ソーシャルビジネスの始め方と続け方
子どもも親も、地域も幸せに!ソーシャルビジネスが描くより良い未来
公開日:2025.12.19
子どもも親も、地域も幸せに!ソーシャルビジネスが描くより良い未来
公開日:2025.12.19

株式会社ケルン 代表取締役 壷井 豪(つぼい ごう)様
所在地:兵庫県神戸市
1980年神戸市生まれ。パン職人として国内外で研鑽を積み、2013年 株式会社ケルン3代目代表取締役に就任。「知育・食育・教育」を軸に講演や事業承継者の支援も行う。2021年にフードロス削減と社会的支援を両立する「ツナグパン」を開始し「神戸市SDGs奨励賞」「アトツギアワードグランプリ」受賞。「シェイク!未来つなぐ会議」発起人としても活動中。
WEBサイト(https://kobe-koln.jp/)

株式会社あすいく 代表取締役 幸脇 啓子(さいのわき けいこ)様
所在地:東京都港区
NHK、文藝春秋などでの勤務を経て、自身の出産・育児をきっかけに起業。「ママが笑えば、子どもも笑う」をビジョンに、一時保育の検索・予約サービスの「あすいく」を2019年にリリース。その後、託児に対する罪悪感という新たな課題を発見し、JR東日本、西武鉄道などさまざまな企業と連携して、託児の間に子どもたちがワクワクするようなホンモノ体験ができる「体験型保育」を2023年にスタート。3児の母。
WEBサイト(https://ad.asuiku.net/)
私は神戸の東灘区に本社を構えているケルンというパン屋さんの代表を務めております。そこで行っているのが、フードロス削減と社会的弱者支援を両立させる「ツナグパン」という経済循環型サービスの仕組みです。
「ツナグパン」とは、捨てるはずであったパン10~20個を詰め合わせ、福袋のようにして販売する商品です。価格はパンの定価の65%で購入いただけます。それを買っていただいたお客様に100エシカルコインを1枚プレゼントするというものです。
そのコインは、次回からケルン全店での買い物に利用いただける金券となっています。「ツナグパン」の仕組みにより、パンの廃棄率は11%から2%まで減りました。
このエシカルコインの循環率は8割弱ほどあります。一般的なデジタルクーポンの循環率を有識者の方に聞いたところ13%くらいとのことなので、循環率は高い水準だと思います。
実は他にも目的がありまして、レジでお渡ししたエシカルコインを月末に集計しているのですが、その同額のエシカルコインを、私たちが支援している児童養護施設や母子生活支援施設、ファミリーホームなどの福祉施設へ送っています。
実際に毎日子供たちがエシカルコインを持って来店されて、パンを購入いただいています。
その結果、エシカルコインは、一般の方もパン屋さんも施設の利用者の方々もみんなが関係して、享受している仕組みが出来上がっています。
私たちは「社会のすべてを、子どもたちのワクワクに!」をミッションに掲げていて、子供をちょっとだけ預かってもらいたいというときの一時保育の仕組みを作っています。
一時保育のマッチングのプラットフォームと、一時保育のなかでウェルビーイングを生む体験型保育という、大きく分けるとその二つの事業を行っています。
私にも子供が3人いまして、一番上の子が9歳になります。一番上の子を出産した際、それまで私は働いていたのですが、産休・育休を取得し、子供と24時間一緒に生活するとなったとき、もちろん子供はかわいいのですが、その小さい命を育てるプレッシャーを強く感じていました。夜ご飯を準備しようとしても、ずっと泣いてしまい準備できなかったり、寝かしつけでずっと抱っこしていて、気づいたら朝の6時~7時だったり、そんな生活がすごくハードだなと感じた経験がありました。
その生活を何とかしたい、でも小さい赤ちゃんがいると何もできない、それを見かねた母親が、「子供を見てあげるから外へ行っていいよ」と声を掛けてくれたことがありました。それで私は駅前のカフェへ一人で行ったのですが、育児から離れて、自分の時間を自由に楽しむことでリフレッシュできたことに、すごく開放感を感じました。その日は子供が寝なくても、心のゆとりをもち育児をすることができました。「カフェで一杯のコーヒーを飲むというその時間のおかげで、こんなにも変わるんだ!」と思った原体験があり、親も一人の時間をちゃんと取ってハッピーになる時間を作れば、それは子供に還元されるのでは?と思い、まずはLINEから一時保育先がすぐに見つかるマッチングのプラットフォームを作りました。
フードバンクというものがありますが、必要な場所に必要な量を届け、持続させるというのは非常に難しいものです。人数に対して寄贈していただくモノの数が合っていない場合があり、二次廃棄に繋がってしまうのです。
二次廃棄が発生する理由はさまざまですが、賞味期限が極端に近い商品が届いてしまう、施設の保存環境が不十分(冷蔵・冷凍ができない)、などがあります。無償で送られてきた食品とはいえ、それが捨てられるという光景を、子供たちが見て育つことになるわけです。それは人格形成に悪影響を及ぼしてしまいます。
