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マル経融資を利用した事業者の声

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店舗移転・拡大、事業承継から新事業進出まで。大きなターニングポイントに商工会議所の経営支援アリ!

創業から20年以上、真面目に、直向きに、商売を続ける名オーナー。
時流とチャンスを逃さず、着実に進化を続ける。

創業期から事業承継まで、二人三脚で歩んできた池田さん(右)と神戸商工会議所の若宮さん

事業所名:萬葉庵
代 表 者:池田 了
所 在 地:兵庫県神戸市中央区
創 業:2001年(平成13年)
業 種:飲食業
事業内容:名物料理「白おでん」をウリにした居酒屋で創業。コロナ禍を契機に純喫茶店を事業承継。自家焙煎コーヒー豆のオンライン販売を展開するなど、新事業にもチャレンジを続けている。

店舗移転・拡大時も、事業承継時も、心強かった資金面でのサポート。

神戸の中華街「南京町」へと向かう観光客でひしめくJR・阪神元町駅東口。そこから元町北通りを右手に曲がった先にある居酒屋が、池田さんのお店です。新旧多くの商店が立ち並ぶ中、温かみのある白い看板には「地酒と鮮魚と神戸の白いおでん 萬葉庵」の文字が目に入る。2001年の創業から、商工会議所と共に歩んできた事業所です。

池田さんが商工会議所へ相談したきっかけは、知り合いの税理士に、起業の相談をした際に勧められたことでした。

「初めは京都で料理人の修行をしていました。当時から、『30歳を迎える頃には自分の店を持ちたい』というイメージがあったので、地元の神戸で店を持つ計画を練っていました。あの頃は、まだ借り入れや資金調達の知識があまりなかったので、商工会議所のサポートは本当にありがたかったです」

商工会議所との出会いから約20年。萬葉庵の歴史とともに、経営相談、広報支援、マル経融資による運転資金及び設備資金の調達、そして、補助金の申請サポートと、商工会議所は伴走支援に努めてきました。大きく躍進したのは2012年、現在の店舗へ移転した時です。

「最初の店舗はデパートから近く、働く人々が訪れる店として一定の集客はありましたが、20席程度の本当に小さなお店でした。場所柄、団体での予約を希望されるお客様も多いのですが、そもそも席数が足りないのでお断りせざるをえません。そういった機会損失を惜しく感じていたのが、移転の理由です」

マル経融資の活用により、店舗移転・拡大にかかる費用1,000万円を確保し、現在の3階建ての店舗へ。席数は30人が入るフロアを含め、最大50席。池田さんは厨房に専念し、フロアはアルバイトが担当する体制となりました。神戸商工会議所の若宮さんは当時をこう振り返ります。

「まだSNSが広がる前であり、個人ブログやぐるなびといったグルメサイトが主流な時代でした。そこで池田さんは自ら率先して情報を掲載したり、写真映りを意識した、いわゆる『映える』メニュー作りに取り組まれていました。熱心な池田さんに寄り添い、アイデア提供や写真撮影の専門家を派遣するなど、サポートさせていただきました」

そのような取り組みを続ける中、看板メニューである濃厚な白みそ仕立ての「白おでん」は、瞬く間に広く知られるようになりました。もともとはエリア誌などに掲載して知名度を上げていく予定でしたが、当初の想定になかったテレビ取材を受けられ、顧客層も広がるなど、店舗移転後、早々に経営を軌道に乗せることができたとのことです。

「おかげさまで、今では忘年会の予約でお祭り騒ぎになっていますよ」
と、笑いを交えて話す池田さん。萬葉庵は、すっかり元町の定番となりました。

移転前の「BAR 白おでん」の看板。席数も少なく、商機を逃していたことから、商工会議所の支援を仰ぎ、現在の店舗に移転した。
「商工会議所のサポートがあったからこそ、大きな転換期を乗り越えられました」(池田さん)

