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マル経融資を利用した事業者の声

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原料から製品まで一気通貫の服づくりで故郷の地域活性化に貢献したい

生地工場で衣料品製造の一連の流れを習得し、独立開業。
故郷・佐渡に自社工場をつくる夢のため、経営指導員に経営や金融の知識を学ぶ

就職する前はロックミュージシャンを目指していた山本晴邦社長。繊維業界、ふるさとの佐渡に対して熱い想いを持つ

事業所名:アルクロワークス株式会社
代 表 者:山本晴邦
所 在 地:東京都渋谷区
創 業:平成 28 年
業 種:衣料品・生地の企画・販売・卸売業
事業内容:ストリートブランドのOEM業務など、クライアントと工場をつなぐ中間製造業や卸売業を展開。
佐渡に工場を建設し、将来的には綿花栽培から衣料品製造まで一気通貫にできる事業を目指している。

繊維業界でキャリアを磨き
独立後、故郷に自社工場建設を構想

アルクロワークス株式会社は衣料品や生地の企画・販売を行う会社です。
社長の山本晴邦さんは、新潟県佐渡島出身。縫製業を営む母親の仕事を見て育ち、東京の洋裁専門学校に進学。その後丸編み生地工場に就職しました。

「勤務先の社長に、営業だけでなく、製糸や染色などの衣料製造作業も知っておいた方が良いと言われ、仕事の一連の流れを学ぶ機会をいただきました。今の自分があるのは前の勤務先のおかげです」

自分で取引先を開拓し、経験を積んでいくなかで独立を考えるようになり、社長から自分で開拓した取引先はそのまま引き継いで良いと言われ、独立開業しました。主な業務は、お客様の仕様書に対して、生地を提案し型紙を製作、縫製工場に依頼するというOEM。丁寧な仕事ぶりに加え、持ち前の営業力で事業が順調に拡大する一方で、山本社長の中に違和感が膨らんでいきます。
「現在日本ではファストファッションが台頭しており、海外の安価な労働力を背景に、高品質の服が驚くほど安い値段で売られている。これらの商品に価格で対抗するためには、人件費を含めた経費を可能な限り抑えざるを得ない。これでは将来の繊維産業を担う者がいなくなる…」
矛盾を感じていた山本社長の中に、佐渡に自社縫製工場を建て、外注に頼らないビジネスで地域に貢献したいという構想が生まれました。

山本社長は、経営や金融の知識を一から学びたいという思いもあり、まずは東京商工会議所渋谷支部を訪れました。
「最初は不安もあったのですが、商工会議所の担当者の方は快く私の話を聞いてくれ、色々な解決策をアドバイスしてくれました。その時にマル経を提案されて、正直こんな融資制度があるとは知らなかったので、感謝しています。佐渡の工場建設についても相談したところ、今の業績ではちょっと難しいので補助金を検討してみてはどうかとアドバイスをいただきました」

令和2年、商工会議所の助言を受けて山本社長は「佐渡市雇用機会拡充事業補助金」に応募し採択されました。しかし、補助金事業は精算払いのため、設備資金を一時的に賄う必要がありました。山本社長は資金の相談に、再び商工会議所を訪れました。

主な事業はストリートブランドの OEM。原材料から完成品まで一気通貫で提案できるのが強み

社長の熱い心意気に打たれ
事業計画書作成をサポート

渋谷支部で山本社長に対応したのは高山文雄さん。信用金庫に長く勤務した知見を活かして活躍するベテランの経営指導員です。
「佐渡に工場建設とは途方もない計画だ…と驚きましたが、山本社長から、繊維業界や佐渡に対する思いをうかがい、経営者に不可欠な熱い心意気を感じました
2期目から着実に売上高を確保していることもあり、自社工場を建設しても採算が取れる可能性は高いと判断し、マル経の検討に着手した高山さん。
「金融機関に提出する事業計画書は、持参された補助金の計画書とは異なり、資金繰りについて現実的な数字を出さなくてはいけない。どのようにすれば採算ベースに乗るか、一緒に一つひとつ詰めていきました」
高山さんとのやりとりによって経営の知識が得られ、金融機関とのつきあい方も学べたことに感謝していると山本さんは述懐します。
マル経融資が実行され、山本社長は現在の業務と並行し、「アルクロワークス・サドベース」と名づけた工場の建設に着手。従業員も新たに2名雇用しました。
故郷に自社工場建設という夢を叶えた山本社長は、早くも次のビジョンを見据えています。
「工場の近くの畑を開墾しており、春先に綿花の種蒔きをして、来秋に収穫します。紡績と編立のミニマムな設備を自分たちでつくれば、綿花栽培から紡糸、製布、縫製…衣料品製造を自社工場で完結できます。これ自体を見学・体験してもらうことで『服育』に。服作りの良さをお客様に知っていただくだけでなく、観光のアクティビティとして、島外からたくさんのお客様を呼び込み、佐渡の経済活性化に貢献したいです」

完成した佐渡の工場。お母様が営んでいた縫製工場のミシンなども引き継ぐ
採用した従業員と山本社長(中央)。ひとつひとつの作業に丁寧に向き合う
初収穫した綿花。畑の開墾からスタートした綿花栽培が実を結んだ

【担当者コメント】

山本社長の「本気」に
熱い思いで融資推薦書を作成

東京商工会議所 渋谷支部
高山 文雄 さん

平成 20 年東京商工会議所入所。今年で 13 年目になります。渋谷支部は創業など若い経営者様からのご相談が多いのですが、私の経営指導員人生の中でも、本案件は特に熱い思いで取り組んだものの一つです。山本社長の本気に影響されましたね(笑)。業務では経営者様のお話をしっかりと聞いて、今までの経験から支援策を考え出すように心がけています。後進の人たちに、信金時代からのノウハウをなんとか託したいーそれが今後の抱負です。

東京商工会議所 渋谷支部 高山 文雄 さん