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STEP4

決済

10. 代金決済

代金決済にあたっては、代金回収リスクと為替変動リスクがあります。
ここでは、決済方法の紹介や、各リスクの軽減方法について紹介します。

代金決済 イメージ

1. 代金回収リスクへの対処

輸出取引では、いかに早く確実に輸出商品に対する代金を回収するかが重要です。そこで、売買契約締結後速やかに入金してもらうよう取引相手と交渉することが重要です。また、次項で紹介する、信用状を活用した決済方法も、代金回収リスクを軽減するために有効な手段です。

2. 主な代金決済の種類

代金決済には、以下のとおり、決済上の銀行間の指図と資金(お金)の流れが同一方向となる「並為替」と決済上の指図と資金の流れが逆方向となる「逆為替」に分かれます。

代金決済の種類 内容 メリット デメリット
並為替 銀行送金 送金小切手
(Demand Draft : D/D)
銀行が振り出す小切手による決済方法
メリット❶
逆為替の場合と比べて手数料が安い。
メリット❷
輸出者から輸入者へ銀行を介さず船積書類を送付するので貨物を早く引き取ることができる。
前払い(前受け)の場合は、輸入者側に貨物を確実に受け取れないリスクが、後払い(後受け)の場合は、貨物後も代金回収できないリスクが生じる。
支払い渡し
(Telegraphic Transfer : T/T)
送金の指図を電信で行う。現在はほとんどこの方法で送金が行われる。
逆為替 信用状付き荷為替手形 信用状
(Letter of Credit : L/C)
信用状発行銀行による支払いが確約された代金決済方法。 信用状発行銀行の支払いが確約されている。 信用状発行手数料が発生する。
信用状なし荷為替手形 支払い渡し
(Documents against Payment : D/P)
銀行が、輸入者等の名宛人の代金支払いと引き換えに貨物の引き取りに必要な船積書類を引き渡す。
メリット❶
輸入者に一定の信用がなくても利用可。
メリット❷
輸出者に代わり、銀行が貨物の引き取りに必要な船積書類の引き渡しと代金の取り立てを行う。
銀行が輸入者に対し代金を取り立てるため、取立てに失敗した場合には、輸出者が代金が回収できないリスクがある。
引受け渡し
(Documents against Acceptance : D/A)
銀行が、輸入者等の名宛人の手形期日の代金支払い約束と引き換えに船積書類を引き渡す。
その他 クレジットカード決済、電子マネー、QRコード決済等 手数料が安い。 クレジットカード会社等との契約が必要となる。
参考信用状のしくみ
信用状とは、輸出地及び輸入地の銀行が、輸出者及び輸入者の間に介在することで、輸出者、輸入者双方の決済にかかるリスクを減少させる代金決済方法です。輸入地側の銀行は信用状(L/C)を発行し、輸入者の支払いを輸出地側の銀行に確約します。輸出地側の銀行は、輸出者から持ち込まれた船積書類と引き換えに、信用状に基づいて代金を支払います。
信用状のしくみ

※船荷証券・・・船会社が発行する、貨物を預かったことを証明する書類

コラムトラブル事例 Vol.4

事例
輸出を行うD社は、売上の入金を全額前払いとすることで、回収リスクを減らしたいと考えています。しかし、相手が後払いしか了承出来ないと主張しており、D社は対応に悩んでいます。
回収リスクを回避するために各決済方法を理解しておくことが重要ですね
対策
決済条件にはリスクの低い順に以下があることを理解しておく必要があります。
  • ①代金の前払い(前受け)(T/T送金)
  • ②銀行信用状(L/C)付き荷為替手形決済
  • ③信用状なしD/P(支払い渡し)、D/A(引き受け渡し)決済
  • ④後払い(銀行保証状付き)
  • ⑤後払い(後受け)
後払いは最もリスクが高いため、少なくとも前払い比率を高めるべく交渉する必要があります。また、後払いよりもリスクが低い方法を提案したり、場合によっては、契約自体しない(他社を探す)ことも検討します。

3. 為替変動リスクへの対処

為替は常に変動しているため、外国との取引で外国通貨を使用する場合、損失が生まれる為替変動リスクが生じます。このリスクを回避するための代表的な方法を紹介します。

対処方法 特徴
1為替予約 将来の特定の日または将来の一定期間の為替の受け渡し日を決めて、事前に為替を予約するもの。手数料が発生するが、コスト・利益計算を確実に行うことが可能。
2自国通貨(円)
建て決済
為替変動リスクを回避する最良の方法。しかし、外国の相手方が為替変動リスクを負うことになるため、相手から承諾を得られないケースが多い。
3通貨
オプション
通貨を売買する権利を売買する取引。通貨オプションの買手は、通貨オプション料を支払うことで、通貨の受渡し時期が到来したとき、受渡しを実行するかどうかを判断することができる。
4ネッティング 外国の取引相手との間で輸出と輸入の両方がある場合、外貨債権と外貨債務を相殺し、差額のみを決済する方法。これにより、為替リスクの対象となる金額を減らすことが可能。国・地域の外国為替関係法令により制限される場合がある。

コラムトラブル事例 Vol.5

事例
E社はアジア各国へ雑貨を輸出しています。米ドル決済で売買契約を締結しているため、これまでは円安の恩恵を受けていましたが、現在円高が進行しており、収益見通しが急速に悪化しています。
輸出価格の交渉や、取り扱う商品など様々な方向から円高リスクを軽減していきましょう
対策
上記で説明した対処方法に加えて、輸出価格の再交渉、付加価値が高い商品を取り扱うことで為替変動の影響を軽減する、輸出に加えて輸入事業を行うことで、輸出で得た米ドルを輸入決済に利用する等の対処法で、円高リスクの軽減を図ります。
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11. クレーム対応

貿易取引等の国際商取引では、さまざまなトラブルや金銭の伴う損害賠償を求めるクレームが発生することがあります。契約の相手方へのクレームや船会社・保険会社等へのクレームの請求は、いずれも客観性や合理的裏付けのあるものでなければなりません。トラブルの解決方法には以下のような方法があります。

トラブルの解決には、客観性や合理的裏付けのある資料等を用意する必要があり、専門知識が必要ですので、専門機関と相談をしながら手続きを進めるようにしてください。

トラブル
解決方法
内容
和解 当事者間の話し合いで解決する方法。コストがかからず友好的に解決できる方法として最も一般的な方法となっている。
あっせん 解決のための協力を第三者の専門機関等に依頼し、双方の主張や問題点を明らかにして、両者と話し合いを進めながらお互いに譲歩させて自主的に解決に導く方法。
調停 当事者が選定した調停人が双方の主張を聞き、提出された関係書類を調べたうえで調停案を提示する方法。
仲裁 紛争当事者の仲裁付託合意に基づいて行われるもので、当事者により選任された仲裁人が仲裁判断を下す。両当事者は仲裁判断を受け入れる法的義務がある。
訴訟 外国との取引による商事紛争が、和解、あっせん、調停、仲裁のいずれの方法によっても解決できない場合は、訴訟に持ち込むことになるが、自国の裁判所で勝訴し判決が確定しても、国内における判決の効力は外国には及ばない。
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