国民生活事業

小規模事業者は、日本経済の裾野を支え、全国の地域経済に活力を生み出す重要な存在です。一方で、こうした小規模事業者は、資金調達が困難と言われています。また、創業企業も「営業実績がない」ことなどから、同様の問題を抱えています。このような小規模事業者や創業企業への支援を積極的に行うことで、大きな社会的使命を果たしているのが、国民生活事業です。

フィールドは約305万の小規模事業者

小規模事業者は、個々の規模は小さくとも、その総数は約305万企業にのぼり、国内企業の約85%を占めています。また、小規模事業者は、日本経済の裾野を支え、次代を担う企業を生み出す苗床でもあります。こうした、日本経済にとって重要な存在である小規模事業者を支援する政策的役割を担っているのが、国民生活事業です。長年培ってきた独自のノウハウを活用し、積極的に小規模事業者をサポートすることで、日本経済の発展に貢献しています。

中小規模事業者基本法の定義と企業数、従業者数

事業資金の融資先数は88万先

国民生活事業の事業資金の融資先数は、約88万先(注)にのぼります。また、1先あたりの平均融資残高は703万円と小口であり、多くのお客さまに小口の資金を提供していることが当事業の特徴といえます。

(注)令和2年は新型コロナウィルス感染症の影響を受けられた事業者の方々への支援に全力で取り組んだ結果、令和2年8月末時点で、ご融資先数は113万先となっています。

融資先数及び1先あたりの平均融資残高(平成27年度末)

融資先は生活密着型の商売から最先端の事業まで

当事業の融資先の約9割は従業員9人以下の小規模事業者で、法人・個人別では、約半数が個人企業となっています。業種別にみると、飲食店、理・美容室、生花店、ベーカリーといった生活に密着し、地域社会になくてはならない企業から、バイオ技術やITを活用したベンチャー企業、介護や保育といった地域の課題を解決するソーシャルビジネスの担い手まで、多種多様な業種のお客さまにご利用いただいています。

従業者規模別融資構成比(件数)(平成27年度)

業歴別融資構成比(件数)(平成27年度)

業種別融資残高構成比(金額)(平成27年度末)

新型コロナウイルス感染症への取組み

新型コロナウイルス感染症により影響を受けられた事業者の方々のため、全国152支店に特別相談窓口を設置し、融資や返済に関するご相談を承っています。売上が減少するなど、一定の要件に該当する方々については、実質無利子・無担保の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」などで支援しています。
当事業における新型コロナウイルス感染症に関連する融資は、相談窓口設置日である令和2年1月29日から令和2年9月末までの累計で624,649件、7兆7,049億円を決定しています。約8ヵ月間で昨年度の事業資金の融資実績を大幅に上回っています(件数で2倍、金額で3倍強)。また、リーマンショックの影響を大きく受けた平成21年度や東日本大震災関連の融資実績も上回っています。

■新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者に融資した事例

A社は、山口県で和風レストランを経営する企業。新型コロナウイルス感染症の影響により、レストランの来店客が減少。また、国や県からの要請に基づき、営業時間短縮等を行いました。
同感染症の感染拡大で、売上が減少する中でも、店内の消毒や換気の徹底、密を避けた配席を行うなど、お客さま及び従業員の感染防止対策を実施。その結果、同県が行う「新型コロナ対策取組宣言店」の第一号店の認定を受けました。さらに、臨時休校のため、給食がなくなり困っている放課後児童クラブの子ども向けに専用の弁当販売を開始し、同感染症の影響を受けている家庭や子どもの食のサポートにも取り組みました。
当事業は、売上減少により必要となった従業員の人件費や諸経費等の運転資金を融資しました。

創業支援

創業前及び創業後間もない方は、営業実績が乏しいなどの理由により資金調達が困難な場合が少なくありません。このような創業企業についても積極的に融資を行っています。また、創業希望者が各地域において、創業支援の情報をワンストップで入手できるように、市区町村、商工会議所・商工会、大学などの創業支援機関と連携した創業支援ネットワークを全国各地で構築しています。
令和元年度の創業前及び創業後1年以内の企業への融資実績は25,242先にのぼり、創業企業が新たに雇用することにより、年間約9万の雇用が創出されたと考えられます。

【雇用創出効果】

国民生活事業では、全国152支店に「創業サポートデスク」を設置し、専任の担当者が創業計画書の作成についてのアドバイスや創業に関するさまざまな情報提供を行っています。
そのほか、「創業支援センター」や「ビジネスサポートプラザ」において、お客さまのニーズに応じたサポートを提供するなど、創業者への支援を積極的に行っています。

