マル経融資を利用した事業者の声
事例一覧商工会とともに切りひらく、老舗菓子屋の輝かしい未来

事業所名:株式会社盛栄堂
代 表 者:長谷川浩司
所 在 地:千葉県南房総市安馬谷
創 業:1914年(大正3年)
業 種:菓子製造業
事業内容:南房総の銘菓として親しまれている「さざえ最中」や「クジラまんじゅう」を取扱う和菓子店
110年の伝統を持つ和菓子店が
移転し、新たな挑戦へ。
国道128号線沿いに建つ、五角形の店舗が人目を惹く盛栄堂は、大正3年創業、110年以上の歴史を持つ老舗和菓子店です。初代は「これからは食の時代」という先見の明を持ち、神奈川県での修行を経て地元の南房総で和菓子店を開業しました。二代目(現代表の祖父)がお店としての基盤を固め、三代目(現代表の父)の時代に南房総のご当地銘菓として「さざえ最中」が考案されました。そして現在の四代目である浩司さんがこの地に店舗を移転し、法人化に至ることとなります。
「さざえ最中」は浩司さんの代で餡をリニューアル。三代目から受け継いだ味に浩司さんの修行のこだわりが加わった珠玉の餡です。盛栄堂の看板商品として、今では南房総を代表するお菓子のひとつに成長しました。また、地元で有名なくじらをモチーフにした「くじらまんじゅう」も人気を博しています。


商工会の親身なサポートが
事業承継の大きな支えに。
浩司さんは先代からの事業承継の折に商工会のサポートを得て、法人化を実現しました。それ以来、自身も青年部の活動をしながら商工会とは親しい関係を築いてきました。その時のことを、浩司さんはこう振り返ります。
「先代から事業を引き継いだ私にとって、気軽に相談できるのは普段から付き合いがあった商工会しかありませんでした。ですが、右も左もわからない私のことを気にしていただき、経営から補助金のことまで、なんでも相談に乗ってくれたんです。まるで、お釈迦様が救いのために地獄に垂らしてくれた『蜘蛛の糸』のようでしたね」
三代目までの盛栄堂は卸売中心の経営でしたが、浩司さんは価格競争や自由な商品開発の難しさを感じ、小売業をメインとした業態への移行を決意します。しかし移行には、駐車場の不足や店舗の老朽化など、課題が山積していました。そこで浩司さんは、店の将来を見据えて移転を決意し、商工会に相談しました。
南房総市朝夷商工会の経営指導員である芝口さんは、前任者から引き継いで移転計画の相談に乗り、銀行への融資申請の経営計画書づくりや、補助金申請など、移転に係る計画策定や資金調達に係る手続きを全面的にサポートしました。
特に浩司さんの印象に残っているのは、新店舗の設計に関する提案です。現在の盛栄堂の目印ともいえる五角形のユニークな建物は、道路からの見え方なども考慮した設計でしたが、浩司さんは当初、この形にすることに迷いがあったと言います。しかし芝口さんの後押しもあり、五角形の店舗建設に踏み切りました。今ではそのユニークな外観が話題となり、お客様からも好評です。

