏を最高執行責任者(COO)、髙倉教授を共同研究者として起業した。
研究や設備面で髙倉教授の研究室をはじめとする大阪大学、同医学部附属病院の協力を得られる点が同社の強み。創薬にまつわる専門知識は西角C00が詳しく、実際に薬を使う医師の視点や要望は、大森社長がネットワークを生かして集める。
「今後1年かけて安全性試験を行い、2年後ぐらいに臨床試験へと臨む道筋が作れてきたかなと感じています」と大森社長は手応えを語る。
一方、いまだに慣れないと苦笑するのが”失敗に対する考え方”だ。「医者というのは失敗してはいけない仕事なのですが、スタートアップはむしろ失敗を前提としてトライしていかないと前に進んでいかないんですよね。頭では理解できても気持ちの上で切り替えが難しく、今でも失敗の度にへこみがちです」
創業から2年、資金調達は順調に進み、細胞シートを共同で開発するメーカーも見つけることができた。「ここまで来られたのは、最初に日本政策金融公庫の担当者の方が、具体的な資金計画の立て方を一緒に考えてくださったおかげです。その経験は、以降の資金計画にとても役立ちました」と大森社長。23年には大阪大学ベンチャーキャピタルからの出資を受け、細胞培養加工施設への技術移転や治療薬開発の実現を目指し活動を加速。3人で始めた組織も、常勤の研究員3人を含む9人へと拡充できた。
「会社の強さは人数ではなく、いかにチームとしてまとまっているかだと思っています。夢を共有し、心を一つに歩んでいけるチーム作りに、これからも努力していこうと思います」
生命の根源である血管をつくり出す同社の細胞は、がんを含め様々な病気の治療に役立つ可能性を秘める。「iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作った細胞を生着させるためにも血管は必要です。再生治療の際、当社の細胞を一緒に移植することで治療効果を上げられないかという研究も始めています」と大森社長。「医師として、新しい薬によって悩み苦しんでいた患者さんの人生が一変する瞬間を目にすることがあります。そういう瞬間を私たちの技術がつくれるなら、全力でそこに向かっていくまでです」

リバスキュラーバイオ株式会社
所在地:大阪府吹田市山田丘3-1 大阪大学微生物病研究所 最先端感染症研究棟
設立:2022年9月
代表取締役:大森一生
事業内容:血管内皮幹細胞を用いた細胞治療の開発