株式会社ayumo
代表取締役・CEO:桑田佳幸
所在地:大阪府
事業領域:バイオテック
Interview
「いつまでも自分の足で歩くことができる健康社会への貢敵」を目指し、歩行動画の解析に基づく疾患診断支援機器の開発に取り組むのが大阪大学発のヘルステックスタートアップ、ayumoだ。歩行困難を引き起こす多様な疾患のうち、歩き方に特徴が出るものがあることに着目。独自の「歩容認証技術」で原因部位や重症度などを判定し、専門医による早期診断・治療につなぐ。
歩行困難を誘発する脊椎疾患や神経内科疾患などの中でも、頚髄症は初期症状が首ではなく手足のしびれや歩行障害として現れることが多く、初期診療の段階では、脊椎専門医でなければ早期発見が難しい。同社は、大阪大学や国立病院機構との連携で構築した深層学習モデルを起点とし、独自の診断支援が可能なAI(人工知能)プログラムを構築。それを読み込ませたタブレットで患者の歩行を撮影することで、疾患の特徴を捉える。診療所に導入し、重症の疑いがあれば精密検査を促すような活用を想定しており、「専門知を集合知化させることで、誰でも、どこにいても健康的に歩ける環境づくりを目指す」と桑田佳幸社長は力を込める。
大阪大学大学院工学研究科を修了後、エンジニアを経て経営コンサルタントをしていた桑田社長が、研究者の起業支援で関わった大阪大学で、整形外科を専門とする森口悠医師に出会ったことがきっかけだ。ayumoの基となる技術は、森口医師を研究代表者として、2019年から同大で医学部とデータビリティフロンティア機構との共同開発で進められてきた。
「脊椎疾患はタイミングが遅れると手術をしても後遺症が残り、本人だけでなく家族にも影響を及ぼす。臨床現場の課題をコンピュータビジョンで解決し、医療格差をなくし、一人でも多くの患者のカになりたい」。森口医師の熱い想いに共感した桑田社長は23年、森口医師と共にayumoを設立した。
需要があるか一抹の不安はあったが、桑田社長は森口医師らとともに診療所訪問を重ね、多くの開業医が手足のしびれや歩行困難を訴える患者への原因疾患特定に困っている現状を確認した。一方で脊椎疾患の手術が可能な中核病院は中小病院からの患者紹介を求めていることに着目し、売り先を中核病院、使用するのは地域の中小病院というビジネスモデルを考案し、地域の医療課題解決に向けて事業化検証を進めている。
「聞き取りを重ねるほどに、僕らのやろうとしていることが期待されている実感が深まってきました」と笑顔を見せる桑田社長。また、同社では、開発機器をリハビリ目的に使いたいとの声を受け、治験を経て承認を得る必要がある診断支援機器の前に、まず歩行分析計としての発売を決定。2分かかっていたデータ解析を10秒以内に縮め、接触センサーを付けずに歩行分析が可能な医療機器の販売を25年春頃に発売する。
日本政策金融公庫の担当者からは、融資に加え、情報発信の機会をたくさんもらったと桑田社長は語る。「社会課題を解決したいという僕らの本気度を買っていただき、雑誌系メディアや講演会などの登壇機会を度々紹介してもらえました。やみくもにアピールするだけでは無視されていたでしょうが、時機を捉えて薦めてくださったおかげで、僕らだけでは得られなかったつながりをたくさん持たせていただきました」。担当者とは年齢も近く、一緒に関西を盛り上げていける仲間だと、厚い信頼を寄せている。
同社の取り組みは海外からも注目され、複数の研究機関と共同研究の準備を進めているという。診断支援機器としては当面、脊椎疾患に限定して開発を急ぎ、承認を得て発売がかなえば順次対象を広げ、歩行困難にかかわる多くの疾患の見逃しを防ぐツールに育てたい方針だ。
また、非医療機器領域においては、介護施設やフィットネスジムで中高年者の運動機能を定期的に評価し、症状に合わせた適切な運動プログラム等を提供するようなサービス展開も視野に入れているという。桑田社長は「家庭を含め様々な場所で身近な存在になっている、血圧計のような医療機器を目指そうと森口と話しています。
開発し、世の中に広げていったその先に、誰もが健康で長生きしながら生活を楽しめる、目指すべき社会があると信じています」と力を込める。
株式会社ayumo
所在地:大阪府大阪市北区角田町8番47号 阪急グランドビル26階FUTRWORKS
設立:2023年6月
代表取締役:桑田佳幸
事業内容:医療機器の企画・研究開発・製造・販売、ウェルネス向けアプリサービスの企画・開発