コロナ禍にできた時間で挑戦!
事業承継も、補助金&マル経融資の活用でスムーズに。

移転からおよそ8年。世界的な危機をもたらした新型コロナウィルスによる、外出自粛の風潮が、飲食業界を直撃します。

池田さんは当時をこう振り返ります。
「社会の流れが『人が集まるのも、対面での食事もアウト』となり、私としてはお店も自分も否定されたように感じました。ですが、『固定費をできるだけかけない』、『無駄な経費を出さない』といった経営方針が功を奏し、ダメージ自体は最小限に抑えることができました」

しかし、客足も引き、時間を持て余すほどの状況が続きました。その頃、池田さんの手元に届いたのが、持続化補助金や事業再構築補助金の案内が入った商工会議所からの封筒でした。

「コロナ禍で売上が減ったのも理由の一つですが、居酒屋という業態自体に限界を感じている部分もありました。お客様の世代が変わるにつれ、お酒を飲む量が減っていくのを目の当たりにしていたのです。ここが新しい事業にチャレンジするタイミングだと決心しました」

若宮さんはその姿勢に驚いたといいます。
「事業者にとって大きな助けとなる補助金ですが、書類や手続きの煩雑さから申請に及び腰になることも多くあります。池田さんはご自身で率先して準備に取り組まれ、普段申請のお手伝いをしている私たちもびっくりしました」

補助金を活用し、実家の喫茶店で販売してきた自家焙煎コーヒー豆のオンライン販売を開始。そんな中、長年経営を続けてこられたお父様が亡くなられたことで、喫茶店も引き継ぐことになりました。
築年数と共に老朽化していた喫茶店を、事業承継補助金やマル経融資の活用により改装。これらは全て、ほんの2、3年の間に起こった出来事です。

若宮さんは、当時をこう振り返ります。
「居酒屋を経営しながら、事業承継した実家の喫茶店をリニューアル。さらにネットでの販売体制の構築など、本当に大変だったと思います。コロナ禍という未曽有の事態の中、持続化補助金や事業再構築補助金、事業承継補助金、マル経融資など、主に資金面を充当する支援を行うことができたのは経営支援機関として冥利に尽きます」

こうした支援を受けながら事業承継や新事業進出を実行してきた池田さん。新たな挑戦を重ねる中で、将来への思いを次のように語ります。

「ここ数年で父の件だけでなく、自分の店も、私一人では何かあれば立ちいかなくなってしまうというのを痛感しました。オンライン販売であれば、誰かが引き継ぐ場合もスムーズだと思いました。まだ豆の焙煎は、自分や妻しか管理できませんが、こちらも自動化を進めていきたいと思っています」

事業を見事に切り盛りする池田さんの下には、副業も含め、起業の相談が持ち込まれることも多いそうです。

「やはり皆さん悩まれるのは資金繰りについてですね。気持ちはよく分かるのですが、私自身が助けになれるわけではありません。私も商工会議所の助けを得て進めてきたので、いつも『まずは商工会議所に相談に行くべきだ』と話しています。これからも商工会議所の力を借りながら、新しいことにも挑戦していきたいですね」

「コロナ禍という危機を、新たな挑戦のチャンスに変えられた池田さんの決断力に驚きました」(若宮さん)
看板メニューの白おでんと旬の料理の数々。素材の良さを活かした丁寧な仕事が光る

【担当者コメント】

約20年を、商工会議所と共に。
傾聴から積み上げる関係性と経営支援

神戸商工会議所中央支部事務長
主任経営指導員 若宮 豊さん

真摯に商売に打ち込む池田さんは、小規模企業経営者の鑑です。店を切り盛りされながら、新しい事業へのチャレンジや事業承継、さらには効率化も進めてこられたこと、本当に尊敬しています。

私たち経営指導員に求められているのは、傾聴からしっかりと信頼関係を構築することであると考えています。事業者に寄り添い、伴走支援するための土台を作ることができれば、長いお付き合いが可能となるからです。
これからも資金繰りや販路拡大支援はもちろんのこと、あらゆる相談に伴走していきたいと思います。