行政や創業支援機関などと連携し、創業・スタートアップを支援
創業前や創業後間もない企業は、営業実績が乏しい、事業の見通しを立てにくい等の理由により、資金調達が困難な場合が少なくありません。政策金融の立場から、地域経済に活力を生み出す創業企業や、新しいビジネスモデル・最先端技術によって新市場を切り開こうとするスタートアップへの積極的な支援に取り組んでいるのが、国民生活事業です。
国民生活事業では、全国152支店に創業サポートデスクを設置し、専任の担当者が創業計画書作成についてのアドバイスや創業に関する様々な情報提供を行っているほか、創業支援センターやビジネスサポートプラザといった支援拠点を全国各地に設置しており、お客さまからのご相談に迅速に対応できる体制を整えています。令和6年4月には、シード期(創業準備期)・アーリー期(事業立ち上げ期)のスタートアップ支援拠点「スタートアップサポートプラザ」を全国4都市に新設。ベンチャーキャピタルや支援機関と連携しながら、スタートアップに対する相談等に、きめ細かく対応しています。
私の所属する創業支援センターに与えられた具体的な役割は、融資と出資を組み合わせた支援が必要となるケースなどの高度な専門知識が求められるご相談への対応のほか、行政や創業支援機関と連携しながら、創業計画書作成支援に係るセミナーやイベントを企画・開催することです。
個別のご相談では、お客さまの事業内容を深く理解し、今後想定される課題や障壁を具体的にイメージして、その対策をお客さまと共に検討していきます。初めて相談を受けた時点ではなかなか支援が難しいケースもありますが、その場合は、何が問題なのか、どういったことを懸念しているかといった点をしっかりお伝えし、具体的なアドバイスを行うことで計画の実現に向けた課題を一つひとつ解決していきます。
過去に私が担当し、印象に残っている支援事例の1つに、「涙でがんを検知する技術」の実用化を目指す大学発のベンチャービジネスがあります。ベンチャーキャピタルとも連携し、情報を収集・分析して、事業性を判断しました。日本公庫からは財務体質強化のための資本性ローンを提案し、最終的には、複数の民間金融機関との協調融資という形で支援が決定しました。専門的な知識が必要であったことに加えて、関係機関との折衝が多かったことから苦労もありましたが、人類の未来に希望の光をもたらす可能性がある貴重なビジネスの誕生に立ち会うことができました。融資実行後、お客さまには、胸が熱くなるような感謝のお言葉をいただき、苦労した分、大きな達成感を得ることができました。
セミナーやイベントの企画では、「創造力、無限大∞ 高校生ビジネスプラン・グランプリ」に携わっています。皆さんの中には、高校時代、このグランプリに参加されたという方もいらっしゃるかもしれません。創業支援センターでは、若年層の創業マインド向上に資する活動にも力を入れて取り組んでおり、その取組みの一つが、この「創造力、無限大∞ 高校生ビジネスプラン・グランプリ」です。全国の高校生からユニークなビジネスプランを募り、グランプリを決めるというもので、令和6年度で12回目を迎えました。毎年、各地の創業支援センターが中心となって、応募を検討している高校への出張授業を行い、グループワークを通じて、ビジネスプランを形にしていくプロセスのお手伝いをさせてもらっています。授業では、高校生たちが、真剣にアイデアを出し合い、自分たちのプランに向き合う姿が印象に残っています。過去にグランプリ受賞歴のある方が、当時のプランで創業を目指しているという話もあり、このグランプリの認知度が年々高まり、日本公庫の取組みが実を結びつつあることを実感しています。
