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マル経融資を利用した事業者の声

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「買い物弱者を救おう!」地域密着型の食料品店を開店

相次ぐ食料品店の閉鎖に高齢者の不安が高まる町
閉鎖した食料品店の後継店が決まらない中、二人の女性が立ち上がった

西山寛子さん(右)と山本照江さん(左)。西山さんは、相棒の山本さんに何かあったらすぐに相談す る

事業所名:せちばるストアー
代 表 者:西山寛子
共同経営者:山本照江
所 在 地:長崎県佐世保市
創 業:令和元年
業 種:食料品小売業
事業内容:食料品の小売店。地元農家だけでなく、家庭菜園で生産された野菜や果物、手作りのお総菜等を販売。高齢化率 45%の地域で、車を持たない高齢者を中心に、地域のニーズに応えている。

数少ない食料品店が閉店!?
高齢者が多い町に衝撃が走る

佐世保市街から車で約 30 分、三方を山に囲まれた自然豊かな世知原町。令和元年、人口約3千人のこの町に、あるニュースが広まりました。町に2つしかない食料品店の1つが閉店するというのです。このままでは地域の人々が買い物できる場所がなくなってしまいます。
近くにお店がないことの苦労を子どもの頃から知っていた佐世保市北部商工会の関東剛幸事務局長も、これは大変なことになると思いました。そこで次のオーナーが決まらないうちから、閉鎖する店の POS データを入手し、後継店のために来店客数、客単価を分析することにしました。
その店で人気の総菜づくりを担当していた山本照江さんと旧友であり、生産者として店に野菜を出荷していた西山寛子さんも世知原町の将来を心配していました。なんとかして一人暮らしのお年寄りなど、この地域の買い物弱者を救いたいと考えるようになりました。
その間にも、コンビニなどの後継店舗候補が現れましたが、採算が取れないと判断し参入を断念していきます。
「よし! それなら私たちでやろう!」
2人は地域住民のためにお店を経営しようと決意を固め、商工会の関東さんに相談に行きました。
「お2人のことは、地域活動に活発に参加されており以前より知っていました。でも商売の経験がないことから、西山さんが作成した事業計画で採算が見込めなければ、やめるようアドバイスするつもりでした。ですが、ふたを開けてみると、利益を出すためにコストを大幅にカットするなど、2人の熱い思いが込められた事業計画がありました。これと以前私が分析したデータとを照らし合わせてみると収支トントンに。その時に、意外といけるのではないか…と思いました。また、西山さんから『私は経営の経験がないから、どんどんアドバイスしてほしい』と頼っていただいたので、こちらも積極的に支援しようと決意しました

地域の人々の協力でバリアフリーなお店になった「せちばるストアー」。店内では、買い物ついでにお茶をいただきおしゃべりも楽しめる
POP を活用した、明るく買い物しやすい店内。品揃えが豊富で、常に新鮮な野菜が買えることも魅力

資金繰りが社長のストレスに
補助金とマル経で経営を支援

前身の閉店が7月 20 日。西山さんは、8月1日のオープンを目指して始動。関東さんのアドバイスを受けながら作成した事業計画書どおり、コストを半分に設定し、家賃交渉にも成功しました。突貫工事で倉庫付き店舗物件をたった3日で改装。エアコンも冷蔵庫もありませんが、仕入れた商品を並べて「せちばるストアー」を開店しました。前身の店の従業員4人を引き受け、地元の農家や家庭菜園で生産された野菜や果物を委託販売しています。山本さん手作りのお総菜も、一人暮らしの高齢者を中心に喜ばれています。
毎日お客様が来店し、計画通りの売上を記録。しかし、月末になるとまとまった支払いが重なり、資金繰りが西山さんの頭痛の種になっていました。そこで、関東さんは資金繰りを安定させるため、マル経融資の利用を提案。
「公庫から事業の継続可能性について尋ねられた際には、創業前に作成した事業計画書を用いて丁寧に説明しました。直近の売上実績がそれよりも上回っていたことが融資実行の決め手となりました」
マル経融資を受けた西山さんは、関東さんの経営指導を受けて、さまざまな施策を展開しました。専門家派遣で POP を活用してお店のレイアウトを改善。酒類販売業免許も取得し、商品のアイテムを拡充。月に2回のお客様感謝イベント、店独自の商品券など、各施策によって客単価が千円も上がり、売上も右肩上がりです。
「大忙しです。季節の素材を使ったお惣菜も、午前中には売り切れてしまいます」(山本さん)
商工会とのつながりがなかったら、このお店を開くことはできなかったでしょう。農業と商工業が連携して、みんなで支え合いながらこの土地で生きていきたいと思います」(西山さん)

前日に仕込んで、朝6時から山本さんがつくるお総菜。11 時には完売する目玉商品だ

【担当者コメント】

収支予測はトントン…でも
決算書を見るまでは心配だった

佐世保市北部商工会
関東剛幸さん

お二人の頑張る姿を見ながらも「赤字になったらどうしよう…」と内心ヒヤヒヤしていました。最初の決算で、減価償却も計上でき利益が出た時は、心からうれしかったですね。日々の業務では、どうやったら事業者様のお役に立てるかを考えています。補助金や融資のご相談に対応するだけでなく、会社全体を見て経営が向上するように知恵を絞ってサポートしています。マル経は、商工会の職員と事業者様が一緒になって経営を考えるきっかけになる。それが一番大きなメリットだと思います。

佐世保市北部商工会 関東剛幸さん