女性・若者向け 創業相談ウィーク 女性・若者向け 創業相談ウィーク

イベント実施報告

withコロナに向けて女性起業家が変えたこと、変えなかったこと。

パネルディスカッション

新型コロナウイルスの感染拡大により、新しい工夫を求められている女性起業家の方や、創業を予定していて計画の変更を余儀なくされた方も多いと思います。

そこで日本政策金融公庫は2020年10月22日、北海道女性起業家支援ネットワーク「ほくじょき.net」と共同で、新型コロナウイルスや世の中の変化と共存できるビジネスを考えることを目的としたオンラインイベントを開催しました。

イベントでは、基調講演やパネルディスカッションを通して、女性起業家や起業支援者の方々にお話を伺いました。

今回はイベント後半に行われた株式ジューヴル代表取締役の矢島幸子さんによる創業の経緯に関するスピーチと、矢島さんを含む女性起業家2名と創業支援者2名によるパネルディスカッションの様子をレポートします。
株式会社brista 代表取締役社長 高橋 瑞季さん

株式会社brista 代表取締役社長 
高橋 瑞季 さん

札幌市出身。北海道立札幌手稲高等学校卒業。大学卒業後、某大手証券会社へ就職。プライベートバンキング部に所属し、上場企業オーナー・社長などを担当。「もし私が会社を経営するとしたら」と考えたとき、自分の悩みも解決できる洋服のレンタルサービスをしたいとイメージしていた。2019年3月、株式会社brista 代表取締役社長 就任。実家のある札幌には毎年3回ほど帰省し、リフレッシュ。

株式会社ジュ―ヴル 代表取締役 矢島 幸子さん

株式会社ジュ―ヴル 代表取締役
矢島 幸子 さん

北海道医療大学を卒業後、札幌市、岩見沢市のNPO法人で障がい者の就労や生活の支援に従事してきた。2017年、岩見沢市の創業支援を受けて株式会社ジューヴルを創業。就労継続支援B型「patisserie空香」を運営。精神保健福祉士。日本商工会議所女性会連合会主催「第19回女性起業家大賞2020」のスタートアップ部門(創業5年未満)の部で優秀賞を受賞。

株式会社パソナ 官公庁事業部 諸戸 智霞さん

株式会社パソナ 官公庁事業部 
諸戸 智霞 さん

三重県出身。2005年、パソナに入社。約10年間、人材派遣部門に従事。2015年より4年間、経済産業省委託事業「女性起業家等支援ネットワーク構築事業」の全国事務局プロジェクト責任者として、全国10地域にて女性の創業を応援する支援ネットワーク構築に従事。今年度は、厚生労働省委託事業「キャリア形成サポートセンター事業」副責任者として、企業内キャリアコンサルティング制度導入や従業員のキャリア形成支援を行なっている。2級キャリアコンサルティング技能士、国家資格キャリアコンサルタント。

日本政策金融公庫 国民生活事業本部北海道創業支援センター所長 日向 康之

日本政策金融公庫 国民生活事業本部北海道創業支援センター所長
日向 康之

埼玉県出身。2006年に中小企業診断士登録。国民金融公庫(現:日本政策金融公庫)に入社後、融資審査、創業支援業務に携わる。現在は、北海道創業支援センター所長として道内の創業志望者やベンチャー企業に対して、資金面や事業計画に関するアドバイスなどを中心に業務を行っている。また、市内の創業志望者向け講座や道内で行われる創業セミナーやソーシャルビジネスセミナーなどでは資金計画や事業計画に関する講師を多数務めている。

※内容は2020年10月時点のものです。

矢島社長が創業した理由:障がい者の工賃の低さに感じた憤り

北海道・岩見沢市で障がい者福祉サービスを運営されている、株式会社ジューヴル代表取締役の矢島幸子さん。創業を志したきっかけは、「障がい者に支払われる工賃の低さ」でした。

矢島社長

創業の経緯をお話くださる矢島社長

矢島:障がい者の工賃は、全国では月16000円程度、北海道では18800円程度です。障がいがある方は工賃と障害年金を合わせて生活されていますが、この金額で一人暮らしやグループホームで暮らしていくのは現実的ではありません。障がい者が働く施設は制度改革が進んで十分なほど存在するにも関わらず、工賃は低いまま。この現実に課題を感じ、解決を目指して4年前に創業を決意しました。

障がいを負うことは他人事ではなく、明日自分や大切な人の身に起こることかもしれません。この事実をしっかり認識しながら、社会の当たり前の流れの中に存在できる福祉事業を目指して会社を運営しています。