ですが、私たちの「ツナグパン」の場合は、お腹がすいたら、子供たちが自分の意思でパンを買いに来ることができます。これが非常に大事な仕組みだと思っています。
そこで子供たちは、一生懸命働いているパン職人や、レジで業務をしている人を見ることもできる…そんな姿を見て、このパンはたくさんの人たちの努力で手に入っているという感謝の気持ちが芽生えていく。これがチャリティーや寄付と大きく違う部分かなと思います。
すごく大事なのは、子供たちも一般のお客さんも同じエシカルコインを使うので、レジで、区別や差別をされないということです。
例えば、子供食堂を利用する方の中には、社会的な目を気にしてしまう場合もあるのですが、この「ツナグパン」はそれを解決できている仕組みと言えます。
エシカルコインは100・500・1000の3種類あって、100エシカルコインは一般の方にお渡ししているのですが、500・1000は施設の子供たちだけに送っています。このように種類を分けることで、いつどこで施設の方が買ったのかを管理できるようにもなっています。これが非常に大事なのですが、長期間利用が滞っている施設があればトラブルが起こってないかという気づきにもなり、私たちから連絡を行ったりもしています。
行政や民間の保育園でも一時保育を行っていますが、基本的に電話と紙の世界がまだまだ残っています。飛行機やホテルもネットで取るのが当たり前な時代になっているので、その常識を持ち込みたいなと思いました。
すぐに検索して予約できて、子供の寝かしつけが終わった夜中の2時や3時でも明日預けたい、週末預けたい、といった予約に対応できる、そんな仕組みをつくりたい…と思いこのサービスを始めました。
最初は会員数がすごく増えたのですが、全然使われなくて、いわゆるアクティブ率がとても低いことが分かりました。その原因を探ってみると、どうやら託児には親側の罪悪感がありそうだなということが分かりました。200人ぐらいの方にアンケートした結果、母親の77%の方から、子供を預けることは「よくない」と回答がありました。その結果から、一時保育に子供たちが体験できる要素を作る、リアルキッザニアみたいなことをやろうと考えました。
例えば、保育士さんと組んで、子供たちに電鉄会社の電車の見学をしてもらうというプログラムがあります。そのプログラムに子供たちを預け、子供たちが楽しかったと帰ってきてくれることで、親の罪悪感が笑顔に変わるのです。実際にプログラム体験後のアンケートでは、「罪悪感を感じない」という回答が8割にものぼっていて、6割以上の方がリピートをされるという結果に繋がりました。
この取り組みによって、子供たちがケルンのファンになって、未来のお客様になって、ともに働く仲間にもなったというところですね。
実は今、施設の高校生が弊社で働くということにも繋がっているのです。
また私たちのスタッフも、パンを捨てることがほとんどなくなったので笑顔が増えたと思います。一緒に働きたいと私たちに応募してくれるスタッフも、この取り組みを知った社会貢献の気持ちの強い方が多くなりました。
私は、この仕組みを続けていくことで捨てるパンが減ったうえに、子供たちの笑顔を増やせるなんて最高だなと思っています。
この取り組みは、拡大することや急ぐことが目的ではなく、芯の太さが大事だと思っています。
まずは生まれて育ててもらったこの場所、神戸という町から救える事業こそが、本当のソーシャルビジネスではないかと考えていて今の事業を続けています。
「捨てさせないことが、心を豊かにし、人生を幸せにする」ということを合言葉に、この取り組みをこれからも続けていきます。
先ほどの子供たちと鉄道会社さんとのコラボレーションは、エンゲージメントが上がるねとか、CSR活動に繋がるねということで、企業の方にも喜んでいただいています。
私達もお客様からもお金をいただいていますし、パートナー企業様からもお金を一部いただくという形になっているので、ちゃんと事業を続けていける形にフォーカスしています。今では、LINEの会員数も15,000人に達しました。小さい子供を持つ親と子のウェルビーイングにより繋げていきたいです。
電車での体験プログラムもそうですが、子どもたちがワクワクできる魅力的なプログラムは世の中にまだまだ多く眠っていると思います。そこに私や保育士が入ることで、面白いものにして、もっと子供たちをワクワクさせて、子どもも親も笑顔にしていきたいなと思っています。
(※)本記事及び写真は、日本公庫主催イベント「ソーシャルビジネスの始め方と続け方」(2025年8月27日(水))の内容を抜粋したものです。
株式会社ボーダレス・ジャパン ボーダレスアカデミー 代表 半澤 節(はんざわ たかし)様

1990年生まれ。宮城県仙台市出身。貧困農家に雇用を創るオーガニックハーブ事業やアパレル事業の経験を経て、シリア難民に安定した仕事と居場所をつくるためトルコで起業。帰国後は社会起業家に伴走する起業家バディ・採用人事を歴任し、現在は社会起業のためのソーシャルビジネススクール「ボーダレスアカデミー」代表。