【創業支援センター】
・北海道から九州まで全国15カ所に設置
・各地域の創業支援機関などとの連携により、お客さまへタイムリーな支援を実施
・創業前、創業後のさまざまなステージのお客さま向けに各種セミナーを開催

【ビジネスサポートプラザ】
・札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、福岡の6カ所に設置
・創業予定の方や日本公庫を利用されたことがない方などを対象に、予約制の相談を実施
・平日の営業時間内のご来店が難しい方向けに、「土曜・日曜・夜間相談」を実施(祝日を除く)

設置地区
女性・若者・シニア起業家支援

女性の日常生活のなかで感じた小さな「気づき」をもとにした創業、若者ならではの斬新なアイデアを活かした創業、また、シニアならではの長年の経験を活かした創業など、経済社会が多様化するなかで、創業の裾野が広がっています。国民生活事業では、このよう な女性・若者・シニア起業家の皆さまにも積極的に融資を行っています。

■女性起業家への融資事例 ~アパレルを通して「人をデザインする」~

D社は、女性向けの下着やワンピースなどを企画・販売しているアパレル企業。中学生の頃からロリータファッションに興味があった代表者が、オリジナルのタイツを自主作成・販売したことをきっかけに事業を開始。その後、体型にコンプレックスを抱える女性向けの下着ブランドが人気となりました。最近ではネット通販での販売に加え、若者向けの商業施設に実店舗をオープンさせるなど順調に事業を拡大しています。
当事業は、創業直後の売上増加に伴い、仕入資金や人件費等の運転資金を融資しました。

融資等により企業の成長・発展に貢献しています

平成元年以降(1989年〜)に上場した企業のうち、339社が当事業との取引を経て株式を公開しています。
代表的な新興企業向け株式市場であるマザーズに上場している企業のうち、約1/4の企業について取引歴が確認でき、当事業による創業・成長期の企業への支援が一定の成果を生んでいると考えられます。

高校生ビジネスプラン・グランプリ開催

我が国では、年々、企業数が減少しています。今後、日本経済が持続的発展を遂げていくためには、次世代を担う若者の創業マインドの向上を図り、開業率を上げていくことが必要です。 日本公庫は、「長年培ってきた創業支援の経験・ノウハウを活かし、次世代を担う若者の創業マインドの向上を図りたい」という想いから、平成25年度より高校生を対象とした「高校生ビジネスプラン・グランプリ」を開催しています。
第7回「創造力、無限大∞高校生ビジネスプラン・グランプリ(令和元年度)」には、全都道府県から3,808件(409校)の応募がありました。令和2年1月に行われた最終審査会では、その中から選ばれたファイナリスト10組による白熱したプレゼンテーションが繰り広げられ、大阪府立三国丘高等学校の「PeriPeri〜もったいないとは言わせない〜(容器の底に残るスティックのりを使い切るため、容器の構造を変えた新型のスティックのりを販売する)」というプランがグランプリを獲得しました。
今回の応募プランは、高校生らしい自由な発想から生まれたユニークなプランのほか、地域資源の活用や環境問題の解決をテーマにした創造性溢れるプランが多く、高校生の社会への関心の高さが窺えるものでした。日本公庫はこれからも、将来の我が国を支える、伸びやかで起業家精神にあふれる人材を育てるお手伝いをしていきます。

詳しくは日本公庫HPをご覧ください http://www.jfc.go.jp/n/grandprix/index.html

政策性の発揮

ソーシャルビジネス支援

「ソーシャルビジネス」とは、高齢者、障がい者の介護・福祉、子育て支援など、社会的課題の解決に取り組むことを目的とした事業活動をいいます。国民生活事業では、私たちが暮らす地域や社会をより良くしていくために、「ビジネスを通じて社会を変えたい」という高い志を持った社会的企業やNPO法人に対して積極的に融資するとともに、外部の支援機関等とのネットワークを活用して、ソーシャルビジネスの経営をサポートしています。
令和元年度のソーシャルビジネス関連の融資実績は、11,863件、869億円(うちNPO法人への融資実績は、1,155件、71億円)となりました。

ソーシャルビジネス関連の融資実績(注)
■ ソーシャルビジネスへの融資事例

J社は、青森県内でデイサービスやサービス付き高齢者向け住宅、訪問サービス、スポーツクラブ等の施設を運営する事業者。
デイサービス「かっこうの森」では、理学療法士によるリハビリに加え、地元食材を使用した手作りの日替わりランチや居心地の良い空間を提供。「当たり前のことが当たり前にできる」をモットーに、利用者の衣・食・住を丁寧にサポートすることで、個人の尊厳を大切にしています。
当事業は、新たなデイサービスの開設にかかる設備資金等を融資しました。