株式会社ジューヴルの事業内容

スイーツを製造・販売する「patisserie空香」の運営と、障がい者向けのグループホームの運営を行う。「patisserie空香」は創業当初から、食品アレルギーなどの食の課題に取り組むことをテーマにスイーツ開発を行っている。開発したスイーツは、岩見沢市にある直営店だけでなく、全国の百貨店の催事でも販売されている。

Withコロナ時代の経営・創業のあり方

パネルディスカッションでは、矢島社長に加え、服のレンタル事業を行う株式会社brista代表取締役社長の高橋瑞季さん、これまで女性起業家支援のネットワーク構築に携わってこられた株式会社パソナの諸戸智霞さん、日本政策金融公庫で創業支援を行っている日向康之を迎え、主に新型コロナウイルス感染拡大と経営・創業に関するテーマで議論していただきました。

左上:高橋社長、左下:諸戸さん、右上:矢島社長、右下:日向

左上:高橋社長、左下:諸戸さん、右上:矢島社長、右下:日向

テーマ1

女性起業家はWithコロナで「従業員の出勤頻度」「広告宣伝方法」を変えた

高橋社長と矢島社長が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて変えたことは、従業員の安全を守るために出勤制限を設けたこと、そして支出を削減するために無料で使える広告宣伝ツールの活用を強化したことでした。

コロナ禍で高橋社長が実行した経営施策

・従業員の出社日を減らし、時給を上げた
・契約の見直し・交渉して経費を減らした
・無料で使える広告宣伝ツールの活用を強化した

高橋:当社には8名のパート従業員がいますが、従業員の健康面に配慮して、週1日出社に切り替えました。しかしそのままでは給与も大幅に下がりますし、暗い雰囲気の中、モチベーションも下がります。効率的に動いてもらうようお願いして時給を上げました。

また、服のレンタル事業を行う当社の場合、1つの受注が入ると必ずクリーニング代がかかるので、クリーニング店に交渉して経費を削減。さらに、無料で使える広告宣伝ツールを積極的に使って、WEB広告など費用が発生するものは減らしました。

コロナ禍で矢島社長が実行した経営施策

・利用者の施設使用時間を分散させた
・パート従業員の出勤人数・シフトを調整した
・テイクアウト商品・軽食の提供を強化した
・無料で使える広告宣伝ツールの活用を強化した
・女性起業家大賞に挑戦した

矢島:利用者が施設を使用する時間帯を午前・午後に分けたり、パート従業員の出勤人数・シフトを調整したりと、利用者の活動を維持しながら感染リスクを減らすための方針を立てました。

また、外出自粛で多くの方々が市内に留まっていたのでテイクアウト商品・軽食の提供を強化したり、経費を減らすためにSNSなど無料で使用できる広告宣伝ツールを積極的に使ったりしました。

その結果、岩見沢の直営店の売り上げだけを見ると、昨年と比較して客単価は37%増加、売り上げは38%増加しました。

加えて、百貨店の催事が中止になるなど営業活動がままならない状況でも「この時期だからこそ会社を強くできることをとにかくやってみよう」と思い、女性起業家大賞にも挑戦しました。

テーマ2

コロナ禍でも創業を考えている人・創業を支援する人ともに前に進んでいる

次に、新型コロナウイルス感染拡大が創業に与えた影響について、創業を支援する立場から日向と諸戸さんが説明しました。コロナは、創業を考えている人・創業を支援する人どちらにも一時的に影響を与えましたが、現在は創業の相談も増え、創業支援のセミナーやプログラムも再開しつつあります。

9月頃から創業の回復傾向が見られるように

日向:日本政策金融公庫が行っている創業前の融資の実績を見ると、今年の4~9月は前年と比べて7割と少ないです。しかし、9月頃からは多数のご相談をいただくようになり、みなさんが創業に対して前向きになってきたのではと思います。それは数字にも出ていて、北海道の9月だけの融資実績を見ると前年比で110%でした。

創業支援も手法を変えて再開しつつある

諸戸:コロナの影響により、私自身5月頃まで、創業支援が今世の中で必要とされているのか?と迷いがありました。しかし現在は、セミナーやコンテストなどが全国的に再開してきていて、対面でのマルシェが中止になるもオンラインでマルシェが行われるなど、手法を変えた形で、起業家や起業希望者を応援するメニューが増えているように思います。

日本公庫×ほくじょきオンラインイベント withコロナに向けて女性起業家が変えたこと、変えなかったこと。

パネルディスカッションでは各登壇者から様々な意見や情報が交わされました

テーマ3

女性起業家は会社の根本に立ち戻って経営判断を下した

続いて、高橋社長、矢島社長に、新型コロナウイルス感染拡大などの社会変化が起こる中で大切にしている判断基準を教えていただきました。2人とも「会社を存続させるために」「利用者の活動の場を守るために」と、会社の根本に立ち戻って判断されたそうです。

