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Interview

オンライン見積もり比較・集客サービス「ミツモア」
600種のサービスと依頼者を迅速に結び付け
日本のGDP向上を目指し、効率化による事業主の売り上げ拡大を実現

株式会社ミツモア 代表取締役CEO 石川彩子

株式会社ミツモア

代表取締役CEO:石川彩子

所在地:東京都

事業領域:ICT

URL:https://meetsmore.com/

株式会社ミツモア ロゴ

石川彩子代表取締役は、米シリコンバレーで働いていたときに、ローカルサービス市場を効率化するSaaSで成功したスタートアップを知った。当時、流通金額1000億円を超えるユニコーンだった。昨今の日本に漂う閉塞感を打破するために、また日本の中小企業事業者を応援するために、何かできることはないか。起業の決意を固め、帰国後、2017年に株式会社ミツモアを設立した。

コンサルの仕事で起業への意識が芽生え、米国シリコンバレー勤務で決意

石川氏は父の仕事の関係で、幼少期から日本と中国を行き来していた。中国は時代に合わせて大きく変化していく一方で、日本は何も変わらない国になってしまうと危機感を抱いていた。

東京大学を卒業し、外資系のコンサルティングに就職。地方銀行のプロジェクトで出会った、さまざまな中小企業経営者に尊敬の念を抱くようになった。そして渡米。アメリカでMBAを取得後、シリコンバレーのスタートアップに就職した。

シリコンバレーでは、身近に優秀な人物が多く、また起業マインドも高かったことから、起業への意識が自然と芽生えていった。日本のGDPを伸ばし、「明日がもっといい日になる」と思えるような社会をつくるため、中小企業の課題解決・効率化を実現するローカルオンラインサービスで起業しようと決意した。

「ミツモア」7年で累計依頼件数が550万件を突破、600種類のサービス取り扱いへ

まず、帰国して行ったのはITエンジニア探しだった。自分ひとりだけではプロダクト開発ができないため、知り合いのエンジニアに最もやる気があるエンジニアを紹介してほしいと頼み込んだ。3カ月後ようやく、共同創業者となる柄澤史也取締役CTOと出会う。マスに対してバリューを追い求めるという考えが一致し、事業と技術を引っ張る強力な組み合わせができた。

「ミツモア」は各種サービスの見積もりをシステム上で自動化し、AIでマッチングを最適化する。依頼者が一問一答形式で依頼内容を入力すると、最短1分で最大5社の相見積もりが提供される。見積もりに関わる煩わしいやりとりが事業者、依頼者共になくなることが大きなメリットだ。

強みは見積もりの正確性で、事業者は登録時に仕事の条件と価格を細かく設定する。1サービスに対してコスト要因を200用意する場合もある。また、価格が変動する理由の分析や依頼者への質問内容を改善するなどで価格設定の最適化を図る。季節要因による価格変動などにもきめ細かく対応し、依頼者と事業者間のトラブルを防ぐ。

当初はカメラマンと税理士の二つの領域でサービスを立ち上げた。ただ、プロダクトマーケットフィット(PMF)が十分でないところがあり、事業者、依頼者共に利用者が限定的だった。そこで、課金体系を成功報酬型にするなどビジネスモデルとプロダクトを変え、現在の形にたどり着いた。

個人向けサービスでは引っ越しや不用品回収、エアコンクリーニング・取り付けなど、様々な困り事やライフイベントに対応する。ビジネス向けサービスでは、勤怠管理や電子契約のビジネスソフトウェアを簡単に・比較でき、ビジネスを効率よく前進させることができる。今では、600種類のサービスをそろえ、2024年7月時点で、累計依頼数は550万件となった。結果、数人規模の登録事業者が、「ミツモア」上で月商1000万円挙がった例もある。

しかし、ここに来るまで順風満帆だったわけではない。サービスが伸びない時期と資金が足りない時期が数年おきに繰り返された。それらの困難を乗り越えてきたのは、石川氏の諦めない心だった。

新規事業とITでの海外進出で初の成功企業を目指し、前人未踏の高みへ

創業当初の調達は、エンジェル投資家からだった。「石川だったら諦めないし本気でやるだろうから」と投資を決めてくれた。2019年6月のシリーズAでは、今後の事業展開を考慮し、ハンズオン支援と海外展開支援に定評のある2社のベンチャーキャピタルから投資を受けた。1社だと万が一上手くいかない時の不安がある。逆に数が多いとコミュニケーションコストが上がり、事業成長がスローダウンすると考えたからだ。石川氏は「投資家に対し、大きな事業のビジョンを語る時期だった」と当時を振り返る。

2022年8月のシリーズBでは5社から23億円の資金調達をした。累計調達額は33億円となった。この時期は「収益化へのチャレンジをどう進めるかなど、数字について語るのが、ビジョンと同じくらい大事になった」という。調達した資金により、人材強化とマーケティング活動を加速させた。

このタイミングで、フィールドサービス事業者向けSaaS「プロワン」の本格展開を始めた。「プロワン」は、短期工事やリフォーム・設備工事などの現場における事務作業をペーパーレス化しモバイル対応とすることで、報告書や見積もりの作成時間を短縮するサービス。その時間を実作業に充てることができ、作業効率が大幅にアップする。全ての業務を「プロワン」上で行うだけで、売り上げ、業務記録、顧客情報などが自動分類・蓄積され、データの可視化による効果的な経営分析が可能となる。

当初、メンバーは知人の伝手をたどって集めていたが、事業が軌道に乗るにつれ、求人媒体やエージェントでの採用も増やしていった。2024年7月時点で従業員は280人となったが、さらに先を見据えて人材確保にアクセルを踏んでいる。

石川氏が目指すのは早期のスモール上場ではない。頭に描くのは、スタートアップを決意するきっかけとなった米のユニコーンだ。そこにたどり着くには「プロダクトを増やすことと海外展開が必要になる」。サービス産業向けSaaSの日本市場は米国の5分の1、8分の1規模と言われる。また、一つのプロダクトの売り上げは、100億円が限界とも言われる。さらに、IT分野で海外進出に成功した企業は見当たらない。こうした定説を覆す「最初の会社になる」と宣言する。

「ミツモア」は、当初から海外を意識した設計となっている。新規事業を成功させるのは難しいと言われるが、プロダクトを増やしていく準備も進めている。スタートアップの成功には運が必要と言われる。運をつかむ確率は低いが「足を止めず無数の点を打ち続ければ、いつかは当たる」とポジティブに捉える。「目の前は不安ばかりでも、遠くには明るい星が輝く。その星を得るために手を伸ばし続ける」。石川氏は、とどまることなく早足で、遥か高みを目指していく。

株式会社ミツモア

所在地:東京都中央区銀座7-16-12G7ビルディング8F
設立:2017年2月
代表取締役CEO:石川彩子
事業内容:ローカルサービス事業者向けのオンライン見積もり比較・集客サービス「ミツモア」、ならびに業務改善Saas「プロワン」の開発・運営