■「ビジネスプラン見える化BOOK」の発行による事業計画策定の支援

ソーシャルビジネスの活動を持続的に成長させるためには、実現性の高い事業計画を策定して、十分な収益を確保する必要があります。当事業では、事業計画の策定を支援するため、「ビジネスプラン見える化BOOK」(以下、「見える化BOOK」)を発行しました。
「見える化BOOK」は、事業計画に関わる6つの要素(組織使命・現状把握・実現仮説・成果目標・財源基盤・組織基盤)を整理できるワークブックです。ソーシャルビジネスの担い手の皆さまが事業計画を策定する際にご活用いただけます。

■ソーシャルビジネス支援ネットワークの取組み

地方公共団体、地域金融機関、NPO支援機関等と連携し、経営課題の解決を支援するネットワークの構築に取り組んでいます。ネットワークを構成する各支援機関の施策・サービスをワンストップで提供するとともに、経営支援セミナーや個別相談会の実施により、法人設立、事業計画の策定、資金調達、人材育成といったソーシャルビジネスの担い手の皆さまが抱える経営課題の解決を支援しています。
令和2年3月末現在のネットワーク総数は117件にのぼります。

海外展開支援

当事業では、「海外展開資金」を活用し、海外での工場建設、現地事務所の開設といった直接投資のご相談から、現地企業への生産委託、海外で開催される展示会への出展費用等の資金のご相談まで、幅広い資金ニーズに対応しています。最近では、インターネットサイトを活用した海外向け商品販売に関する資金のご相談も増えています。
また、全国152支店に海外展開サポートデスクを設置し、相談体制を整えるとともに、ジェトロ等の海外展開支援機関とも連携するなど、情報面でのサポートにも力を入れています。
令和元年度の「海外展開・事業再編資金」の融資実績は1,578件となり、その約7割が卸・小売業となっています。海外で人気の高い日本の食文化や地域の伝統工芸品(食品、酒、陶磁器、漆器など)を取り扱う皆さま等にご利用いただいています。

■海外展開資金による融資事例

K社は、東京都内でハイエンドな犬関連用品を扱うペット商品の企画製造・販売業者。骨格の動きを妨げないペッ トの着心地と飼い主の着せやすさの両方を実現した機能性やデザイン、豊富なサイズ展開などで人気を得ています。素材選びから縫製までメイド・イン・ジャパンにこだわった同社の事業は、「JAPANブランドプロデュース支援事業」にも採択されました。今後は日本の3倍のペット商品市場を持つアメリカへ販路を拡大していく方針です。
当事業は、商品の輸出拡大に必要な運転資金を融資しました。

事業再生、事業継承支援

事業再生に関連する融資制度を通じて、地域金融機関との連携、中小企業再生支援協議会の関与又は民事再生法に基づく再生計画の認可などにより、経営の立て直しを図る皆さまを支援しています。
全国152支店に再生支援専任者を置き、一時的な元金の返済猶予や割賦金の減額など、返済条件の緩和のご相談に柔軟に対応しているほか、経営課題の解決に向けたアドバイスや経営改善計画書の策定支援等も実施しています。
また、地域金融機関、税理士、事業引継ぎ支援センター等との連携により、事業承継に取り組む皆さまを資金面・情報面の両面から支援しています。
株式、事業用資産の取得に必要な資金や後継者育成等の事業承継に向けた準備に必要な資金等をご融資しています。
加えて、後継者不在の小規模事業者から、「第三者に事業を譲り渡したい」というニーズを引き出し、「事業を譲り受けたい」という創業希望者や事業者の中から希望条件の合致する方を探して、両者を引き合わせる「事業承継マッ ング支援」を行っています。

国の教育ローン

教育に関する家庭の経済的負担の軽減と教育の機会均等を図るため、入学時、在学時に必要な資金をお使いみちとした「国の教育ローン」(教育資金貸付)を取り扱っています。
令和元年度のご利用件数は約12万件となりました。

進学先別融資件数構成比

日本公庫「教育費用負担の実態調査結果」(令和元年度)によると、お子さま1人あたりにかかる教育費用は、高校3年間で約248万円となっています。
大学へ入学した場合は、入学費用と4年間の在学費用約690万円が加わり、合計は939万円にもなります。特に、入学時は入学金などが必要になるため、1年間の教育費の額が大きくなり、家計における負担感は大きいといえます。

(注) 教育費は、受験費用、学校納付、授業料、通学費、教材費、学習塾の月謝などの合計です。

大学卒業までにかかる費用