マル経融資の活用が
企業としての飛躍につながった。
移転後、浩司さんは精力的に、労働環境を改善するための具体的な施策に取り組みました。菓子製造機械の導入や、菓子作りで朝の早い従業員の休憩室を整備するなど、業務の機械化や福利厚生面の向上をめざし、浩司さんは芝口さんに相談して商工会の「マル経融資」を活用しました。
マル経融資は、経営者の希望に迅速に対応し、経営指導員による親身なサポートとともに、スムーズな経営改善を実現させます。浩司さんによれば、中小企業の経営者にとって、思い立った時に迅速に動けることは非常に大切だといいます。その点でマル経融資の素早い資金調達は何よりも助けになったとのこと。たとえば、従業員の休憩室の整備ひとつとっても、従業員が出勤する日から逆算したスケジュールでの施工が必要です。そうした希望にも応えることができるマル経融資のスピード感と柔軟さは本当にありがたかったと浩司さんは語ります。
業務を機械化すると、身体の小さな女性でも力を使わず作業できるうえに、商品の品質のばらつきもなくなります。生産性が上がったことにより、従業員の負担も軽減され、社内の満足度も向上しました。しかし、機械化のメリットは単なる省力化だけに留まりません。機械化できるものを機械化することで、人にしかできない繊細な手作業に、より多くの時間を確保することができたといいます。新商品の開発にかける時間もでき、積極的に賞に挑戦するようにもなったそうです。その結果、2022年には優良経営食料品小売店等表彰事業で「農林水産省大臣官房長賞」を受賞し、同年の千葉のちから「中小企業・小規模企業表彰」も受賞しました。
また、浩司さんは、機械化で生まれた時間を使うことで、今までやりたくてもできなかった地域貢献活動にも取り組めるようになりました。「小さい中小企業の経営者は慢性的に時間が足りないので、時間をつくれたことにより、新たなチャレンジがしやすくなったと思います」と浩司さんは語ります。現在は、地元の学校の生徒たちに和菓子を教えるなどの活動をし、菓子作りを中心とした地域との交流で楽しい刺激を受けているそうです。
「自身が経営者となり、初めて融資を受ける時は不安でしたが、非常に透明でわかりやすいことが安心材料になりました。また、歴代の担当者がみなさん自分ごとのように親身に対応してくれたことが大きな心の支えになりました。マル経融資は私のように事業承継した二代目、三代目の経営者が、事業承継後に新たな挑戦をしようという時に、ぜひ活用してほしい制度です」と浩司さんは熱く語っていました。
事業拡大で従業員が増えるに従って、社会保険や雇用保険などの面も見直しが必要です。会社の成長に伴って経営課題も多岐にわたる中、商工会の芝口さんは浩司さんを支えつづけています。

経営者としても大きく成長、
今後は地域一番店をめざす!
浩司さんの今後の目標は、店舗を3軒に増やして工場を大きくし、自らは経営に専念して次の世代に事業を承継することです。そのためにも、更なる知名度向上をめざし、最終的には、「南房総といえば盛栄堂」と言われるような、“地域一番の店”を目標としているそうです。
店舗の移転という経験は、浩司さんを経営者として大きく成長させました。環境が変わり、経営者として求められるものも、より多くなりました。自ら率先して和菓子の魅力を広め、地域貢献や社会貢献でも存在感を見せる浩司さんにとって、商工会はあらゆる相談に乗ってくれる頼もしいパートナーだったようです。地元の経営者を応援する商工会の親身なサポートを積極的に活用することで、新たなチャレンジの可能性が広がっていくことでしょう。

【担当者コメント】
経営相談だけではない、
ブランド構築への貢献に誇りと喜びを感じる。
南房総市朝夷商工会
芝口 拓也さん
盛栄堂さんとの出会いは、私にとって忘れられない経験です。私が赴任してきた当初は、高齢のお父様(三代目)が経営されていましたが、浩司さんが家業を継ぐことになり、それ以来、二人三脚で経営改善に取り組んできました。当時、浩司さんは、高い技術をもつ和菓子職人でありましたが、経営については初心者でした。商工会として、経営計画の作成支援や補助金の活用、そしてマル経融資の提案などを行いました。
浩司さんはこちらのご提案に真摯に耳を傾けてくださり、今では非常に頼もしい経営者になられています。また、浩司さんは労働環境の改善への意識が高く、中小企業ではなかなか実現が難しいことにしっかり取り組んでいらっしゃるという印象を受けています。経営や金融以外でも、商品のブランド化や賞の受賞につながるサポートができたことは、私自身としても嬉しく、大変有意義な経験でした。私が普段、事業者の方とのやり取りで心がけているのは、信頼関係の構築です。日頃からこまめに連絡を取り、事業の状況だけでなく、プライベートな話も交えながら、何でも相談しやすい雰囲気づくりを大切にしています。