高橋:今回の新型コロナウイルス感染症拡大の中では「bristaという会社を存続させるために」という究極の軸で判断しました。

判断に迷うときには5名くらいに意見を聞くようにしています。人の話をきくことで自分の意見が整理できたり、自分の判断軸がかえって明確になったりすることが多いですね。

矢島:今年は百貨店の催事が中止になって売り上げがガツッとなくなり、一時は絶望的な気持ちになりました。しかし経営者の仲間と話すうち、利用者さんの活動の場、セーフティーネットの社会福祉事業を維持することからブレてはいけないと根本に立ち戻ることができ、感染を防ぎつつ施設の閉鎖や閉業を避けることを基準に判断するようになりました。

テーマ4

事業を続けられる女性起業家は「挑戦する」「熱い思いがある」「つながりをつくることができる」

次に、事業を継続できる女性起業家の特徴について諸戸さんと日向に意見を聞きました。2人は「チャンスに挑戦する人」「熱い思いが伝わる人」「多くの人とのつながりをつくることができる人」と話します。

諸戸チャンスだと思ったら素直に挑戦する方が多いように思います。私自身も、話を聞いている中で、なぜその事業をしたいのか?どんな人のどんなお困りごと、社会の課題を解決したい等の創業に対する熱い思いが伝わってくる方とその事業を心から応援したくなります。

日向:女性起業家の中でも、多くの人とのつながりをつくることができる人は事業を続けられていると思います。

テーマ5

女性起業家向けコミュニティーは新しい場所づくりのために存在する

女性で創業を考えている方の中には、「女性起業家」とくくられることに違和感を覚えて、女性起業家コミュニティーを避けている方も多くいます。この違和感や、女性起業家向けのコミュニティーがある意義について、矢島社長、高橋社長、諸戸さんに意見を伺いました。これまでコミュニティー作りに尽力されてきた諸戸さんは「女性起業家コミュニティーは新しい場所をつくるためにある」と話します。

矢島:私は女性起業家向けのコミュニティーに参加していません。女性らしい創業とか、女性らしさを活かした創業とか聞くと、「女性らしさって何かな」といろいろ考えて、答えが出ません。私らしくやわらかく経営を続けていけたら良いなと思っています。

高橋:女性起業家向けのコミュニティーやプログラムは、女性向けだからこそ女性の現状について詳しい情報が聞ける、支援体制が充実しているといったメリットがあると思います。

諸戸:従来のセミナーの参加者は大体男性。セミナーが行われる時間も夜が多く、運営者や先輩起業家も男性がほとんどだったように思います。
女性起業家向けコミュニティーは、男性と女性で区別するためではなく、女性起業家を応援したい、事業支援したい、女性の起業支援ニーズをサポートしたい支援機関や企業と、応援やサポートを希望する、これから起業したい、あるいは起業している女性が集まれる場所を新しく増やすために作られていると思います。

テーマ6

【創業を目指している人へメッセージ】アイデア・情報・人とのつながりを大切に

最後に、パネルディスカッションに参加した4名から、創業を目指している方へメッセージをいただきました。

高橋:胸に秘めているビジネスは、実現すると多くの人が喜ぶ良いものかもしれません。アイデアがふわっと出てきたときを逃さず、取り組んでいただきたいです。

矢島:経営者って孤独だよと言われますが、孤独は良くありません。経営に関する専門家はもちろん、日常的なことを相談できる仲間を見つけることが大事だと思います。

諸戸:新型コロナウイルスでオンラインの活用が活発になった今こそ情報を取りにいきましょう。自分の地域では出会えていない人に出会えたり、お金をかけずに情報が得られたりします。

日向:力になってくれる人を見つけて事業を進めていくことをおすすめします。いろいろな場所で自分がやっていることを話すと、支援してくれる人が見つかります。

パネルディスカッション終了後は、参加者それぞれが女性起業家や創業支援者に悩みを相談できる個別相談会や、出会いの場として参加者同士の交流会が実施されました。

新型コロナウイルスの感染拡大により、一時は創業・創業支援ともに勢いが落ち込みました。しかし、現在は創業支援が徐々に回復し、創業を考えている人も行動を起こし始めています。

コロナ禍であっても、熱い思いがあるならば創業を諦めることはありません。日本政策金融公庫をはじめ、創業を支援する場をうまく活用して、事業を実現させましょう。

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