第9回 女性・若者向け 創業相談ウィーク 第9回 女性・若者向け 創業相談ウィーク

あなただけのキラメキを一緒に咲かせよう 第9回 女性・若者向け 創業相談ウィーク 初のオンライン開催 2/15(月)>3/19(金) あなただけのキラメキを一緒に咲かせよう 第9回 女性・若者向け 創業相談ウィーク 初のオンライン開催 2/15(月)>3/19(金)

イベント実施報告

日本政策金融公社×東北起業女子応援ネットワークコラボレーション相談会「起業の先輩にきく、アイデアをカタチにする方法」#1 日本政策金融公社×東北起業女子応援ネットワークコラボレーション相談会「起業の先輩にきく、アイデアをカタチにする方法」#1

女性ならではの視点でビジネスを始め、成功している女性起業家はたくさんいます。彼女たちの姿を見て起業を志す人もいるでしょう。しかし誰しも、起業に向けた最初の一歩を踏み出すには勇気がいります。また、起業した後も理想と現実のギャップで悩みは尽きません。

そこで、日本政策金融公庫は2021年2月17日に、東北起業女子応援ネットワークとの共催で「起業の先輩にきく、アイデアをカタチにする方法」を開催しました。

イベントでは、先輩起業家の方々に創業の経緯や起業後の取り組みをお話いただく講演を実施。講演後は、参加者から先輩起業家に質問できる交流会も行われました。

今回は、株式会社サンクラッド代表取締役の馬場加奈子さんによる基調講演の様子をレポートします。
株式会社サンクラッド 代表取締役 馬場 加奈子さん

株式会社サンクラッド 代表取締役 
馬場 加奈子 さん

学生服・学用品の買取・販売を行う「学生服リユースshopさくらや」を運営。3人の子どもを育てるシングルマザーでもある。2011年に香川県高松市で創業し、現在パートナー店は全国60店舗にまで拡大。

数々のビジネス賞を獲得し、起業セミナーの講師としても活躍している。

※内容は2021年3月時点のものです。

1.起業までの経緯:学生服に困った経験から事業が生まれた

現在は、学生服のリユース事業を行う馬場さん。起業を考え始めたきっかけは、障がいをもって生まれた長女の誕生でした。しかし長女の養護学校進学までは起業せず、ピザ屋のチラシ配りや保険会社勤めをして生計を立てたそうです。馬場さんに、起業するまでの経緯をお話いただきました。

起業までの経緯をお話される馬場さん

起業までの経緯をお話される馬場さん

シングルマザーで働けず苦しい生活を経験する

馬場:今、メディアではシングルマザーの貧困が多く取り上げられていますが、私はまさに貧困問題の当事者だったんです。

3番目の子どもが生まれた頃にはもうシングルマザーで、近くの保育園に子どもを預けられず、仕事をしたくてもできない状況でした。そこで、子どもをベビーカーにのせてピザ屋のチラシ配りを始めました。しかし、収入は月3,000円〜5,000円。高松市から母子手当も受け取っていましたが、それでも当時は家賃が払えず大家さんに怒られたり、ガス代や電気代を滞納することもありました。

学生服の中古販売がなく子どもの学生服に困る

馬場:子どもが小学生になると制服が必要になったのですが、そこで学生服が中古で販売されていないことを知るんです。

当時は生活するのに精一杯だったので、子どもの学生服がきつくなると中古品を探してリサイクル店を回りました。しかし制服は取り扱われておらず、なかなか買い替えることができませんでした。

今でも悔やんでいるのは、子どもが「制服がきつくなった」と言ってきたときに、成長を喜んであげられなかったことです。「制服は高いから買い替えたくない」という思いが先に来てしまって、普通の親のように「大きくなったね」と喜べなかったんです。

学生服のリユース事業で起業を決意する

馬場:長女が養護学校へ入学し、起業するにはちょうどよいタイミングだと思い、学生服のリユース事業を始める決意をしました。

起業自体は前々から考えていたものの、当時はやりたいことがありませんでした。そこで、自分が困っていた学生服で事業を起こすことにしたんです。学生服のリユースなんてまだ誰も実現していない事業だったので、起業の話をすると周りから反対されましたね。

2.起業後の流れ:自分の信念を貫いた営業スタイルを確立

自分の身近にあった学生服の悩みを事業にすることを決められた馬場さん。周りの反対を受けながらも自分の信念を貫かれた、起業後のストーリーをお話いただきました。

毎日チラシ200枚配布、ブログ10回更新を継続する

馬場:起業してからは、毎日チラシを200枚配り、ブログを10回更新しました。私は39歳と遅めの起業で体力がなかったので、継続するのは大変でしたね。

つらくなったときに支えになってくれたのは、一緒にチラシを配ってくれた子どもの姿や、出会ったお母さんたちの「こんなサービスが欲しかった」という声でした。周囲にヒアリングすると他のお母さんたちも同じように子どもの制服で悩んでいることが分かったんです。そこで、「もし半年、一年やってみてうまくいかなくても、やり直しはできる」と自分を奮い立たせて頑張りました。

