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マル経融資を利用した事業者の声

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地域密着の自動車整備工場に新しい風を吹き込む3代目。家族の思いと整備士仲間の応援、商工会の支援を力に、新店舗建設という大きな決断へ

経営指導員とともに不安を乗り越え、夢に向かって前進。
マル経融資を活用し、着実に事業基盤を固めながら、今後も地域に貢献し続ける。

県北唯一の女性整備士として家業を継いだ3代目の牧山裕子さん(右)と、新店舗の建設を支援する真庭商工会の杉山さん(左)。

事業所名:牧山モータース
代 表 者:牧山裕子
所 在 地:岡山県真庭市上水田3007
創 業:1947年(昭和22年)
業 種:自動車整備業
事業内容:3代続く自動車販売店。各種自動車の販売・修理・車検をはじめ、バイクや自転車の整備にも対応。県北で唯一の女性整備士が代表を務め、お客様の「困った」に寄り添う地域密着型のサービスを展開している。

女性整備士の先駆けとして、女性ならではの視点で地域に貢献

真庭の地に根ざす牧山モータースは、現在は3代目となる牧山裕子さんが代表を務めており、1947年1月の創業以来、長年にわたって地域の生活の足を支えてきました。近年は後継者不足で廃業する同業者が増える中、各種自動車の販売と修理を中心に、地域のニーズに応えるべくバイクや自転車の整備も幅広く手がけています。牧山さんは数少ない女性整備士で、整備士を目指したのは中学3年生のころだったといいます。

「将来のことを考えたときに、家業を継いで整備の道に進もうと思いました。たとえば、結婚したあと、整備をすべて夫に任せてしまっては、自分の家のことなのに私は何もわからないままになってしまいます。それは嫌だなと思ったんです」

整備の仕事は力仕事も多く、女性のなり手が少ないのが現実です。このような環境の中で、体が慣れるまでには約1年かかったそうです。「夏は汗で肌がかぶれ、冬はしもやけで、人前で手を見せるのが恥ずかしいぐらいでした」と当時の苦労を語る牧山さん。それでも諦めることなく技術を磨き続け、地域から信頼される整備士として成長してきました。牧山モータースが地域で支持される理由は、女性ならではの細やかな気配りにあります。

「女性の視点から『車のことがわからない』という気持ちがよく理解できるので、 難しい内容もできるだけわかりやすく伝えることを心がけています。ただ車を販売したり、整備するのではなく、お客様の暮らしをより豊かにするお手伝いをしているんだという気持ちで、一台一台に向き合っています」

牧山さんの言葉からは、車を通じて地域の生活に寄り添う温かな姿勢が伝わってきます。

岡山県真庭市南部に位置する牧山モータース。70年以上にわたって地域密着型のサービスを提供している。

事業承継補助金をきっかけに、父から事業を引き継ぐ

2019年、牧山さんは父から事業を承継し、牧山モータースの3代目となりました。事業承継のきっかけは、事業承継補助金という制度の存在でした。当時、自社で車検を行える指定工場を持つことを目指していた牧山さんは、その資金面での支援を求めて真庭商工会に相談したところ、事業承継補助金の話が出てきたのです。ただし、この補助金を活用するには、世代交代をすることが条件となっていました。
「当時は、指定工場を持つために事業承継補助金を申請したのですが、もし補助金に代替わりをしないといけないという条件がなければ、代替わりを先延ばしてしまったと思っています」

指定工場として自社で車検を行えるようになるまでは、牧山さんが車を検査場に持ち込み、検査してもらう必要がありました。牧山さんが指定工場を目指したのは、お客様の利便性の向上に加えて、経営の安定を図るためでした。

「売上を考えたときに、車は常に売れるものではありませんが、整備は一度車を買っていただいたら定期的にご依頼いただけます。しかし、指定工場になると業務量が増えるので、仕事が回らなくなるのではないかという不安もありましたね」

そんな迷いがある中で、事業承継補助金という資金面での後押しを得たことが、覚悟を決めるきっかけになったといいます。周りの協力も得ながら指定工場の要件をクリアし、事業基盤を固めることができました。真庭商工会との信頼関係は、先代から受け継がれ、さらに深まっていくことになります。

店舗内には緑が配置され、明るい雰囲気が漂っている。「新店舗完成後は、現在の店舗を子どもたちやご年配の方が気軽に立ち寄れる憩いの場にしたい」と牧山さんは語る。

約1年にわたる慎重な検討の末、マル経融資で踏み出した新たな一歩

事業承継と同時に取得した指定工場は、現在の店舗から離れた場所にあり、従業員が行ったり来たりする非効率な状況が続いていました。この状況を改善し、従業員が働きやすい環境を作りたいという思いが、新店舗建設の原動力となっていきます。

