ソーシャルビジネスの基本~社会起業を成功に導くポイントと事例~
誰もがソーシャルビジネスに挑戦できる社会へ
公開日:2025.12.19
誰もがソーシャルビジネスに挑戦できる社会へ
公開日:2025.12.19

株式会社ボーダレス・ジャパン
ボーダレスアカデミー 代表
半澤 節(はんざわ たかし)様
所在地:福岡県福岡市
1990年生まれ。宮城県仙台市出身。貧困農家に雇用を創るオーガニックハーブ事業やアパレル事業の経験を経て、シリア難民に安定した仕事と居場所をつくるためトルコで起業。帰国後は社会起業家に伴走する起業家バディ・採用人事を歴任し、現在は社会起業のためのソーシャルビジネススクール「ボーダレスアカデミー」代表。
WEBサイト(https://www.borderless-japan.com/)
僕は1990年の宮城県仙台市の生まれで、大学時代にインドやフィリピンなどへ行く機会があり、その中で自分の人生をどのように使うか?と考えたときに「社会課題の解決」に自分の人生を使いたいと思い、2013年に「ボーダレス・ジャパン」へ入社しました。
僕が代表を務める「ボーダレスアカデミー」は、社会起業や社会課題解決を目指す人のための"ソーシャルビジネススクール"を行っています。これまで累計6年半行ってきて、約1,500名の方たちに「ボーダレスアカデミー」を受けていただきました。
「誰もがソーシャルビジネスに挑戦できる社会へ」ということをテーマに掲げていて、起業の支援やノウハウの提供などを、日本だけでなく世界でも展開しています。
「ボーダレス・ジャパン」は、ソーシャルビジネスしか行わない会社として2007年に創業して、今年で18年目が経過した会社です。
「ソーシャルビジネス」にはいろんな捉え方がありますが、僕らの定義としては「社会問題をビジネスという手段を使って解決する」ことを指します。
社会問題を解決するために起業される方を「社会起業家」と僕たちは呼んでいます。その社会起業家の数が増えれば増えるほど、解決される社会問題の数も増えていきます。ボーダレス・ジャパンでは、社会起業家のための会社として、ソーシャルビジネス誕生のエコシステムを作っています。起業や経営に必要な資金、ノウハウやコミュニティがそこには存在しており、単に何かを提供するだけではなく、共有し合う関係性を作り、1社ではできないような取り組みをグループ全体で行っています。
グループは今、13カ国50の会社で構成されています。
海外で言えば、発展途上国を対象に、バングラデシュやミャンマーなど、様々な国で展開しています。
具体的にどんな事業をしているかというと、アジアの最貧国の一つとして言われているバングラデシュでは、生活の糧を得るための仕事がないという方がいて、その中でも、優先的に雇用されない、特に障がいを抱えているような方たちが多くいらっしゃいます。そういう方たちを仲間に迎え入れて、その現状を打破しようと、本革を使った商品やアパレル商品などを展開する起業家もいます。
日本では、ホームレスの方々の社会的な問題であったり、環境問題や気候危機に再生エネルギー100%を使った電力の小売り事業を立ち上げたり、資源循環や教育・子育てなどに取り組んでいる方もいます。
「ボーダレス・ジャパン」には大きな特徴があります。それは、ソーシャルビジネスや社会起業をしようとするときに必要なお金を、既存の利益の「恩送り」による資金循環システムで社会起業家の誕生を支えていることです。
自己資金や融資など、資金調達にはいろいろな方法があると思うのですが、僕らの場合は、新しく社会起業をしようとする方の、創業資金・軍資金・スタンドアップなどのお金を、既存グループ会社の利益の10%を共通のプールに入れて、そこから拠出し合う「恩送りエコシステム」という仕組みを作っています。
現在は売上高が100億円程で、恩送りに使われるお金は大体1億円程となっていて、それが次の起業家の方たちの軍資金やソーシャルビジネスの支援に使われるという形になっています。
経済産業省が出した報告書によりますと、ソーシャルビジネスには3つの要件があるといわれています。
一つ目は、どんな社会の問題を解決するのかという「社会性」。二つ目は経済的な自走性を保つことの「事業性」。三つ目はこれまでなかったような発想を持って取り組まれているかの「革新性」です。
この三つ目の「革新性」をどのように捉えるかが重要な論点になると思っています。
僕の中ですごく感じるのは、解決が難しかったことに対して解決していくとなると、おのずと新しい取り組みは必要となってきます。何か突飛なことをするというよりは、様々なビジネスに取り組んでいる法人が世の中にある中で、彼らが取り組んでいるビジネスでは届かないところへどうやって挑んでいくのか?そのミッションや社会性を重要視し、社会問題を解決することに根差したビジネスとしてどう成立させていくのか、が重要だと思っています。
僕たちがソーシャルビジネスを行っていくうえで非常に重要な視点だと思っているのが、「"非効率"をも含めて社会を再構築する」ということです。
事業を継続させていくためには利益の確保が重要ですが、売上を増やすことは容易ではないため、コストカットに走ってしまうということが社会で起きていると思います。イノベーションにより様々なことが効率化や合理化され、"悪気なく"お金・手間・時間がかからない"効率的な"取り組みを優先した結果、残るのが社会問題なのではないかと思います。資本主義社会の中心にあるのがビジネスですが、"儲からない"非効率な人や状況は置いてきぼりにされ、"効率"と"非効率"の間に大きな分断が生まれてしまっているということが、いま社会が直面している状況なのだと考えています。
もし"非効率"の排除が行き過ぎた場合、それが社会問題化してしまうということがあります。だからこそ、ソーシャルビジネスに取り組むとき、あえてこの"非効率"を意図して巻き込んで新しい経済の形を作っていくことこそが、僕たちに求められているものではないかと思うのです。
「ボーダレス・ジャパン」では、「どれくらいの社会問題の解決に寄与できたのか」を「ソーシャルインパクト」として、事業の成長指標にしています。売上や利益の管理だけでなく「事業によってどれだけ社会問題が解決されたか?」を毎月測定しています。売り上げが上がっているにも関わらず、「ソーシャルインパクト」が全然伸びていないとすると、その事業の座組はおかしいと判断します。
そう判断した場合、僕らはピボットという組み替えをします。事業のリモデルです。
立ち上げの際はどうしても時間がかかることや、様々な難しい課題が挙がってくると思います。ですが、そんな状況の中でも売り上げが上がった瞬間にきちんと「ソーシャルインパクト」が創出されていれば、その事業の座組としてはうまく出来ていると言えます。
僕らがソーシャルビジネスをやり続けてきてわかってきたことは、「そもそも誰が困っているのか?それはどうして困り続けているのか?」をちゃんと考えることが重要だということです。
その原因を深く分析したとき、これまでのビジネスや活動では到達しえなかったところが見えてくると思っています。ビジネスをツールとして使って社会問題を解決しようとするのであれば、それはどこに向かうためのツールなのか?理想をきちんと順序だてて描くことが大事です。誰がどのように困り続けていて、それをどのような状態にしたいのか、そこを深く考えていくことで、初めてビジネスが手段化されていくのだと思っています。
「ボーダレス・ジャパン」では、現在50の事業があるとお話しましたが、起業して10年後に 残っているベンチャー企業の数が大体6%と言われている中で、「ボーダレス・ジャパン」の会社がなぜそれ以上残り続けているのか?そのヒントは、そんな事業の作り方にあるのではないかと思っています。
(※)本記事及び写真は、日本公庫主催イベント基調講演『ソーシャルビジネスの基本~社会起業を成功に導くポイントと事例~』(2025年8月27日(水))の内容を抜粋したものです。