お母さんであるための独自の営業方針でお店を運営

馬場:私は起業前から、お母さんがお母さんであるために必要なのは、お金ではなく子どもと過ごす時間だと思っていました。そこで起業当初から営業時間を短くして、無理に店を営業しないようにしてきました。

営業時間を短くして家族の時間や学校行事を優先する

馬場:起業してから今まで、高松店の営業時間は月水金土の10時~15時を原則としています。開店した当時は、他の社長さんに「そんな感じでやっていけるのか」と心配されましたね。
しかし、私は起業する前から「お店を始めても、子どもたちが帰ってきたときに『おかえり』と言えるようにしよう」と考えていたので、お店の営業時間を増やして売上を伸ばすことよりも子どもたちといる時間や学校の行事を優先しました。

誰かが無理をしてまで営業しない

馬場:さくらやで働くスタッフは子育て中のお母さんでしたので、子どもが病気になれば休みます。そこで、もしスタッフ全員が出勤できなくなった場合は、お店を無理に営業しないことにしました。継続するポイントは無理をしないことだと思うからです。

このように普段から無理のない範囲で営業していると、臨時休業した後の定休日に「臨時で営業します」と言ってくれる主体的なお母さんスタッフも出てきました。

3.現在のさくらや:貧困解決から環境問題まで取り組む

自身の経験から学生服のリユース事業を始められた馬場さん。事業が拡大していく中で地域のコミュニティーづくりも重視してきたそうです。そして今後は、その活動範囲を環境問題へと広げるとのこと。馬場さんに、現在のさくらやの経営についてお話していただきました。

学生服をツールにママコミュニティーを作る

馬場:さくらやは学生服屋ですが、学生服をツールとしてお母さんたちが情報交換する場所にもなりました。お母さんたちがさくらやに集まる背景には、行政の女性活躍推進によって働く人が増え、ママコミュニティーが希薄化していることが関係しています。

ママコミュニティーではネットでは調べられないリアルな情報が得られます。そこで、さくらやは朝から営業終了までお母さんたちが話をし、必要な情報を交換できるようにしています。

地域を巻き込んで「学生服屋」を超えた活動を行う

馬場:事業が拡大していくにつれて買い取る制服の量も増えていったため、現在はお母さんたちだけでなく、さまざまな地域の人と協力してさくらやを運営しています。

例えば、地域のおばあちゃんには学生服の刺繍取りの仕事をお願いし、障がい者には洗濯の作業を担当してもらっています。ビジネスとして地域に協力をお願いすることで、Win-Winの関係を作り出すことができています。

また、お母さんたちの声を参考に、制服とは全く関係のない活動も行っています。子供たちが夏休みの宿題をする場所を作ったり、料理や裁縫の教室を開いたり。新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言で学校が休みになったときは、店にあった本を外に並べて、子どもたちがいつでも本を借りられるようにしました。

処分されていた制服で環境問題にも取り組む

馬場:さくらやはこれから、学生服の生地を活用して環境問題の解決にも挑戦します。学生服はデザインや生地が変わると使えなくなるため、これまで約8割の制服服はリユースできず処分するしかありませんでした。この問題を解決するために、企業と提携して学生服からバッグやハンカチなど新しいものに作り変える事業を始めることにしました。

4.参加者からの質問

シングルマザーとして経済的に苦しい生活を強いられながらも起業を決意し、今では全国に60店舗を構えるほどビジネスが拡大した馬場さん。起業を志す参加者からの質問に、丁寧に答えてくださいました。

多くの店舗を運営する中で工夫していることは?

(参加者)パートナー店が全国に60店舗もあるということですが、どのような点を意識して運営していますか?

縦の関係ではなく横の関係で自分をサポートしてくれる人を育てながら運営している

馬場:私は縦の関係である雇用が苦手です。さくらや60店舗の運営は子育て中のお母さんや女性たちが一人でやっています。しかし、私の右腕となってさくらやをレベルアップしていける人材も必要です。そこで、横の関係にあるパートナー店の中からサスティナブルリーダーを選出して、私の代わりに研修を行ってくれる人を育てています。

自分の信念を貫けたのはなぜ?

(参加者)ビジネスモデルや営業時間について周りから反対されたとのことですが、それでも自分の信念を貫くことができたのはなぜですか?

経営に関する本を読んで自分の世界観を持っていたから

馬場:私にとって経営の師匠は、松下幸之助やアンドリュー・カーネギーなどの本でした。本を読んで経営に対する自分の世界観が固まったので、誰に何を言われても揺らぎませんでした。起業するときに自分の世界観を持っておくことは大事だと思います。

5.まとめ:自分が今持っている資源を活用する

最後に、馬場さんから起業を志す方に向けてメッセージをいただきました。

馬場:自分の周りにある資源や力を活用すれば、お金をかけなくてもアイデアを形にすることができます。さくらやの場合は、お母さんたちのパワーによってコミュニティーがつくられ、地域の協力によって事業が拡大しました。

また、お母さんの目線があったからこそ、このビジネスに気づけました。お母さんたちには、物事を効率よく進めたり、抜け道を探したりする力があります。その力が、最初は小さくてもいずれ大きな変化をもたらすと私は思います。

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