「このままでは、従業員が働きやすい環境が実現できないかもしれないと思ったんです。整備士になりたいという人も減っていて、魅力のある会社づくりをしないと新しい方が入ってきません。その面からも、新店舗を建てたいと考えていました」

経営について相談があれば、迷わずに商工会に相談していたという牧山さんは、資金調達について真庭商工会の杉山さんに相談を持ちかけ、マル経融資のことを知りました。

しかし、堅実な経営を心がけてきた牧山さんにとって、高額な借入は大きな不安材料でした。そこで、真庭商工会の杉山さんと話をしていく中で、一緒に決算書や試算表を確認しながら、マル経融資を受けた場合の返済計画を丁寧に検討していきました。

「返済は可能との見立てが立ったとき、杉山さんから『お金は大切です。高い買い物だからこそ、慎重に進めましょう。不安がなくなって、自分自身が納得できてからマル経申込書を書いてください』と温かい助言をいただいたんです。その言葉がすごく心に響きましたね。そこから、新店舗の計画を練り上げていきました」

約1年にわたる慎重な検討を経て、最後に背中を押してくれたのは家族の言葉だったそうです。

「長男が『4代目として牧山モータースを継ぎたい』と言ってくれたことが、大きな後押しになりましたね。家族の思いと商工会の支援のおかげで、一歩を踏み出す勇気を得ることができました」

従業員が働きやすい環境づくりと地域への貢献、そして次世代への承継という牧山モータースの未来を見据えた大切な投資にあたって、マル経融資の活用を決断したのです。

堅実な経営を続けてきた牧山さんにとって、高額な借入は不安材料であったが、杉山さんとの話し合いや長男の言葉が大きな後押しとなり、決断に至ったという。

しっかり稼いでしっかり還元、従業員も地域も豊かにする経営を目指す

新店舗の建設は、地鎮祭を迎える段階まで進んでいます。事業承継時に建てた指定工場と新店舗が一体化することで、従業員の業務効率が高まり、お客様の利便性も大きく向上する予定です。

「無担保で融資していただけるのが、経営の経験が浅い私にはありがたかったです。土地を担保に入れないといけないのではないか、といった心理的なハードルが高かったんです。何より、自分がやりたいと思っていたことに向かって進む力をいただけたことに、とても感謝しています」

整備士は人の命を乗せる車を扱う、責任の大きい仕事です。にもかかわらず、給料面では恵まれていないのが現実で、せっかく資格を取得しても業界を離れていく方が大勢いらっしゃるそうです。牧山さんは新店舗の建設を足がかりに、そうした現状を変えていきたいと強く感じています。

「私はしっかりと稼いで、その分しっかりと従業員に還元していきたいと思っています。お給料をたくさんもらえれば、生活そのものが豊かになりますし、ご家族も幸せになります。そして、その幸せは友人や地域全体にも広がっていくはずです。そんな幸せの連鎖が作れたら嬉しいですね」

マル経融資の活用によって新店舗が完成した暁には、現在の店舗を地域のコミュニティスペースとして活用する構想を持っているそうです。子どもたちが集まり、ご年配の方も気軽に立ち寄れる、そんな憩いの場にしたいと語る牧山さん。 その言葉には、牧山モータースの発展を、地域全体の発展につなげていきたいという思いが込められていました。

「稼ぎを従業員にもしっかりと還元して幸せの連鎖を作りたい」と語る牧山さん。マル経融資を活用し、その夢の実現を目指している。

【担当者コメント】

事業者の不安に寄り添い、
信頼関係を築きながら新たな挑戦を後押しする

真庭商工会
杉山 直樹さん

牧山さんは、事業所を訪問するといつも作業着姿で、夏は汗をかきながら整備作業に励み、冬はしもやけで腫れた手で工具を握っておられます。女性経営者が、男性が多い整備業界で油にまみれながら真摯に仕事に取り組む姿を見て、心から「応援したい」と感じました。

私が経営指導員として心がけているのは、相談に来られる方の不安を和らげることです。悩みや要望に寄り添いながらお話をうかがい、帰るときに「来てよかった」と感じてもらえることを目指しています。ときには厳しいこともお伝えしますが、誠実に向き合い、少しずつ信頼関係を築くことで、そうした助言も受け入れていただけると考えています。マル経融資は、推薦書を書く際に経営状況を深く把握でき、今後の支援に役立つ情報を蓄積できる大変意義のある制度です。この制度を通じて、多くの事業者さんが夢を実現できるよう、これからもしっかりとサポートしていきたいと思います。

「相談に来られる方の不安を和らげ、話に来てよかったと感じてもらえることを目指しています」(杉山さん)