海外展開ガイド

STEP3

輸送

7. 輸送の手配

輸送には様々な方法がありますが、最も利用されているのが海上輸送です。
また、近年増加している、越境ECを活用して輸出を行う事業者には、インテグレーターや国際郵便が人気です。

輸送方法 輸送手段 運送費 時間 特徴
海上輸送 船舶
  • 大量の貨物を運搬可能。
航空輸送 航空機
  • 小型で小量な商品や、鮮度が求められる商品の運搬に適している。
陸上輸送 鉄道
  • 線路が敷設してある区間に輸送が限定される
トラック
  • 大量の貨物を運搬することができない。
国際複合輸送 船舶、航空機、鉄道、トラックの組み合わせ
  • 様々な運送手段を組み合わせることで、輸送先を弾力的に指定可能。
  • 運送者の責任の所在があいまいとなることがある。
インテグレーター(注) 主に航空機、トラック
  • 物流業者が持つ航空機やその他の輸送手段でDoor to Doorの輸送が可能。
  • 見本品、書籍等小型貨物が対象。
国際郵便 船舶、航空機、鉄道、トラック
  • 世界の郵便システムを利用した輸送方法。
  • 比較的安価で、20万円以内の少額郵便では輸出入申告が不要。

(注)代表的な業者は、FedEX、UPS、DHL社。

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8. 保険契約

輸出にあたっては、輸送中の貨物の損害、輸入地の内戦や動乱、また製品の欠陥による人体への被害等が発生することがあります。
このような場合に発生する損害額や被害額に備え、保険を掛けておくことが重要です。ここでは貿易に関わる以下の3つの保険について解説します。

貨物海上保険 貿易保険 PL保険

1.貨物海上保険

輸送中の事故等によって貨物の損失を受けた場合、その損害額が補てんされる保険です。売主、買主のどちらが付保するかは、当事者間の契約によります。
現在では、2009年版の新協会貨物約款(New Institute Cargo Clause: 新ICC)により、てん補範囲によって(A)、(B)、(C)の3種類の保険条件があります。下記に、各保険条件がカバーする、主要な損害の種類を紹介します。

  ICC(A) ICC(B) ICC(C)
損害の種類 火災・爆発 保険条件
船舶又は艀の沈没・座礁
輸送用具の衝突
積込み・荷おろしの際の水没 ×
地震・噴火・雷 ×
共同海損、救助料、損害防止費用
投荷
波ざらい ×
その他 雨・雪等による濡れ × ×
破損・曲がり・へこみ × ×
盗難・抜荷・不着 × ×
虫食い・ねずみ食い × ×
汚染・混合 × ×

※特約を付すことによりてん補の対象とすることができます。(出所)主要保険会社のウェブサイトより作成

コラムトラブル事例 Vol.3

事例
C社はクリスマス商戦に向け米国向けに山梨産ワインを輸出しようとしたが、海上輸送の遅延により、商機を逸してしまった。
輸送の遅延は臨機応変に対応する イメージ
対策
海上輸送の遅延は貨物海上保険の免責事由の一つとなっており、船会社も不可抗力として、責任を取りません。
そこで、事前に売買契約で不可抗力条項を設け、自社の責任を回避する必要があります。

2. 貿易保険

貿易保険は、「非常危険」もしくは「信用危険」の発生によって、輸出不能や代金回収不能が生じた場合に、損害額が補てんされる保険です。非常危険、信用保険の具体例は下記のとおりです。
売主、買主のどちらが付保するかは、当事者間の契約によります。日本貿易保険(NEXI)や、一部の損害保険会社が貿易保険のサービスを提供しています。

非常危険
  • 為替取引の制限や禁止
  • 輸入制限や禁止
  • 戦争や革命、テロ行為を含む内乱
  • 天災地変
信用危険
  • 取引先の破産手続き開始の決定
  • 取引先の資金繰り悪化による3ヵ月以上の債務履行遅滞

3. PL(製造物責任)保険

製品の欠陥が原因で製造業者、輸入者又は販売業者がその製品の使用や消費によって生ずる生命、身体の被害あるいは財産上の損害を補償する保険です。
輸出品は輸出先の国・地域のPL法の適用を受けるため、輸出者は、必要に応じて輸入国のPL法に準拠して保険に加入する必要があります。
日本商工会議所や、一部の損害保険会社がPL保険のサービスを提供しています。

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9. 通関手続き

通関手続きとは、税関官署に対して行う、関税の確定及び納付に関する手続きを含む申告又は承認の申請から、それぞれの許可又は承認を得るまでの手続きをいいます。
輸出の際は、税関に対し輸出申告等の通関手続きを行う必要があります。
通常は、通関士の有資格者がいる財務大臣の許可を受けた通関業者に輸出通関手続きを依頼します。
輸出先の国・地域では輸入国・地域の輸入者が輸入通関手続きを行います。

通関手続き イメージ

参考通関業者の許可を取得していれば、運送会社が運送と通関手続きをまとめて行います。

1. HSコード

HSコードは、国際貿易商品の名称及び分類を世界的に統一するために作られました。税関に対して行う輸出入申告で必要となり、輸出入統計等にも使用されています。日本国内の最寄りの税関で確認することができます。
HSコードは、6桁の世界共通の商品分類番号です。上2桁目までを類(Chapter)、上4桁目までを項(Heading)、上6桁目までを号(Sub-Heading)といいます。7桁目以降は統計細分となっており、日本の場合は7桁目から9桁目を統計細分としています。

HSコードの例(ギターの場合)

2. FTA/EPAの活用

世界で活発化するFTA/EPAと日本が締結するEPA

近年、二国間又は複数の国からなる地域間との間で、原則として互いに関税を撤廃する自由貿易協定(Free Trade Agreement: FTA)や経済連携協定(Economic Partnership Agreement: EPA)が盛んに締結されています。

自由貿易協定FTA
二つ又はそれ以上の国家相互間で関税やその他の貿易障壁を撤廃する協定
掲載連携協定EPA
貿易のみならず、投資や経済協力の拡大、人の移動の円滑化、
知的財産の保護等幅広い分野での協力拡大を目指す協定
FTA/EPAの活用 イメージ

EPA特恵関税適用のための要件

EPAに基づいて、締約国間で関税の優遇(特恵関税)の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • (1) 対象産品が、利用するEPAの対象品目に指定され、特恵関税が設定されていること
  • (2) 対象産品に要求されている原産地規則を満たしていること
  • (3) 積送基準を満たしていること(原則として締約国間で物品を直送すること)
  • (4) (2)、(3)を満たしていることを原産地証明書、運送要件証明書等で輸入締約国税関に証明すること
原産地証明書
貨物の原産地を証明するための書類。日本商工会議所から発給される「第三者証明制度」と、輸出者自身が証明書類を作成する「自己証明制度」(TPP11、日EU・EPAを活用する場合)があります。日豪EPAの場合は第三者証明制度と自己証明制度を併用します
運送要件証明書
貨物が第三国を経由した場合、経由地において積み替えや一時蔵置以外の行為がなされていないことを証明する書類です。具体的には、船積地から最終仕向地までを全区間をカバーした通し船荷証券(Through B/L)や、第三国の官公署が発給する非加工証明書を示します。
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